新装版 日暮らし(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770484

作品紹介・あらすじ

佐吉が人を殺めた疑いで捕らえられた。しかも殺した相手は実の母、葵だという。生き別れた親子に何があったのか。「この世のことを一人で全部背負い込むわけにはいかないんだよ」。辛くても悲しくても決して消えてなくならない遺恨と嘘。本所深川の同心、平四郎と超美形の甥っ子、弓之助は真実を探り始める。

感想・レビュー・書評

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  • 人情が濃い上巻の一冊。

    あの「ぼんくら」が好きでまたあのメンバーに会いたくて。
    やっぱり良い。 
    物語に漂う空気感のなんて心地よいことよ。

    メンバーのその後の暮らしが微笑ましさ、時に不安を交えながら描かれ、ゆっくりとそれぞれが抱えるものが沁みてきた。

    弓之助、おでこ、おとよ。
    相変わらず平四郎と子供たちとの絡みが良い。

    人に手を差し伸べる温かさという宮部さんらしい人情の濃さ、可愛さをどっぷり味わう傍らで起きたまさかの事件。
    佐吉が実の母を殺めた疑いで捕えられた…って、どうなる下巻。

  • 平四郎シリーズ第2弾。
    相変わらず少し優しくて腹が立って悲しい人間達のお話しが、的確でユーモラスな文体で書かれています。
    このシリーズは中毒性があるのか、すごいスピードで読んでしまう。
    宮部みゆきさんは観音さまなのかしら。よくもまああるがままをそのまま受け止めて、「そうだから、そうであるしかない」なんて言えちゃうものだな。
    やばい。1日一冊で読んで行きそう。

  • おでこが飯を食わなくなってしまった話「おまんま」、新婚の佐吉・お恵の夫婦仲がギクシャクする話「嫌いの虫」、葵の囲われ屋敷の女中が変質者に狙われる話「子盗り鬼」、破格値の菜屋の謎を解く話「なけなし三昧」の四篇。何れも「ぼんくら」スピンオフ作品。

    「ぼんくら」ワールドが味わえるのが嬉しい。

  • ぼんくらの続編。
    語り口がとてもよくどんどん読める!
    下巻も楽しみです。

  • 読みやすいし面白かった

  • 図書館で。
    ぼんくらの続きか~とデコの短編辺りはサイドストーリーとしてふぅん、と読んだのですが官九郎が死んだり、佐吉さんが下手人扱いされる辺りでダウン。
    そりゃあ人生平々凡々というわけにはいかないんだろうけど苦労した人がさらに苦労するのはあまり読みたくないという甘い考えです…

  • 2004年に出版された宮部みゆきの時代小説。

    文庫は2008年に上中下の3巻組で発売され、そのわずか3年後の2011年に上下の2巻組に再編されて新装版として発売され直しているのが面白い。定価の合計は2巻組にして下がったものの、3巻組はさすがに手に取りにくかった人が多かったのでしょうか。

    膨大な積読の山を前に呆然と日々を送っている自分ですが、積読には積読なりの利点があります。そして数多い利点のうちの一つが、シリーズものを続けて読めること。
    前作「ぼんくら」を読み終わり、間をおかずに続けてこの作品を読めるのは幸せです。

    舞台は前作の一年後、物語の始まりは夏です。
    前作同様連作短編と見せかけてそれぞれの短編がつながる長い章があるという構成は前作同様で、シリーズを続けて読んでいるとこういうのは嬉しくなります。

    前半の連作短編で語られるのは前作の登場人物の後日談。「おでこ」の三太郎の、若すぎる差配人佐吉とカラスの官九郎の、「ぼんくら」では名乗らせてもらえなかった葵の、そして鉄瓶長屋の心お得の鉄瓶長屋を巡る騒動のその後は、みなそれぞれの居場所で、その日その日を送っているようです。

