- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062585804
作品紹介・あらすじ
人間は成長するに従い言語コミュニケーション能力、運動能力を獲得していく。同様のプロセスをロボットに行わせることが研究されている。脳を代替させる演算装置にはアルゴリズム、数理モデルをつくり、目の代わりになる視覚センサ、運動器の代わりになる。人工知能研究者やロボット研究者の仕事は、「知能を創ること」とも言える。本書では、記号創発ロボティクスのアプローチを紹介し、知能のメカニズムに迫る。
感想・レビュー・書評
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「概念を獲得し、言語を運用できるようになり、実世界を認識し移動し、人と会話できるようになるロボット」を創ることを記号創発ロボティクスと呼び、人間の赤ちゃんとの対比でその学習を方法を探り、その重要な考え方として二重分析構造や記号論を論じ、ロボット、そして人間の心に迫る好著です。よくある人工知能の本のように数式などは無く読みやすいのですが、内容が深遠でもあり私にはやや難しい印象でした。
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ロボット研究を通して心・意識の構造を解明する話。
「ロボットに心・意識はあるのか?」という素朴な質問を研究者に投げると「心・意識ってなんですか? どういうロボットができたら心・意識を持つことになるんですか?」と投げ返される。
著者は、ユクスキュルの環世界から話を始める。私たちは主観的世界に生きている。客観的世界である環境には、感覚器で感じ、運動器で作用することで関わることができる。感覚器で感じる知覚世界と運動器で作用する作用世界から環世界はなる。主体の認知は環世界のなかにある。心は主体の認知の世界だ。他人に心があるかどうかは分かりようがない。認知は自分の中で閉じているのである。私たちには赤外線は見えないし、雲を手てつかむことはできない。これが人間の世界だ。私たち赤ん坊として何も分からないところから出発し、自分自身で認知を作り上げていくことができる。
この「認知的な閉じ」からロボットを使った実験の話が続く。視覚、聴覚、触覚を備えたロボットにより物体概念を得る話を読んでスッキリした。
人間と同じような分類をロボットにさせることができた。ロボットが見た世界を記号論的に扱うことで可能となった。「ロボットは自らの経験をもとに概念を獲得することは可能となった」と言う。
文から単語を得るためには形態素解析が必要になる。ロボットに文の形態素解析をさせるとどうなるのか。スペースを全てとった英文をもとに、単語の区切を推測させるのである。語彙をロボットに獲得させる基礎はできた。機械学習のためには、二重文節構造の話を理解することが必要になる。このあたりでやめておくことにしよう。 -
大学の情報理工学部って、どんな勉強をしているのか知りたくて購入。「ロボット」というと、まだまだ機械がただ便利に動いているだけのイメージだが、これからは「人間と共存する」ロボット、「心を持つ」ロボットが求められる時代がくるのだろう。難しいところは飛ばし飛ばしではあるが、概要に触れることができただけでも収穫があったといえる。
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『記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門』(講談社選書メチエ)
著者::谷口忠大(1978-)
たにちゅーのHP
<http://www.tanichu.com/>
【目次】
目次 [003-007]
第一章 ロボットが心を持つとき 009
意識と心と言語と/発達する知能の計算論的理解/とあるロボットの話/
とある子供の話/環世界と「認知的な閉じ」/
人間とロボットの知能は何が違うのか/人工知能研究者の二つのモチベーション/
構成論的アプローチと計算論的理解/ロボットとコンピュータの違い/
記号創発ロボティクス
第二章 自ら概念を獲得するロボット 045
ロボットから見た世界/概念の循環参照/物体概念の存在意義/
「概念形成は不可能だ」と哲学者は言った/クラスタリング入門/
物体概念を獲得するロボット/ロボットによる視覚情報の取得/
ロボットによる聴覚情報の取得/ロボットによる触覚情報の取得/
