地のはてから(上) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774956

作品紹介・あらすじ

凍てつくオホーツク海に突き出し、人も寄せ付けぬ原生林に襲われた極寒の地・知床。アイヌ語で「地のはて」と呼ばれたこの地に最後の夢を託し、追われるようにやってきた開拓民の少女。物心ついたときにはここで暮らしていたとわは、たくましく生きる。今日から明日へ、ただ生き抜くことがすべてだった。北海道・知床で生きた女性の生涯を丹念に描いた、著者の最高傑作。中央公論文芸賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • H30.8.13 読了。

    ・大正時代、父親が株の投資に失敗して夜逃げするようにやってきた北海道・知床。原生林が広がり、開墾した土地を手に入れて農業で一旗揚げようとも考えるが…。
    その家族の一人であるとわが主人公の物語。厳寒の大地、巨大なバッタの襲来、アイヌ民族との交流。
    下巻も楽しみ。

  • 大正5年、とわの一家は福島の田舎から夜逃げするようにして北海道は知床半島の宇登呂の更に山奥、イワウベツに移住した。原生林を開拓すればその土地が貰えるとの触れ込みだったが、現実は厳しく…。生活が困窮する中、アイヌの三吉にも助けられて何とか生き延びてきたとわ達だったが、ダメ親父の作四郎が死ぬと、母子はイワウベツを棄て、再婚して茶志骨の開拓農家(栗林家)に入ることに。義父や義兄に馴染めないながらも栗林家で少しましな生活を送っていたとわ達一家に、今度は火事が襲い、義父が焼死してしまう。とわは小樽の商家、越前原右衛門商店に奉公に出されるが、そこの後妻がまた癇癪持ちで…。

    大正から昭和へと移り変わる中、とわは貧困とそして時代に翻弄されていく。

    (ちょっと読みにくいが)とわ達のコテコテの福島弁がなかなかいい味出している。聡明で頑張り屋のとわの生きざまに、逞しさと切なさを感じつつ、下巻へ。

  • 3月21日~29日

    物心ついたとき、少女はここで暮らしていた。アイヌ語で、「地のはて」を意味するというこの土地で。おがちゃの背中と、あんにゃの手に、必死にしがみつくようにして。北海道知床で生きた女性の生涯を、丹念に描き、深い感動を呼び起こす。構想十年―書き下ろし長編小説。

  • 福島から知床に開拓民として入ったとわの家族の物語。上巻はとわの母つねが夫作四郎に連れられて一家もろともに夜逃げし、イワウベツに入植し、生きていくことがとわの視点から描かれていく。

    最初は読みづらかったが、物心のついたとわが、アイヌの三吉、三吉のフチとなんの先入観もなしにやりとりして、野草などの厳しい自然のなかでの生活の知恵をつけていくことに目がいった。また小樽での奉公人として生活も含め、たくましく生きていくとわに引っ張られてぐいぐいと読み進めることができた。

  • 明治の終わり~大正にかけて、北海道開拓に赴いたある家族、という設定の物語。当時の暮らしや北海道の生活、アイヌの人々の知恵などが物語の中にほどよく散りばめられており、読みやすい。
    最初は開拓に巻き込まれた母親目線で、そのあとは北海道で育った記憶しかない娘の目線で描かれる。北海道の山の生活しか知らない彼女の都会へのあこがれや自然への思い入れが豊かに描かれており、面白い。
    北海道開拓の歴史やアイヌの人々の温度感を小説のなかで学べ、人の一生についても考えることができる一冊。下巻も楽しみです。

  • 訛りは難しかったけれど、地の文のおかげもあって意外と読み進め易かった。

  • レビューは下巻にて

  • タイトルからして苦難の物語だろうと思ったらやはり。大正時代に開拓民として北海道に入った家族が苦労して生活していく話。家族のお母さん目線の話が、ちょっとしたら娘目線になった。その先はその娘が主人公。しかし北海道はいいけれど、知床半島とか、タイトル通り随分果てまで行ったものだと。いや、いまだってそこで暮らしている人は多いのだから(そうやって開拓民だった人たちの子孫だわね)、果てと言う言い方は失礼だけど、当時は本当にまだほとんど誰も住んでいなかった地。寒さも厳しいのによくぞそこまで。

  • アイヌ語でシリエトク。「地の果て」知床にやってきた作四郎、つね、直人、とわの一家。大正時代、北海道開拓が政府によって奨励された。農家の次男坊、三男坊が自分の土地を求め、親戚に見送られて希望と金を持ってやって来るものも居たが、作四郎一家のように、借金から逃れるため夜逃げしてきたり、犯罪に手を染めたものも少なくなかったという。
    福島から数日かけて、ようやくイワウベツの入植地にたどりつく。森林の大木を伐採してひらき、一家は屋根と四本の柱を板で囲い、むしろを下げただけの家で、互いの体温であたため合って氷点下三〇度にもなる冬を越えなければならなかった。しかし、ほんとうの試練はこれからだった。

    つくづく自分は甘いと思わされました。ふわふわした幸せな物語ばかり読んできて、この現実に突き当たったとき、受け止める度量がない自分に気がつきました。それほど過酷な人生をいきたひとたちが、ここにいる。小説は、想像を超えた人生を教えてくれます。この物語は、わかりやすい、そして人の血がかよったことばで綴られていくのでひきこまれ、考えさせられます。

  • 方言が分かりにくくて読みづらかったけど、慣れるにつれておもしろくなってきた。
    12歳で奉公って考えると、昔の人は本当に大変だったんだなって思う。
    とわ、がんばれ!

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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