新装版 雪明かり (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062755658

作品紹介・あらすじ

短編の名手が綴る 哀しく愛しい男と女

貧しくも、明日への夢を持って健気に生きる女。深い心の闇を抱えて世間の片隅にうずくまる博徒。武家社会の終焉を予感する武士の慨嘆。立場、事情はさまざまでも、己の世界を懸命に生きる人々を、善人も、悪人も優しく見つめる著者の目が全編を貫き、巧みな構成と鮮やかな結末とあいまった魅惑の短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 大層な年齢を生きているわけでなく、
    でも、若いわけではない今。
    それくらいの年齢になると、
    喉元につっかえ続けている小骨のように、
    痛いわけじゃないけど、
    物が当たると違和感を覚えるくらいの、
    なんとなく心に残る思い出と感情が、
    少しずつふえていく。

    そんな小骨たちは日常を生きる中では、
    大して影響はないけれども、
    ふと、何かのきっかけで思い出すことがあって、
    その時、昔の感情も一緒に思い出される。
    良いことも、そうでないことも。

    そんな小さな感情を思い出すような、
    小さな物語の集まりが、読んでいて心地良かった。

    短編の中の唯一の娯楽回「遠方より来る」が
    なんともたまらなく好きだった。
    男の意地と、女の現実味、その掛け合わせに
    ほっこりすることもあれば、
    登場人物の気持ちに「うんうん」と
    頷きながら読むこともある。
    楽しい小説でした。

    その他の短篇も、もちろん短篇とは思えないほどの重厚感。

    「いま、跳んだのか」
    を知るために読むべし。

  • 心が疲れた時、どうしようもない障壁に気持ちが折れそうになった時、人が帰りたくなるのが藤沢周平の世界か。
    この短編集は、どれも登場人物の行く末の一歩手前で止められており、読み手に彼ら彼女たちのその後を想像させ、考えさせ、しっとりとした余韻を残す。これも作者の小説作法の妙といえる。
    武家もの、市井もの合わせ、八編が収録されており、何編かは既読であったが、何度となく読み返したくなる作品ばかり。

  • 設定がユニークだったり、意外な展開で飽きさせなかったり、と、最近の時代小説はずいぶんバラエティ豊かになりました。
    それはそれで大歓迎。結構楽しませてもらってます。
    でも、ふと読みたくなるのは、こういう小説。
    地に足ついた安定感。そしてなんかぐっと来る。しみじみと。

    江戸時代の市井の人々や下級武士の、悲喜こもごもを描いた短編集。
    歴史的な事件や有名人物とは無縁の物語は、奇をてらわず、それでいて単純ではなく、深い味わいを残します。
    描かれるのは、人と人の間に当たり前のように生まれる愛憎、ささやかな誇り、捨てられない過去、悔やみきれない過ち。
    読者が、登場人物の苦悩や喜びを、自分自身に限りなく引き寄せて共感してしまうところに、藤沢作品の真価があります。

    今まで読んだ藤沢作品の中でベストかも。
    情景描写、人物描写にいかんなく発揮される手練れの筆致。
    無駄のない言葉で雄弁に語られる等身大の人間ドラマ。
    それをオムニバス形式の映画のように楽しめる短編集って贅沢だな。

  • 改訂版短編集 相変わらずの藤沢節 恐喝 入墨 潮田伝五郎置文 穴熊 冤罪 暁のひかり 遠方より来る 雪明かり。

  • 2006年発行、講談社の講談社文庫。8編。ほぼすべて他の短編集やアンソロジーで既読。覚えがないのは『冤罪』のみ。『冤罪』武家物で家柄が上の家の息子が不正をするよくあるパターンだが、最後のシーンはちょっと笑える。明るい未来があるか。『雪明かり』最初のシーンから最後のシーンへ続く心の動きなどが秀逸だと思う

    収録作:『恐喝』、『入墨』、『潮田伝五郎置文』、『穴熊』、『冤罪』、『暁のひかり』、『遠方より来る』、『雪明かり』、

    以前読んだ作品:『恐喝』新装版 又蔵の火 (文春文庫)、『入墨』新装版 闇の梯子 (文春文庫)、『潮田伝五郎置文』代表作時代小説〈昭和50年度〉 (1975年)、『暁のひかり』新装版 暁のひかり (文春文庫)、『遠方より来る』竹光始末 (新潮文庫)、『雪明かり』時雨のあと (新潮文庫)、『穴熊』は既読感はあるが不明(読書メーター登録前?)、

  •  藤沢周平「新装版 雪明かり」、2006.11発行、再読。全438頁、味わい深い8話が収録されています。ハッピーエンドが好きな私には、哀しい話が多いです。人間の「業」というものの持つ哀しさ、虚しさ・・・読んでて辛い思いでした。でも、読まずにはいられない、そんな8話。「冤罪」は無実の罪で切腹した父の娘、明乃と源次郎に光がさして良かったです。「雪明かり」は、切なく哀しい8話が凝縮された感じがありますが、江戸に奉公に行った由乃(義妹)を追う菊四郎の心意気に大拍手です!
     藤沢周平「雪明かり」、2006.11発行、再読。8話が収録。恐喝、入墨、潮田伝五郎置文、穴熊、冤罪、暁のひかり、遠方より来る、雪明かり。どれも哀しく、そして切ない。でも、長く生きていると、どの物語も以前どこかで見、聞き、経験したような気持ちになる。懐かしささえ覚える短編8話。冤罪と雪明かりには、二人の行く末に光が。

  • 請求記号 913.6-FUJ(上野文庫)
    https://opac.iuhw.ac.jp/Otawara/opac/Holding_list?rgtn=1M027041
    とにかく作品の量と質で、一頭地を抜いている実力派。封建制度にがんじがらめに縛られた人々の悲劇を中心とした前期作品はとにかく暗い。授業・実習・国家試験勉強の合間に読むならほんのりと明るさを醸し出す後期の作品、例えば「海鳴り」などがおすすめ。映画「たそがれ清兵衛」のクライマックス前に清兵衛の身支度を手伝う宮沢りえの凛とした所作に痺れました。

  • It’s been almost four years since I graduated from university, and it’s been several years since I started writing exchange journal with my mentor. We talked not only about English education but also the life we’re living. One day, I wrote about the day I decided to change my first name. He said in the journal, “Sorry, but I don’t know what to say. I’m just wondering what SHUHEI FUJISAWA would, could say to you. “ That’s the reason why I read this book. And today, I finally got a chance to read it. Now I think I could understand what he wanted to say a little. I’d like to express my sincere gratitude to him about giving me such a great chance to know SHUHEI FUJISAWA.
    He told me that human beings are so vulgar that we should keep cultivating our minds. What human beings are should be like cannot be defined. Even if we try to cultivate our minds, it is not so easy to let it so. One of the way to cultivated our minds is reading his books. I have no doubt that all of the stories in the book cultivated my mind. ☺️
    Here’s what he told me through exchange journal:
    「人間の在り方は、どこまでいっても汲みつくせないのです。ここまできたら、さらに先がみえてきて、そこまでいくと、さらに先があるのです。なぜかというと、人間は俗っぽいので、みえても、行きつけないのです。だから、その俗っぽさを、たとえ一瞬でも、藤沢周平によって、洗ってもらうんです。洗う、洗ってもらうことは、なかなか、そういう気持ちがあっても、できんのです。だから、本を読む。手に取れば、必ず洗ってくれる。」

  • 挑戦したけど。高尚すぎてw

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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