マルチモーダルLDA/マルチモーダル物体概念形成の実験/
物体概念の身体依存性/ロボットと物体概念
第三章 自ら言葉を学ぶ知能 085
物の名前を学ぶ知能/単語獲得と形態素解析/ベイズ教師なし形態素解析/
n-gramモデル/階層Pitman-Yor言語モデル/
ブロック化ギブスサンプリングによる形態素解析/相互分節化仮説/
マルチモーダル概念形成と教師なし形態素解析に基づく語彙獲得
第四章 潜んでいる二重分節構造 111
実世界データから単語を見出す/二重分節構造/単語の意味と音素の無意味/
二重分節データ生成過程/時系列データからの二重分節構造推定への挑戦/
二重分節解析器/非分節動作からの模倣学習/
自動車運転挙動における文脈切り替わり点の検出/
二重分節構造を用いた予測/生成と認識に潜む二重分節構造
第五章 ロボットは共感して対話する 141
ただひとこと「取って」と言われたら何をしますか?/
共有信念に基づく会話/マルチモーダル対話を実現するロボット/
信念システムの計算論/全体信念関数による曖昧さの理解/
敢えて曖昧に話すロボット/ロボットと人間は「ツーカー」の関係になれるか/
共有信念がつくる内と外
第六章 構成論的アプローチ 167
構成論的アプローチとはなにか?/認知発達ロボティクスと構成論/複雑系と構成的方法/構成論的アプローチと科学的アプローチ/役割1「不可能性の反証」/役割2「理解するためのモデルの提供」/知能研究とモデル/役割3「科学的実験のための仮説の示唆」/知能の自然言語表現と計算論的表現
七章 記号創発システム論 201
記号論と記号過程
記号接地問題
創発システム
記号創発システム
意味論への接近
記号創発ロボティクス
二〇一〇年代の学問として
あとがき(二〇一四年四月 谷口忠大) 228-232
注 233-236
索引 237-238 -
190202 中央図書館
読んでいて、はっと目がさめるようなところもある。やや情緒的な表現が目につくところもあるが。 -
最先端の人工知能の持論を語る
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人間のモデルとしてのロボットをつくることで人間に迫ってゆく記号創発ロボティクスの入門的な本です。
はたしてロボットに「心」や「意識」を持たせることができるのか……と問うとき、この「心」や「意識」はなにを意味するのでしょうか。筆者らは、心や意識を含めた人間の知能というものを数理モデルやアルゴリズム(頭が痛い……)によって再現しようとしています。その成果は、「ロボットは心を持たない」「心は人間固有のものだ」と考えている人びとへの強力な反問となります。
人間は「犬」という概念と「猫」という概念をどのようして知りうるのか。人間はまったく言葉を知らない状態からどのようにして言葉を覚えうるのか。人間はどのようにして言外の意味を理解しうるのか。よく考えてみればこんなに不思議なことはありません。
モデルとしてのロボットをつくることで人間の謎について仮説を提出するというアプローチ(構成論的アプローチ)がどのような仮説を提出してくれるのでしょうか。とくに後半の抽象的な議論は難しいと思いますが、人間の知能に関心のある人ならば楽しみながら読める本だと思います。 -
ロボットが知能を持つとはどういうことかについて書かれている本。
「自ら言葉を学ぶ知能」の節で紹介されている“ベイズ教師なし形態素解析”では、そんなことが出来るのかと驚かされた。
後半、記号創発システムとしてまとめられているが、知能をシステムとして捕らえるあたりが、非常に工学的だなと思う。 -
時代が「科学」の次のステージへ移りつつある事が分かる本。
ロボットが「心」を持ったのは、「共感」を利用したからだった...。
従来からあるルールを教え込む = 「正解」をインプットしていくのではなく、対峙した人間から教えられ学んでいく。
この手法こそが、ロボットの思考力を人間以上に高める可能性を秘めたものなのだろう。
私の考える問題点は、「誰から学ぶのか?」という事。
それを、経験を積んでいない初期に決断をしないといけないのだ。(これは、何もロボットに限った事ではないが。) -
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http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784062585804