ぐるぐる猿と歌う鳥 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062777292

作品紹介・あらすじ

小5の高見森が引っ越した先で出会った、同じ社宅に住む仲間たち。次第に覚える違和感――小さな謎が呼び起こす驚きの真実とは。

感想・レビュー・書評

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  • 大人の現実に追い込まれる子供達が、狭い世界ながら冒険をする良い小説だった。短いミステリー仕立ての面も散りばめられており、児童書を意識しているため読み易さも抜群だった。高見森をはじめ子供達がはちゃめちゃ元気で方言丸出しなのも物語を明るくしてくれていた。

  • 図書館本

    サクッと読めました。

    子どもの頃って、どうしてこんなに秘密が多くて、冒険に満ち溢れているんだろう。

    ギザギザ屋根の猿と鳥。
    よくわからないパックの存在は、子どもの世界ではすんなりと受け入れられるのだ。
    大人の、とやかくうるさい道理なんて関係ない。

    ほんのりミステリー。

  • 父の転勤で北九州の社宅に引っ越してきた森(シン)と
    その社宅に住む子供たちのお話。

    現実をわかっていても、子供であることを理由に、
    現実を先延ばしにしている・・・
    そんな青臭い、青春・・・というのも早いくらいの
    子供たちのお話でした。

    子供のお話だけれど、ちゃんと子供たちは現実がわかっていて、
    帯に「かつて子供だった人へ。」とあるとおり、
    ただ単に児童向けの小説ではない様に感じました。

    大人向けの小説ならばまだ続きがありそうですね。



    書評家の矢作博子さんがあとがきを書かれていて、
    加納朋子さんのイメージを「ふわふわのミルクで覆われたカプチーノ」と
    あらわされるあたりや、そのカプチーノを題材に
    この作品を表している説明のしかたに「こんな書き方があるんだ」と
    感動しました。あとがきも読んでておもしろかったです。

  • 数年寝かせてあったかも。ようやく読んだ。なんか、自分で買いはしたものの、タイトルがあまり心惹かれなくて。

    でも何よ〜面白いじゃないの! 途中からはすっかり夢中になって一気に読んじゃった。

    私が読んだことのある加納朋子さんの作品同様、小さな謎を解いていくし、ゆったりとした感じもある。それに加えて、先がとっても気になる展開。後半はぐいぐい読まされてしまった。

    彼らの日常の中には、嫌な過去、悲しい状況、未来への不安などが横たわっていて、脳天気なだけの毎日ではない。最後にはひと通りいろいろ解決するものの、どうにもならない部分もある。それでも悲壮感はなく、全体を通じて感じるのは、楽しい雰囲気。

    パックと心が通っていく様子は、読んでいて嬉しくなった。そして私には、あの親子を目一杯ギャフンと言わせたい気持ちが今もある!
    続きは出ないのかな。みんなの今後をもっと読みたい。

  • できないことは多かったが友達と一生懸命遊んだり、他愛のない秘密を守ったりして過ごしていた子供の頃を思い出す良い本・・・というだけでは片付けられない、大人の事情や身勝手さ、汚さに翻弄される部分が描かれており、なんとも言えない読後感。できないことは多かったし、知らないことだらけだったけど、それでもこんな子供時代に戻りたいと思わせる本。夏休みの帰省前に一読をお勧めします。

  •  父の転勤で北九州へ引っ越してきた高見森。同じ社宅の子どもたちとも仲良くなっていく彼だが、その社宅の中に学校に通っていない子どもが一人いて…

     元々児童書の体裁で出されたらしい本作ですが、大人が読んでも十分に楽しめる一冊だと思います。

     ミステリとしては児童書のためそこまで凝ったものでもない…と思いきや一仕掛けあってきちんとしたミステリ作品なんだな、と思います。そして森のわんぱくっぷりが昔読んでいた児童文学の主人公の少年たちの姿と被っていて懐かしくも感じました。

     社宅の子どもたちもそれぞれ個性的。大人しいながらも友達思いのココに全員男子の竹本5兄弟、美少女ながらビシビシものを言って九州訛りのすごいあや。そして森と同じくわんぱく坊主の、謎めいた少年パック。

     新天地での個性豊かな友達との友情と成長譚が表向きの物語ですが、解説にもある通り一歩踏み込んでいくとそこには子供の限界がどうしようもなく残酷に描かれてもいます。そうした面は案外大人の読者の方が身につまされるかもしれません。

     それでも子供たちの優しさが物語の背景にあるからか話に暗さはあまり感じられません。どうしようもないことがあってもそれでも子供たちは、それを自分なりに受け入れ前を向き続けます。

     解説の感じだと続巻もあり得そうな感じです。切りよく終わってはいるものの、やっぱり今後が気になる子もいるので、加納さんにはぜひこの続きの物語も書いてほしいです(もちろん無理はなさらない程度で)。

  • 清々しい読後感。子供の健気さ、ストレートな感情と行動。そして反するように、彼らを取り巻く容赦ない環境。この状況がいつまでも続くわけがないと、どこかで悟っている子供たち。解説にもあったが、子供の限界を、どうしようもない現実をこの話は突きつけている。また解説で作者が大病をされていたと知って驚いた。

  • ミステリーだけどどことなく優しい気持ちになれる作品です。

  • 「小5の高見森が引っ越した先で出会った、同じ社宅に住む仲間たち。次第に覚える違和感――小さな謎が呼び起こす驚きの真実とは。」

  • 子ども目線で大人や社会を書く、宗田理みたいな話。昭和感も。この子たちは強いけど、それでもやっぱり子どもで、なんとかしたいと思っても、そこに触れられるのはやっぱり子どもなんだろうなぁ。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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