秘密 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.07
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本棚登録 : 806
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062777100

作品紹介・あらすじ

真夏の夜、寝床を捜して深夜の街を彷徨っていた啓太は、杉浦充という男と出会いセックスを条件に部屋に泊めてもらう。男と寝たい訳ではなかったが、啓太は自分のアパートに帰りたくなかった。大きな冷凍庫が唸る部屋で、独り夢を見たくなかったからだ。悪夢を抱えていた啓太にとって、泊めてくれる杉浦は都合のいい相手だった。しかし、杉浦の一途な想いに心が揺れるようになり…。

感想・レビュー・書評

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  • 落涙の危機に見舞われた。
    異端の恋愛観の中で、異彩な純粋さを書いておいて、最後に言い古された言葉で幸せを表現してくるからだ!と思う。
    秘密では、「盆と正月が一緒に来たみたいだ。」
    檻の中では、「言葉に言い尽くせないほど。」
    社会的地位も低い、幸せという言葉から遠い人生を送ってきた人達に 今の瞬間が、本当に幸せなんだと言わせる。そこに、持ってかれる。
    主人公はディスレクシア(文字の読み書きが苦手な学習障害)。周囲は、それに気付かなかった。幼い頃から間違った教育に苦しみ差別を受けながら、間違っているほどの優しさを失っていない。
    自己肯定感が低いけど心優しく一生懸命。そんな彼を認めるパートナーの存在。
    ラストで、山本周五郎の「さぶ」を思い出してしまい、それもまた読みたくなってしまった。

    たまたま、ネットでUDデジタル教科書体というフォントの開発について読みました。私は、美しいと思っている、毛筆の運びを表現した楷書体に、ディスレクシアの障害があるとストレスを感じるらしい。線の太さが変わったり、トメハネの動きが読み取り難くしているらしい。そこで、運筆の流れを残して手書きの表現に近い誰にも読みやすいフォントを開発したとのこと。文字の多様性かな。便利になると良いね。

    • おびのりさん
      5冊くらいあった。
      文芸後にいく。
      5冊くらいあった。
      文芸後にいく。
      2023/07/17
    • 土瓶さん
      「負けない」が意外にカワ(・∀・)イイ!!
      「負けない」が意外にカワ(・∀・)イイ!!
      2023/07/17
    • おびのりさん
      てへ
      てへ
      2023/07/17
  • 普通のミステリーだと思って購入したのですが、ジャンルが違うではないか!!

    ミステリーを求めて購入したのですが、これはこれで、面白いストーリーでした(*^^*)

  • 啓太と充、充の従兄弟、充の弟、視点の三部構成。
    啓太と充の視点では、秘密が濃厚に漂いミステリ風で良かったけど、性描写が過剰で‥。個人的にはちょっとくどく感じた。
    充の従兄弟や弟の視点は、苦々しくも切ない余韻があって。あぁやっぱり木原さん、好きだ。

  • 主人公の殺人シーンから始まるショッキングな1冊。でも、この殺人がなければ、充とは出会うこともなかった。出会う順番が違っていたら、良い意味でも悪い意味でもこんなふうにはなっていなかっただろう。木原さんの作品ということで、軽いはずがなかろうとは思っていたけど、やっぱり……。BL作品ゆえ結構刺激が強いけど、オススメです。こんなスタートだけど、ちゃんとハッピーエンドになっているからすごい。

  • この小説が……好きだ! まだ一回しか読んでいないけれど、一回しか読んでいないからかもしれないけれど、この小説が大好きだ。読んでいる最中のわたしの気持ちを表現すると「どうなっちゃうの? どうなっちゃうの? え? えー!」というなんのおもしろみもない単純なものになるが、しかし身体には一体どれほどの感情が渦巻いていたことだろう。啓太と充が歩いた道程には胸を締め付けられたし、理解しあうことの難しさは生きていく限り深く根を張って抜けることはないのだろうが、それでも。小声でいいから言わせてほしい。「運命だったんだね」

