イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062728706

作品紹介・あらすじ

元ゴールドマンサックスのカリスマアナリストとして日本の金融再編に多大な影響力を与えながら、日本の国宝・重要文化財を守る江戸時代より続く老舗企業の経営者へと転身したデービッド・アトキンソン氏が、オックスフォードの日本学とゴールドマンサックスの財務分析を駆使し、「日本」の経済と文化を深く考察。日本人だけが知らない「日本の弱みと強み」をわかりやすく解説する。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから妄想
    「元ゴールドマン・サックスの凄腕の人が日本の国宝に魅せられて…はたまた日本の美術品か寺社仏閣の修復する会社の跡取り娘と恋愛して苦労しながらも会社を継いでいく苦労話ストーリー」なのかな~と思っていたら…
    あ~た!
    もう全然違う内容に読みながらびっくり!
    (いや…勝手に内容を妄想した私が悪いんだが…)

    日本の経済界のバカバカしいところやらからくりやらを説明しつつ「観光大国になるには根本考え直さなきゃムリ~」っていうのを解説している内容だった!

    でも、ある意味これがおもしろかった。
    日本の経済界の大物たちはデータではなくカンで仕事してる話やら、(だから占い師とか頼っちゃって詐欺とかの事件が起こりがちなんだな~)アベノミクスなんて本当は効いてるかそうかなんて今は全くわからないってな話をイギリスのサッチャーさんの話も交えてしてくれてるんだけど、めちゃくちゃ説得力ある。たしかに経済なんて落ちるのは早いけど、1年とかで回復するとか結果出すなんて難しいよね。

    あと海外の人が求める「おもてなし」ポイントと日本人が考える「おもてなし」ポイントがずれてるとかの話も納得。

    そうか・・・日本の国宝を守っているのはきっと全く別の目で見ているデービッドさんみたいな人たちなんだろな…。

    とは言いつつ…日本人としてはなかなか耳が痛い話&胸が痛い話も多く…。文化財の大切さなんてわからないイマドキの日本人も多いんだろな…。

  • 日本の一人当たりのGDPについて調べてみると、この本が出版されて6年も経っているのに、世界における順位は3位も下がっており、数字としては6000ドルほどしか上がっていない。周りの国も上がっているからしょうがない、と思うかもしれないが、そこで、他の国も上がっているから自分達も上げるべきだ、という姿勢で好成績を出している国から積極的に学ぶ姿勢が重要であると考えられる。

    日本はご都合主義である、ということに大いに納得した。みんなすぐに隠蔽を試みる...サイエンス誌でも世界で一番データの改ざんが多い国ランキングで、日本は不名誉にも1位を獲得した。科学従事者としても、これらが与える印象は大きく、自分達の論文の正当性が疑われる結果につながるのではないか、と危惧してしまった。これらの根底にあるものが日本人の気質だとしたら恥ずかしいばかりである。

    観光業についてはまさにその通りという、気づいているけれど面倒くさいから、一人ではどうにもできないし、という思いで放置していることに気づかされた。英語が公用語でない国でも、英語ツアーを簡単に見つけることができる。それらは主にボランティアではなく、商業的に行われている。そして、内容もかなり充実したもので、5時間ずっと歴史について語ってもらうものだったりすることもある。また、イタリアやスペインでも英語だけではなく、アジア諸語やヨーロッパ諸語のガイドを見つけることができた。こういうところはどんどん見習って、内向的な国ではなく外交的な国になっていく必要があるな、と考えさせられた。

    文化財保護について、デービットさんは本当に日本人以上日本文化を愛してくれて、守ろうと必死になってくれている。私も家族で、職人を守る試みとして、華道道具、書道道具、茶道道具、まな板や食器は職人から購入するようにしている。つい先日も近所の神社に一人1マ年ずつ修復寄付をしたばかりである。こういう個人個人の興味が日本文化を救うことに繋がれば良いな、と思う。

    個人的には、こういう批判的な本を読むのは日本を客観的に見ることができて面白かった。こういう本を読んで、「いや日本は...」や「外国人に何が分かる」と思ってしまう人は、愛国心が強すぎるあまり、盲目的になってしまっているのかな...?

  • 本書の発刊は2014年6月であるが、その1年後の2015年6月発刊の『新・観光立国論』を先に読んでいたため、内容の重複も多かった。
    日本のGDP全体に占める観光産業は2%であるが、世界平均は9%である。
    したがって観光産業はまだまだ伸びしろがあり、そのためにはきちんと日本文化を伝えるサービスを提供するべきである。
    京都には約200万人の外国人観光客が来るが、大英博物館は年間420万人が訪れる。京都でさえまだまだ伸びしろがあるのだ。
    日本の文化財保護は単に保護することを目的としてきた。
    客を楽しませる観光資源であるという発想がなかったのだ。
    しかも、観光産業は女性の比率が高いため、観光産業が元気になれば、女性の雇用が生まれる。また、シルバーガイドなどを活用して、高齢者にも雇用を生む可能性がある。
    日本優先のプロダクトアウトのおもてなしはダメだ。客人に合わせ、客人に仕える気持ちで、外国人観光客に楽しんでもらうための仕掛けを埋め込む必要がある。

  • 「モノよりコト」の意味を日本人は分かっていないのかもしれない。「コトのためのモノ」に対する投資が必要ということへの理解は特に薄いかも。この著者、日本はワーカーは優れているがマネジメントがショボくて活かしきれていない、奇跡の高度成長も人口爆発の賜物、と切って捨てているけど、至極納得。

