カラー図解 EURO版 バイオテクノロジーの教科書(上) (ブルーバックス)

  • 講談社
3.71
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062578547

作品紹介・あらすじ

ユーロ圏を始めとし
アメリカの大学でも採用される
世界標準のバイオテクノロジーの教科書!

感想・レビュー・書評

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  • <古典的生化学を骨格に、最新分子生物学で肉付け。タンパク質工学・酵素学・応用微生物学を駆使した可能性まで。>


    先日、NHK サイエンスZERO(夢の化学工場“放線菌”)を見ていたら、抗生物質からバイオプラスチックまで、かなりおもしろい内容だった。ふーん、放線菌、おもしろそう、と思ったのだが、意外に本としてまとまったものが見あたらない。こちらの本は、そんな中でちょっと気になった1冊。放線菌に特化した本ではないが、全体にちょっとおもしろそうかなと借りてみた。
    ちなみにブルーバックスでは、『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書』というシリーズも出ている。

    「教科書」と銘打たれているが、ざっと通読することもできる。が、高校生物くらいの知識がないと少々しんどい箇所もあるかもしれない。
    コーンスタンプやレーニンジャーのような古典的な生化学の延長線上にある印象で、前半はタンパク質工学や酵素学、後半はより工学・実用寄りに、バイオテクノロジーを用いた環境や農業への応用を展望する。
    酵素の三次元構造図がばんばん出てくるのがさすが新しい感じで楽しい。

    第1章はビールやパン、チーズといった発酵に関わる話題。
    ここでおもしろかったのは4点。
    1点目。ビールやワインなどの発酵酒は、基本は無菌である。清浄な水を手に入れることが困難である地で、こうした無菌の飲み物は非常に大きな意味を持った。
    2点目。酵母などの発酵(嫌気的:酸素を使わない)を行うが呼吸(好気的:酸素を使う)も行う生物(通性好気性)は、ある意味、「非常手段」として発酵を行っている。酸素がある状態の方が効率的にエネルギーを作り出せるが、酸素のない状態では、よりエネルギー効率の低い「発酵」に頼るしかない。それでもないよりはまし、というわけである。
    3点目。上記2点とも関連するが、アルコール発酵が進むと、当然、アルコール濃度が上がる。ある程度の濃度になると菌が死滅するが、発酵菌もやはり死んでしまう。ワインが12~14%、酒が15~18%という比較的低いアルコール含量であるのはこのためである(これ以上強い酒を求める場合は、菌の力ではなく、蒸留の作業が必要となる)。
    4点目。多くの生物は、グルコースを起点とした代謝によってエネルギーを取り出す。その源は、太陽光による光合成である。多くの生物は、見方によっては、太陽光のエネルギーを取り出すことによって生きているとも言える。

    2章は酵素に関わるあれこれで、バイオ洗剤や肉を軟らかくする酵素、実用にあたって精製を容易にするための酵素の固定化など。
    3章は遺伝子工学の歴史概説である。インスリンを例に、人工タンパク質誕生までの道のりも語られる。
    4章の環境バイオテクノロジーは、下水処理やバイオガス、バイオプラスチックの可能性など。可能性は幅広そうだが、真の実用化はまだ少し先の話が多い印象。
    5章の農業への応用は議論の分かれそうな話題も含む。食用微生物に関しては、藻類などをそのまま食べる例から、微生物由来のタンパク質を「牛肉風」「鶏肉風」といった模造食品に加工して提供する案まで。また、遺伝子組換え作物に関する話題もある。

    「ユーロ圏を始めとし、アメリカの大学でも採用される世界標準」の教科書と謳われているが、特に後半は結構、議論を呼ぶ分野に斬り込んで行っている印象も受ける。
    「下」は医療・産業・新技術を紹介するようだ。こちらは機会があれば。

  • 579-R-1
    閲覧新書

  • 2014.12.06 ブルーバックスのサイトを検索していて見つける。

  • バイオテクノロジーというと、私の中では遺伝子組み換え技術というイメージが強かったが、ビールやワイン、パンなどの発酵も立派なバイオテクノロジーであり、その発行を手伝う触媒である酵素や、微生物の酵母のはたらきなどが理解できると共に、太陽のエネルギーが化学エネルギーに変換され、我々生物のエネルギーに変換されるというスケールの大きい話も理解できた。
    隅々まで一字一句読んだわけではないが、結構わかりやすく、時間をかければ、理解が進みそうである。
    下巻もあるので、また図書館で借りて読もうと思う。

  • 知的好奇心を満たしてくれる本です。比較的難解な内容でしかもボリュームも多いもかかわらず、飽きることなく読み進められ読後は非常に勉強になったと思わせてくれます。簡潔な文体で専門的な事項を的確に解説すがなされており、さらに本の中にちりばめられたコラムは非常に面白い。

  • 生物工学、農芸化学の分野について、実用から原理へと説明がなされていてとても興味深かった。思っていたより専門的で難しい部分も多かった。
    遺伝子組み換え技術に関して、規制と真っ向から戦った研究者たちの話がコラムで紹介されていて、筆者の技術に対しての立ち位置も明確になっていた。私としては、夢のような技術やワクワクするような研究が休止になるのはもったいないものの、世論が追いついてこその新技術だと思うので、実用化は時が来るまで休止、というのもやむを得ないと思う。
    ジャンルや切り口がガラリと変わっていそうな下巻には手を出さないかもしれない。

  • ユーロ圏をはじめとし、アメリカの大学でも採用される世界標準のバイオテクノロジーの教科書。

  • バイオテクノロジーを、その前身となる食品科学・生物工学・微生物工学なとの背景を意識しながら解説した本。

    内容としては高校~大学初等レベルでそこまで難しい記述は出てこない。しかし、「バイオテクノロジー」と分類される学問分野のベースになる学問分野の肝になる部分を紹介してくれているので、分野全体の見通しが付きやすくなる。
    あと、研究者についてのコラムなど、「その分野に関わる雑談」のネタは多く、興味を持ちやすい一冊。

    イラストが多くてわかりやすい一冊なので、値段なりの満足度は得られる一冊。

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