- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062728874
作品紹介・あらすじ
語られざる男性たちの苦悩を描いて、ベストセラーになった『男はつらいらしい』(新潮新書)。男たちはさらに歳を重ね、結婚、育児、介護、自らの老い、そして仕事に葛藤していた──。
ジェンダー論者やフェミニズム論者のような一面的な「男社会」論からはこぼれ落ちてしまう中年男性たちの悲哀と苦悩。10年にわたる取材を通して浮かび上がる、決して予定通りにはいかない人生の難しさ。少子高齢化、未婚社会、介護離職、老後破産……取材対象者の姿を通して見えてくるのは、日本社会がリアルに抱えるリスクの実態。
自身、リストラ・未婚・老親介護の苦悩を抱えながら、一取材者として“異なる性”である中年男性たちと向かい続けてきた女性記者が、足で稼いで掴み取った生々しいホンネの証言の数々。
現代日本社会の知られざる側面を炙り出す、現代人必読の良質なドキュメント。その先に、浮かび上がってくる「自分自身」の姿に、読む者は戦慄する。
感想・レビュー・書評
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結婚がこわい、育児がこわい、介護がこわい、老いがこわい、仕事がこわい…って、怖がりすぎだろ!と若いころの私ならば飛び蹴りの2~3発でもかましたくなるところで、今の私だって、飛び蹴りとは言わずとも、回し蹴りの1発くらいはお見舞いしたい気持ちになる…のは目次まで。
中身を読むと、「そんなことこわがってるなんて甘い」とはとてもじゃないけど言えず、そういうことってあるよね…とその「こわさ」をまじまじと見つめることになる。
男性の老いに対するこわさとかも、なんかもう女性からすると、そんなことを考えてるのね、と、もうこれはカラダのつくりの違いからくるものなんだろうけれど、新たな発見というかなんというか。
女性の方が、こういった問題について「友達となんとなく愚痴を言い合って、解決した気持ちになりつつ、日々を乗り切る」みたいな術を持ち合わせてきたように見えて(コレまでの時代、育児がこわいとか、介護がこわいとか言ってる場合じゃなくて、女性(嫁)が担うしかなかったってのも大きいのかも)、それを苦手とする男性たちが、これからどうこれらの問題と向き合い、解決していくかってのは大きな問題なんだろうなと。
ともあれ、ここで語られている問題の裏側には、「育休世代のジレンマ」で取り上げられていた女性側の問題もあるよねというのは色々感じられて。だって、育児がこわいっていってた旦那さんの、仕事を辞めて専業主婦になった奥さんの「ダンナの仕事のために辞めたわけじゃない。自分の仕事にやりがいを見出せなくなったから辞めた」って、それまさに育休世代のジレンマっていうか、マミートラック?まさにそれよね、なんて。
数多くの男性を、かなり長期間にわたって取材し続けた本書は、密度も濃いし、文章も面白い。女性たちの悩みの裏側で、男性は何を考えているのか。これからの時代、「育児と仕事の両立」を本当に実現するには男性の意識改革がカギだと思っているのだけれど、その男性たちも悩みを多く抱えているんだよね、という当たり前のことに気づかされた。たぶん、これまた当たり前だけれど、私たちが協力し合えることは多いはずなんだ。そうして世の中が少しでもいい方向に、多くの男性が多くのことを怖がらなくて済む世の中に、なることを祈って。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
丁寧に取材された良書です。何が価値があるかというと、取材をした方の
「過去」「その時」「そして今」を、数年から十数年に渡って、継続的に取材されている点です。
キーワードは、「結婚」「育児」「介護」「老い」そして「仕事」です。
この6つの現実を、取材した対象者を通して丁寧に語られています。
何が語られているか?それは、今の時代の変化であり、今の社会で生きる大変さです。
具体的なエピソードが盛りだくさんですが、どれも、重いテーマを含んでいます。
人が他人を見て、幸せそうだな、充実してそうだな、不幸そうだな、可愛そうだなと、その人の
一時を見て判断する傾向があります。しかし、時が経てば、自分や他人の状況は変わります。
今の時代は、信じられないぐらい状況が、変わります。明日、自分の身に何が起こるかわからない時代です。
この本を読み、取材された方の、今までの人生を知れば、ずっと幸福でいられるなんて、
不可能に近いです。どの方も、気楽には人生を歩んでこれなかったと思います。
ただ、この本を読んで非常に勉強になったのは、決して今の現実から目を反らしてはいけないことです。
何におびえているかの答えは、自分の中にあります。自分と向き合い、おびえている対象を
明確にして、対応する。辛い作業ですが、そうすることでしか、対処しようがありません。
答えがないものに、対応するんです、怖いに決まっています。しかし、今の時代で必要なことは、
そういう心の態度と行動力だと思います。
著者も、あとがきに書かれています。
「現実から目を背けず、男であることから逃げないで、一歩ずつでも前進していってくださることを
願ってやみません」 -
どれもどこかで見たり聞いたりしたようなありきたりな話ではあるのだが、10年間で200人程度取材し、付き合いの続いた人のドキュメンタリーであるという点に人間模様が感じられ、物語性がある点が興味深い。でも基本的には連絡を取り続ける事ができた男たちのハッピーエンド的な話が多く、連絡が取れなくなった男たちにこそリアルで厳しい現実があるのだろうと思う。
これらの話がマジョリティーとは思えないが、統計データから増えつつある事例である事は確かなのだろう。幸い自分は遭遇してこなかった世界ではあるが、老いと介護の問題はこれから来るのかもしれないので、その辺の覚悟はしておこうかと。 -
見栄、体面、プライド。男性の場合、こういった要素が強く理想と現実との乖離に苦しんでいるようだ。ただ悩みは女性と重複する部分も多いように思う。
男性は格好悪いと思うのかあまり弱音や本音を見せたがらないのでこういった本音ルポは男性心理を把握する上で非常に参考になった。
男だから強くなければ、ではなく、これからは男も女も精神的にも経済的にも自立しなければなりません。政治に関心を持って皆で選挙に行きましょう。そうしなければいつまで経っても世の中は変わりません。
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人の不幸は蜜の味というが、こうなったら大変だなあ、とおもいながら読んだ。しかし、明日は我が身。今の立場に安住せず、努力していかなければならないと感じました。どのような状況でもポジティブであれば開ける未来があると、改めて確認できた。筆者の取材力に脱帽。
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女性のインタビューアーが長期的にひとりの男性に取材という面白いスタイル。身をつまされる。興味深かった。19.1.11既読本と気づかず、また読んだ。★4
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読了。良かった。落ち目の人を嘲笑うのでなく、しっかりと見つめ、前に進む気持ちになるまで書かれる人をたくさん紹介してくれることで、自分も頑張ろうという気持ちにさせてくれる。
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婚活、イクメン、男性更年期、介護問題、そしてリストラまで男性のそれぞれのライフステージで苛まれる状況が語られている一冊。
一つ一つ何事もなく過ぎていく人もいれば、どこかで躓き家族の大切さを再認識する人もいる。自分の人生、何もないよりかは良いんじゃないかと思いつつ、現実直視が辛い内容もありますね。