  • 日本の高度経済成長は、爆発的な人口増加があったから。松下幸之助や本田総一郎のようなすばらしい経営者が居て、メイドインジャパンの自動車や家電が世界を石鹸した、日本人の職人手金あものづくりが大きな原動力になって日本を牽引したというのは、妄想に過ぎない。 
    GDPで技術大国ドイツを抜いたから、日本の技術の方が優れているというような考え方が当たり前のように語られているが、一人当たりのGDPでは、日本が1881ドルに対して、ドイツは2989ドルと、明らかにドイツの方が高い。日本の技術がドイツに勝ったというのは、数字として証明できない。
    OECDのドル基準実質GDPの購買力平価換算で、日本は1939年、戦前すでに世界第6位だった。 終戦を迎えた時点でおよそ7200万人の人口だった日本は、そこから爆発的に人口が増えていく。戦前すでに先進国としての経済基盤を確立していたうえ、戦後復興に向けて建築やインフラ整備が急がれ、山ほど仕事があった。人口も増えて仕事もある。これでGDPが急成長しないほうがおかしい。
    14億の中国のGDPがアメリカを追い抜いて世界一になるのは時間の問題。日本の高度経済成長が、技術立国の「日本でしか起きなかった奇跡」と語る人が多いが、妄想に過ぎない。
    効率の悪さ。IMFにより一人当たりの購買力平価(PPP)でみた国民一人当たりの生産性では、日本は25位。ドイツは17位、アメリカ10位である。
    日本の男性就業率が80%なのに対して、女性の就業率は62%。ウーマノミクスを実行して女性の就業率が男性並みになれば、日本は最大12%GDPを増やせる。しかし、女性就業率が70%を超えている国は無い。実際のウーマノミクスの効果は、それほどではない。

    輸出入に機会がある。日本の輸出はGDPで15%。輸入は12%である。そのうえ、輸出は自動車産業に偏っている。これで貿易大国というには無理がある。輸出を増やした場合、可能な限り輸出入均衡を保つというのが国際社会の暗黙のルール。日本はこれまで守ってこなかった。輸出入によっていろいろな交流が生まれ、国内の刺激になる。

    観光業に機会。観光業は世界的に9%であるのに、日本は2%。観光業は国内を消費してもらうという考え方で、輸出にカウントされる。

    スケーラビリティ。 農業というが、GDPの1%しかない産業で経済成長が果たせるとは到底思えない。500兆円のGDPを成長させるというのは容易ではない。世界を見渡してもこのような経済規模の国は少ない。ものすごく巨大な船。シンガポールに学べというが、シンガポールは東京23区ほどの面積に人口も日本4%、500万人で、GDPが30兆。シンガポールでカジノがで効果があったからといって、日本がまねをしてカジノをやっても効果は小さい。 1億円企業がやれば利益が倍増するのを真似て1兆円企業が期待できることはない。日本がシンガポールから学べるものは少ない。

  • 耳が痛いし、カチンと来る所も無いではないが傾聴すべき点は多い。大企業であるほど、偉くなるほど無能になる(というか、無能な人間が多くはびこっている)、根っからのフォロワー気質でリーダー資質の無い日本人像。まるでWGIPのようだが、多くの優れたリーダーの必要な現代に国としてリーダーを育てられない仕組みは亡国的とさえ言えるだろう。
    観光立国ありき、のような後半には疑問も残るが、観光立国とかオ・モ・テ・ナ・シを題目にすると金儲け根性が出てしまうので、若者の雇用の受け皿としての「職人」の市場を拡大するという見方にすると俄然期待感が増す。

  • 文化財保護と経済成長の話をうまく関連付けようと狙っているが発散しちゃった感じ。最後まで読めばつながりはわかるのだが読むのが少しつらい部分もある。
    どちらかに分かりやすく比重をおいた方がよかったかもしれない。

  • 日本経済に対する厳しい見方と、現在関わっている文化事業の在り方と
    二つのテーマが重なる部分がある様でも有り、ストーリーを難しくしている

    日本経済については、戦後「高度成長」を皆で頑張ろうというムードでできた
    問題はその後、「サイエンス」を習得することが出来なかった
    年功序列の仕組みが、実力主義も革新も否定する
    著者は戦後日本の成功の大部分は生産年齢の人口増によるものとする
    いわゆる「人口ボーナス」である
    これから逆回転をしようとする日本の前途は悲観と言うこと
    アベノミクスの経済政策も2−3年で出来るわけはなく、
    サッチャーイズムと同じなら、10年かかる
    問題は金融が持続可能ではないと言うこと

    文化事業の発展はそのとおり ハードからソフトに変えていかなければならない

  • アナリストの脳みそがわかって面白い。日本経済が主題で、アベノミクス1つとっても頭ごなしに全否定するわけではなく、良いところは良い、悪いところは悪いとズバズバ切っていきます。いかに日本のニュースに踊らされていたかを痛感した、そんな本です。後半、著者の本業である文化財関連にテーマが移ってしまったのが、少し残念でした。

  • 過去の成功体験にしがみついている場合ではない。
    現状を客観的に分析して、変えるべき所は変える。
    ―というようなお話。
    そう、その通りなのだけれど、それが難しい。

    一部の美談を国民全般に拡大する、シンプルアンサーに飛びつく、といった点は、もしかしたら日本人だけではなくありそうな気がするけれど、まあ、そうならないようにしたほうがいいことだよね、と思う。

    日本人が誇りにしている「おもてなし」。
    それが供給者の都合が優先され、本当の顧客本位ではないという指摘に驚く。
    自分があまりおもてなしを受けたことがないので、どうかわからない。

    日光東照宮の補修も手掛ける美術修復を専門とする会社の経営者となった著者。
    実は、補修に関するあれこれの話があるのかと思って読み始めて、期待が外れてしまったのだが、まあ、それでよしとしよう。

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著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

「2023年 『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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