  • とても良かった。ドキドキとモヤモヤない混ぜの感情で最後まで読みました。
    利害関係から求めあった2人だけど、途中からの啓太と充の幸せがとても微笑ましくホッコリしました。弟、樹のⅢでは大泣きしました。ハッピーエンドが有難いです。
    木原先生は読んでも読んでも飽きない作品ばかりです。その分”その後“も気になり、これからの2人も知りたい!と毎度悶絶しています。

  • 痛々しいけど繊細
    丁寧だな

  • 講談社文庫版『箱の中』『美しいこと』と読んできて、本作は最もBLジャンル感を色濃く残して刊行されたんだなあと思った。
    木原さんの描写力の虜となって三作目、もうすっかりファンになってしまった…。
    充と啓太はある種の共依存関係から始まり、一時は中毒状態にまで陥ってしまうものの、互いに互いの手を離さずに歩んで全てを克服していく。三作中、このカップルが一番まともだったかも…?なんにせよ、ハッピーエンドでとても嬉しい。
    充の父親のような人間は現実にもいるので、弟の樹が父を反面教師にしてくれそうで、救われた心地がした。

  • どうなることやらと思ったけど良かった…
    充が言う台詞に胸がぎゅうううう!てなった。
    誰かのために生きたいとか家族が欲しいとか愛してほしいとか、もうその台詞見た瞬間涙がでたわ…
    途中までは啓太目線で物語が進んでいたから冷凍庫の死体の行く末にドキドキざわざわして、どうなるんやと気を揉んだけど気付いたら愛の物語になっていて穏やかになりました。
    やっと愛してもらえる啓太と好きな人が傍にいて幸せな充、啓太が捕まったらバドエンやん!とソワソワしたわ。

    秘密II〜は孝則目線の話で充との出会いとかがどうだったかを描いていて、なんだかんだ孝則は最高に優しい人だなとちょっと惚れそうだったよね。
    秘密IIIは充の弟の樹の話。
    孝則が予見していたように樹はクソ親父そっくりに育っていたわ。本当に現代っ子って感じで最後に気付けたからまだ救いがあったけど、あれで気付けないならもう詰んでるし嫌いなまま終わりそうで、ある意味ドキドキした。
    クソ親父と同じような生き方をせずに生きていけたらええのぅ、樹よ。

  • 途中からなんとなくわかってきたけれども、やはり柳沢を殺してはいなかった啓太。精神的に追い詰められると妄想と現実の境がわからなくなってしまうようだ。そんな彼と出会うのは字の読み書きに障害のある充。それぞれが困難を抱えながらもお互いを好きになり、かけがえのない存在になっていくのが描かれている。充の愛がまっすぐ過ぎて、、中々こんな風に人を愛せるもんじゃないですよね。だからこそ啓太は安心して自分を預けられるのだと思うんですけど。
    愛に依存してた充が啓太に出会って高校にも専門学校にも行って…彼の世界が広がっていくのが嬉しかったです。


    伏見憲明さんの解説がすごく腑に落ちました。
    以下抜粋
    ならば、どうやったら、私たちは「私」でありながら「あなた」と痛みを感じずに関わることができるのか。互いを欲望の道具として利用するのではない、「純粋な関係」を実現することはできないのか。
    木原音瀬という作家が多くの読者に愛されてやまないのも、関係の不可能性を可能性に変換しようという潜在的な意志の顕現のように思えてならない。
    どんなに個と個が「純粋に」結びつくことが困難でも、その術をまだ見つけられなくても、「それでも……あきらめない!」という希求が、BLのハッピーエンドと愛の黄金律には託されている。
    この『秘密』もそうした未来への野心的な挑戦である。そして、私たち読者自身も、この本を手に取ることによって、きっと、「まだあきらめないこと」を誓い合っているのだ。

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著者プロフィール

高知県生まれ。1995年「眠る兎」でデビュー。不器用でもどかしい恋愛感情を生々しくかつ鮮やかに描き、ボーイズラブ小説界で不動の人気を持つ。『箱の中』と続編『檻の外』は刊行時、「ダ・ヴィンチ」誌上にてボーイズラブ界の芥川賞作品と評され、話題となった。ほかの著書に『秘密』『さようなら、と君は手を振った』『月に笑う』『ラブセメタリー』『罪の名前』など多数。

「2022年 『コゴロシムラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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