    「おまんま」では寂しい身の上のおでこの三太郎が自分の今の境遇について悩みます。彼の異様な記憶力がとある事件の解決の手掛かりに結びつき、それが悩んでいる彼の立ち直りの切っ掛けになるという構成が連作短編の捕物帖の一編として面白く成り立っていると同時に、後の伏線となっていて巧みさに感心します。
    あと、タイトルの「ひぐらし」は、人それぞれに違うおまんまのいただき方をしながら、その日その日をその日暮らしで必死に生きている人たちの人生のことなのか…なんて考えさせられました。

    「嫌いの虫」では新婚の佐吉とお恵の話です。新婚夫婦の最初の諍いと仲直りまでを描いてまあ犬も食わない感じではありますが、その遠因は、佐吉が鉄瓶長屋の跡に建った湊屋の「藤屋敷」で聞かされた一言にあったようです。
    この一言は読者もおやっと思わされるもので、物語が動き始めたことを感じます。
    そして、ここにきて登場した弓之助がキレッキレなこと。前作をはるかに上回るその推理は、まるでシャーロック・ホームズを初めとする並み居る名探偵が見せるもののようです。

    「子盗り鬼」ではようやく出番が来た葵が活躍します。やられ役としてストーカー孫八が登場しますが、そのストーカーっぷりの気持ち悪さに「名もなき毒」の原田いずみを思い出しました。宮部みゆきの時代物は現代の事象や価値観を上手に持ち込んで読みやすさがを高めていますが、時代物にストーカーはその典型でしょう。
    前作ラストではあまり良い印象がなかった葵ですが、下巻ではお六に対する態度や的確に指示をして孫八を撃退するさまなど、ずいぶん印象が違います。そして佐吉への気持ちがこの章のタイトルに絡めて語られています。

    「なけなし三昧」で今作で出番のなかった平四郎とちょい役だけだった弓之助がようやく本格的に登場します。弓之助の従姉のおとよとお徳の商売敵が加わり、登場人物が賑やかになってきました。

    そして「日暮らし」でこれまでの雰囲気が一転します。「佐吉の目から、ぽたりと涙が落ちた」で下巻に続きます。

    魅力的な登場人物全員が幸せになって欲しかったのですが、湊屋が関係するとなかなか簡単にはいかないようです。佐吉に幸あれと祈りつつ、続けて下巻を読んできます。

  • 葵さんが格好良い。お六さんに付き纏っていたやつをやっつけるところはスカッとして面白かった。
    おでこちゃんの悩みも可愛らしくて切ない。
    新婚の佐吉、お恵の夫婦喧嘩。
    お徳さんの煮売屋に、訳ありライバルが現れたり。

    前作のぼんくらでモヤっとしたところが、ビンゴカードの数字がめくれていくように、各エピソードとして浮かびあがる。

    そして、本題の日暮らしへ。
    弓之助と平四郎は、実の母 葵を殺めた疑いで捕らえられた佐吉を救えるのか? で下巻へ。

    本題に入る前にのエピソードがバラエティ豊かで朗らかな調子な分、本題の謎がグッときそうな予感。

  • 「ぼんくら」の続編なので、ぜひ読み終えてから手に取ることをおすすめします。
    井筒平四郎はもちろんのこと、弓之助、お徳、おでこなどのキャラクターが生き生きとしています。
    前作、ぼんくらの話が深くかかわっているのもあって途中で本を閉じたくなく夢中で読みふけりました。

  • 全2巻。
    ぼんくらの続編。
    http://booklog.jp/users/bullman/archives/4062747510

    ぼんくら同様、前半1話完結、
    後半それらがまとまってく構造。

    前作と同じ構造だけど、
    伏線がわかりやすくなり、
    話も前作に比べ明るめで、
    素直に楽しめる。

    作品としての完成度は若干落ちるかもしれないけど、
    前作で登場人物達を好きになった人達には
    とても嬉しいファンブックな感じ。
    登場人物達がよりクッキリとしてきて、
    どんどんこの世界が好きになる。

    これで1作目の呪縛というか、
    完結してた物語から脱却できたと思えるので、
    3作、4作と、シリーズとして長く続いてほしい。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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