虹の彼方に (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.88
  • (6)
  • (11)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768146

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 結局、この時期から日本はまったくいい方向に動けていないままであることがわかる。
    処方箋を出してくれている人たちはたくさんいるのだが、どれも届かぬまま…

  • 今から10年以上も前のエッセイなのに、全く古くない。今もそうじゃん、そうだよね、と思いながら読んだ。めちゃくちゃおもしろかった。

  • 知る限り池澤夏樹唯一の講談社文庫作品。
    「現代」の2000年1月号~2006年12号の巻頭に連載されていたミニエッセイをまとめたもの。

    今年は『すばらしい新世界』『光の指で触れよ』という夏樹の長編を読む機会を得た。
    いずれも「3・11」後にこそ読まれるべき作品だと思う。師走に総括的な意味もあり、
    本書を手に取りました。

    そしてこのエッセイ集を読んで思ったのは21世紀の最初の10年間は平和どころか極めて、
    戦争にあけくれた期間でありあまり平穏ではなかったということ。

    確かに少し理想的に過ぎる部分は感じるが、まあ作家の役割は言葉で世界のありようを
    伝えることなのだから致し方ない。逆にこういう人が減っていくのは危機的だと思う。

  • 物事を側面からみることを学びました。
    とても面白かったです。

    2007に出版されたものながら、日本の今をうつしていると思う。

  •  コラム集。2000年から6年間にわたって月刊『現代』ほか、雑誌や新聞等に掲載されたコラムをあつめたもの。
     沖縄で何が起きているのか。民族とは。スマトラ沖地震から学んだものとは。イラク派兵、9・11、憲法改正論。風力発電と原発、公害と個人の意識……。

     そういうつもりではなかったけれど、時期的に政治色が強くなってしまったと、ご本人も中で触れておられますが、イスタンブルの書店の品揃え、フランクフルトのブックフェアの話、水の流れと文明のかかわりなどの話題も。

     わたしはもともと小説はこまめに読むけれど、エッセイやコラム、評論などは、あまり熱心に読まない人間なんです。(ほんとは読んだほうがいいと、思っていないわけじゃないんですけど……)でも、池澤夏樹さんと梨木香歩さんの本は例外。
     単純に好きだからなのだけれど、じゃあどこが好きなのか、どう好きなのかということは、説明するのが難しいなと、レビューを書きながら、たびたび思います。

     それでも説明するならば、その姿勢、視点、視野、そういうものへの、共感と憧れだと思います。同感と思うにしろ、驚くにしろ、ひとつひとつの言葉がストレートに自分の胸に響く。面白い本に出会うのは、そう難しいことではないけれど、そういう作家さんにめぐりあえるのは、すごく幸運なことだと思います。

     もうちょっと客観的なことをいうなら、池澤夏樹さんは、理系と文系のどちらの分野にも、造詣が深い方です。これまで北海道、東京、沖縄、フランス、ギリシャとさまざまな地での暮らしを経験されています。旅もたくさんされる。職業柄ということを差し引いても、ものすごく読書家で、ここ数年は世界文学の紹介にも力を割かれています。そうした経歴のこともあるのでしょう。その視野はとても広くて、深い。それから、公正であろうという姿勢。

     いろいろ考えさせられた一冊でした。

  • ・誰にとっても自分が住んでいるところが世界の中心である。地方とか辺境というのは,中央とされるところに立っての話。そんな仮説は突っぱねて,それぞれにここが世界の中心と信じよう。そこから出発しない限り,本当に豊かな生活はあり得ない。
    ・きみたちの世代はマニュアルばかりで,森羅万象の手応えを知らないんじゃないか?プラスチックの質感は知っていても土の匂いを知らない。それに気づいたら旅に出るといいよ。危ない旅をするといい。
     日本の社会は温室だ。若い人たちを安楽で包んで飼い殺しにする。そろそろ誰か蹴破って風を入れてくれないかな。破壊工作,一緒にやろうか?(「若い人への手紙」)

  • すごくタイムリーな内容だった。今こそ、いろんな人に読んでもらいたい本。石原慎太郎、暴力化するアメリカ、災害からの復旧、そして原子力発電。。これからいかにして愚かさから距離をおくことができるか。。

  • 2000年から2006年までの間に書かれたコラム集。2006年の最初のところに掲載されている「グリーンゾーン」で、バグダッドのブロガーが紹介されていました(http://www.geocities.co.jp/riverbendblog/)。面白そうだな、と思ってブログに行ってみたら、2007年10月22日で更新が止まっていました。翻訳が中断したのかもしれないと思って本家の方(http://www.riverbendblog.blogspot.com/)にも行ってみましたが、状況は同じ。ブロガーさんがシリアに渡ったところで途切れています。単にブログを止めただけであればよいのですが・・・。

  • 2000年から2006年までに書かれたコラムなのに、タイムラグを感じずに、今現在の世界・日本のこととして読んでいた。沖縄に住んでいるときに主に書かれていたもので、その場所に住んでいるから見えるものがあるのですね。2004年に書かれた「若い人への手紙」を忘れずにいよう。

  • エッセイ集は、雑誌や新聞などに掲載されるリアルタイムなエッセイに比べ、圧倒的に鮮度が落ちる。とりわけ社会のスピードが速い現代においては。では読者にとってのエッセイ集の意義とは何か。
    ①著者の思想を知ること。すなわち、その人がどんな立場で、どんな方法論で、どんな論拠で、物事を論ずるのかということ。
    ②著者の交友関係を知ること。

    「0年代」と銘打たれた帯書きを参考にするのならば、著者がどういう思想で0年代を見つめていたかが良く判るエッセイ集となっている。暴力化する世界、そして日本。今現状の世界及び日本を省みるに、著者の批評は正鵠を射ていると思う。
    著者が本書で佐藤優氏を取り上げていた。そしてそれに応える形か、解説を佐藤優氏が執筆している。この取り合わせは面白いと思う。一見、立場は全く違うように見えても、互いの相手に対する視座は非常に興味深いものがあった。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池澤夏樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×