裁きの曠野 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772570

感想・レビュー・書評

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  • 猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ、5作目。
    「震える山」の1年ほど後なのか、長女のシェリダンは14歳で、少しだけまた変わってますよ。

    サドルストリングは雪解けの頃、猟区管理官にとってはやや暇な時期だが、地元の大牧場の女主オパール・スカーレットが失踪という大事件が。
    三世代前からあたりを開拓し、一帯を支配するような存在だった一家だが、今や猛烈な相続争いが巻き起こります。

    一方、第一作で取り残された少女エイプリルを世話していた件で、実父と名乗る危険な男キーリーがジョー一家を逆恨みして付け狙ってくる。
    反りの合わない人物が上司となってしまい、受ける嫌がらせに耐えつつ、それどころじゃない危機に直面するジョー達。
    しばらく登場しなかったネイト・ロマノウスキも姿を見せ、アクションが盛り上がる展開となります。
    そして、ジョーには人生の転機が?!

    タイトルは変わった字を使っていて、荒野じゃいけないのか?という気もするけど、野というよりは山岳地帯だし、とはいっても山はいつもだし、今回は牧場メインだし…荒野じゃ西部劇そのもの過ぎ?などと考えを巡らせてしまいました(笑)
    2006年の作品。2012年翻訳発行。

  • ジョー・ピケット猟区管理官シリーズ第五弾。

    今回は過去との闘い。
    ジョーたちが亡くした娘の実父が憎しみをたぎらせて迫ってくる一方、
    町よりも古い牧場の家族の仲たがいが小さな町を揺るがす。
    ジョーは、猟区管理官として、人として行動してきた今までの成り行きから、
    上司との関係は最悪なものになってしまい、その果てに…。

    子供たちが難しい年ごろになりつつあり、
    小さい頃から知っている読み手としてはちょっと切ないが、
    親友のネイトが戻ってきて誤解を解けて良かった。
    追われる身として、またどこかへ姿を消したが。

    天職ともいえる猟区管理官を解雇されてしまったジョーの、
    今後はどうなってしまうのだろうか。
    とても気になる。

  •  さて本書の題材は、シリーズ作品にはよくあるパターンかもしれないが、いわゆる過去からの復讐鬼である。第一作『沈黙の森』で引き取ったエイプリルは、第3作『凍れる森』で悲劇を迎えるがその実際の父と称するジョン・ウェイン・キーリーが、われらが猟区管理官ジョー・ピケットへの復讐の旅に出立する。

     一方で女牧場主オパール・スカーレットが失踪する。彼女と三人の息子たちは事実上町の支配者であり、彼女の失踪はジョーの世界にとっては社会的影響も強い大事件であるようだ。

     復讐鬼についても、町を支配する牧場主一族についても、シリーズにとって唐突すぎるきらいはあるけれども、お馴染みの役所組織内部の軋轢や、僻みにしか見えない上司のパワハラ、さらに個性的で破天荒で考えの分かりにくい州知事ルーロンとの出会いなど、ジョーを取り巻くキナ臭い日常風景は健在で、彼と妻メアリー・ベス、成長著しい長女シェリダンと幼く愛らしい次女ルーシーの家族、姿をくらましたままの謎の親友ネイト・ロマノウスキなど、シリーズの脇を固める環境や人物たちの配置は、もはや馴染み深いものである。

     そして何よりもこの小説世界を取り巻くワイオミングの山岳地帯は、相変わらず主人公を活かす最大のロケーションであり、それらは広大な区域に大量の動物たちと大自然を息づかせる美しい小説背景として、このシリーズのオリジナリティを最大限に創りあげ、途轍もなく気高い。

     オパールが疾走することで激化する三兄弟の諍いの中に、復讐者キーリーが紛れ込むことで、状況は複雑性を増す。キーリーのピケット家への威嚇デモンストレーションは容赦なく、暴力性を増すばかりで、家族のバランスを危うくさせるし、スカーレット家との駆け引きにも似た捜査活動が、キーリーの憎悪という一点に辿り着くまでの大構造は読む側にしか見えないものであり、とてもスリリングだ。

     一族の古臭い形での町の支配と息子たちの個性や暴力性といったところが、まるでクリント・イーストウッド演じるジョーが潜り込んだ『荒野の用心棒』の世界のようであり、訳者が巻末解説でゴシックと言うほど時代めいた情念の対立構造である。こんな世界構造が既に張り詰めた危険の気配を満たしているところに、キーリーの復讐行動が実行されるあたりからは、力と力のぶつかり合いとなるウエスタンそのもので、あたかも決闘のようなクライマックスである。

