- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062731355
作品紹介・あらすじ
品川台町に住む鍼医師・藤枝梅安。表の顔は名医だが、その実、金次第で「世の中に生かしておいては、ためにならぬやつ」を闇から闇へ葬る仕掛人であった。冷酷な仕掛人でありながらも、人間味溢れる梅安と相棒の彦次郎の活躍を痛快に描く。「鬼平犯科帳」「剣客商売」と並び称される傑作シリーズ第一弾。
感想・レビュー・書評
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梅安は、初めて。鬼平や剣客商売よりもダークな色合いだな。
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ちょうど映画を見てとても面白かったので、原作をと思い読んでみました。人気なのか、1巻が書店に置いておらずに苦労して探し出し、購入。
やはり池波作品は、私にはハマる。面白かったです。映画は少し構成が違いますが、映画も世界観を崩さずに映像化している感じでした。小説の方は割とあっさりしている感じで、映画の方が梅安さんの心情がもう少し深く描かれているような感じを受けました。梅安さんと彦さんの関係性も、付かず離れずでいい関係で、素敵です。
この作品もシリーズを揃えて、読みたいと思います。 -
▼「殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安(一)」池波正太郎。講談社文庫。初出は1972年の「小説現代」不定期連載のようです。高度経済成長期の出版界のスターだった池波さんらしく、鬼平=文春、剣客商売=新潮、梅安=講談社、と見事に棲み分けていますねえ。表稼業は針医者、裏稼業は職業殺し屋という藤枝梅安と、バディである彦次郎というふたりを軸に描く一話完結連作シリーズです。池波さんの死去(1990)まで断続的に連載が続いて、鬼平や剣客商売と同じく最後は未完に終わっています。
▼時代小説ファンには説明不要な有名作で、江戸中期1800~1810くらいの期間の舞台設定。ちなみに鬼平は10年くらい前(1790年代くらい)で、剣客商売は20年くらい前(1770~80年代)だそうです。さらにちなみに言うと「田沼時代」が1770~85年くらいで、1786~93年くらいが「寛政の改革」。写楽で有名な蔦屋重三郎が活躍したのが1780-95くらいで、「落語や寄席のカルチャー」は寛政の改革前に勃興して、隆盛を誇るのは1800年代から明治大正です。忠臣蔵の赤穂事件(元禄)は1701-1703。
▼初作直後にテレビプロデューサーが目をつけて「必殺仕掛人・梅安」としてテレビシリーズ映画シリーズになり、これが「必殺シリーズ」の端緒です。その後、池波さんがシリーズ化を拒否したことから、池波ワールドから離陸してオリジナルの形でテレビシリーズが長く長く長く続いていくことになったそう。「梅安」も何度も映像化されていて、緒形拳、小林桂樹、萬屋錦之助、渡辺謙、岸谷五郎、豊川悦司といったスターたちが演じています。個人的には(同時代ではないけれど)緒形拳版を何度か見ているので、ついつい緒形拳のイメージで読んでしまいます。
▼鬼平シリーズの裏返しというか、「人情味あふれる善と、非情残酷な悪とが、世間ではそして一人の人間の中でも矛盾して同居している」という通底音を、「犯罪者の側をヒーローとして描いた」ということですね。このあたりの池波ワールドが好ましい人には、たまりません。ちなみに個人的には子供のころから「必殺シリーズ=中村主水」で育ってきたのでその世界観は嫌いじゃなかったんですが、「池波節」については若いころは今一つノレなかったんです。ところが中年になってきて「ああ、なるほどこれは確かに楽しめちゃうな」と開眼(笑)。どこか地下水脈では確実に「メグレ警視(パリ)」が「池波ワールド(江戸)」と重なっていますね。池波さんはゼッタイ好きだったはず。一方で司馬遼太郎さんもジョルジュ・シムノンの愛読者だったというあたりも滋味深い。さらにちなみに言うと漫画「ゴルゴ13」は1968年開始ですから、その影響がなかったかというと誰にも分かりません。
▼第1巻は「おんなごろし」ほか5編が入っていて、梅安の紹介~彦次郎の紹介~すぐにふたりは京都への旅~江戸戻り、という流れ。彦次郎が昔、妻子を嬲り殺しにされた悪漢に復讐をはたす京都編あたりが味わい深い。それから、鬼平もですが池波ワールドの神髄、「食べるものがいちいち精緻に描かれて美味そう」というのも素敵ですね。 -
今から50年以上前に、緒方拳が梅安役を演じた”必殺仕掛人”を思い出しました。こんな素晴らしい原作だったんですね。当時、テレビ放映を楽しみにしていました。池波正太郎の原作はどのシリーズも美味くて飽きさせない。
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池波正太郎はハードボイルドなのだ。
ブレードランナーがSFにハードボイルドを導入したように、時代劇にハードボイルドを引き込んだと言おうか。
簡潔かつ切れ味のある乾いた文体がたまらない。
鬼平よりも雲霧や梅安の持つダークな世界観にグッとくる。皆どこか諦観に支配されているのだ。
ヘタな翻訳ものを読むよりもシビれる。
何度か映像化されているようだけれども、梅安は渡辺謙版、雲霧は山崎努版が最高。 -
映画化作品が2月に公開されるとかで、カバーは出演者の面々の写真が。
久しぶりに読んだが、豊川悦司のイメージは浮かんでこなかった。 -
最近読み直したが、やはり面白かった。
きびきびとした疾走感のある文章につられて、勢いよく読み進んでしまう。
私にとってメインのストーリーとは別に魅力的なのは彦さんの一人前料理だった。
独り暮らしを始めたばかりで料理に慣れていない頃でも小説の手順で材料をそろえてそれらしいものを作ることができ、しかも美味しく家計にも優しい。
他の小説を読んで真似してみたらどうなるかな、と考えたことも無いので、やっぱり彦さんは(池波さんは)すごいと思った。 -
池波正太郎先生の作品では、梅安ものが一番好きです。表の顔が、人の命を助ける針医者で、本当の顔が、その針で人を殺す仕掛け人。悪と善が混ざり合ったダークヒーロー梅安がたまらないです。
また江戸時代の風俗や人情の描写が生き生きとしていて引き込まれます。 -
映画『藤枝梅安』を観ようと原作を読み出したけれども、先週で上映終了となったようだ(-。-;)
池波正太郎は剣客シリーズは全作読み終えたけれども、鬼平シリーズは一巻を読んで止まったままだ。面白くないわけではなく、剣客シリーズほどははまらなかっただけなのだが、読んでみたい気持ちはずっとある。この梅安シリーズを終えたら読んでみよう