     嵐の夜、激流を下るジョーとネイトのシーン。微笑むオパールの目撃談の真相がわかる瞬間。復讐者キーリーが破壊の限りを尽くすスカーレット家の顛末。……などなど、手に汗握るアクション、またアクションで綴られたシリーズ世界は他に類のない冒険小説の原型のような物語でさえある。

     スカーレット家と復讐者の事件は、一方で、ジョー・ピケットに運命の転向を迫り、次作に繋がるであろう不安定な状況設定にて幕を閉じる。気になってやまないこの終章。当初はシリーズ化を考えていなかったという作者の、思わせぶりな笑が見えるようである。

  • CL 2023.11.1-2023.11.3
    猟区管理官ジョー•ピケットシリーズ5作目。
    広大な牧場の女主人の失踪とそれにまつわる兄弟の諍い。ジョーの一家を付け狙う過去からの復讐者。ふたつの事件が絡み合い、とことんソリの合わない上司や全く当てにならない保安官との確執を抱えながらも、やっぱり家族を守るために闘うジョー。
    終盤、嵐の中ネイトと増水した川を下っていくシーンは迫力満点。
    こんなに真っ直ぐなジョーをもう少し理解してくれる人が増えてもいいんじゃないかなー

  • ワイオミングの猟区管理官ジョー・ピケットシリーズ5作目。今回は、広大な牧場を持つ女性が失踪した謎を追う。さらに過去の事件の関係者の男がジョーや家族を狙い、ジョーの上司は彼をしつこく追い詰めて悩ませる。収入の低さに恥を覚えたり思春期の娘との関係に落ち込んだり、相変わらずジョーの普通さが好ましい。どんな危機的状況でも自分の信念は決して曲げず貫く彼が、今作後半で大きな転換期を迎える。次作以降どうなるのか。ますます先が楽しみ。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    失綜した女牧場主の莫大な遺産をめぐって憎悪を募らせる息子たち。否応なく巻き込まれた猟区管理官ジョーにさらに邪悪な復讐者の攻撃が迫り、愛する娘も危険にさらされていく。ジョーは大切な家族を守りきれるのか?ワイオミングの大自然を舞台に不器用だが熱い男の孤独な闘いを描く好評シリーズ第5弾。

    いちばんのくずはホープだな。
    保安官もくずだけど。
    かっこよくないのにかっこいいジョー・ピケット。
    メアリーベスは結局そこにほれてるのですよね。
    今後が楽しみな展開のところでおしまい。
    次!

    In Plain sight by C.J.Box

  • ジョーがジョーであるための支えとして描かれるメアリーベスが素晴らしい女性だなぁ。ジョー一家が逆恨みの非情な殺人者に狙われドキドキハラハラ。上司のパワハラで思い通りに行動できない、行動させてもらえないもどかしさ!やっぱり西部劇はイイ!みごとにカタルシスを味あわさせてくれる!面白かった。

  • 相変わらず面白い。
    だけど今回はそんなに解決したような感じがない。
    復讐者との闘いが、主人公の立場の問題もあってかやや弱い。
    新展開へのつなぎのような感じがある。

  • シリーズものを読む面白さが詰まった一冊。
    過去の事件が、まるでよみがえってきたかのようにジョーと家族を襲ってくるサスペンスと、前作で関係がこじれてしまった小狡い上司が昇進したためにジョーが被る面倒。前作から続いている、親友ネイトと妻メアリーベスへの疑い。町一番の古株かつ凶暴な変人だらけの一家に起こった失踪事件。
    これらジョーの悩みも極まったところに、解雇という大きな風穴が開きます。(これが良い結果に繋がって欲しいという思いで風穴と言いたい)
    今までジョーを支えてきた猟区管理官という仕事、それを失った喪失感は大きすぎて、ラストで引き金を引いてしまったジョーは、シリーズ中ずっと守り通してきた公平さをかなぐり捨てるまでに追い詰められているように見えました。
    身一つで生きるネイトと、愛する仕事と家族を守りたいが守れずにいるジョーとの対比を強く感じた巻。

    しかしメアリーベスってそんなにいい女なんだろうか。
    なんだかジョーを、心の底から尊敬してはいない気がする。自分がジョーの「ステージ」まで降りて行ってやったという気持ちがあるんじゃないかな(母親の影響か)。
    ジョーに対してところどころえらそうな割にネイトにゆらめく彼女をチープだなと思ってしまう。
    そんなメアリーベスを最高の妻と思っているジョーもまた、ジョーのキャラとしていい感じなんですが。
    ちなみにメアリーベスの顔だちのイメージはキーラ・ナイトレイ。

  • シリーズ

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