地球にちりばめられて

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1336
感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062210225

作品紹介・あらすじ

留学中に自分の国が消えて帰れなくなってしまった女性Hirukoは、独自の言語を作り出し、ヨーロッパ大陸で何とか生活しようと奮闘していた。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会い、自分と同じ母語を話す者を探す旅に出る――。

感想・レビュー・書評

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  • 楽しかった一冊。

    留学中に母国が消滅し帰る場所を失った女性Hirukoが自分と同じ母語を話す人を見つける旅に出る物語。

    多和田さんの創る世界と言葉の操りと遊びが面白かった。

    親に縛られる関係、ジェンダー等の現実的なテーマといい、近未来いつ起こり得てもおかしくない迫害による国の消滅を感じさせるテーマも何気に心を掴まれる。

    誰もがこの地球にちりばめられている大切な一人であること、地球に散りばめられた自分に必要な要素を日々拾いながら自分を創り上げていくこと…タイトルからそんな想像が膨らむ煌めきの時間が楽しかった。

    2022年〆本。
    今年もたくさん良書との出会いをありがとうございました。

  • 国、民族、言語、性…どれも境界がある物。でも、その境界は、これからどんどん溶け出してしまうのかな。
    『アイデンティティが人を殺す』で気づいた、複数の帰属先を持つことの意義。それが薄らいで、それが懐かしいと思える時代が来るのかな。
    そんなことを思わせたこの小説の著者、多和田葉子さんはドイツに拠点を構える作家。境界を考えるには、やっぱりアメリカよりヨーロッパなのかな。
    この小説を読んで、いろいろな思いが頭を駆け巡った。そして、その思いを文字にしようと思ったら、いつもと違う散文(駄散文?)になってしまった。これも、この本の持つ力のせいなのかな。

  • 面白かった!続きが楽しみ。

    今はなき故国の朧げな記憶を通してシニカルに語られる日本像、その対比として語られるヨーロッパの人々の姿、そんな小話が面白くて、同時代小説を読む楽しさがここにある♪とウキウキしながら読んだ。

    他にも、多和田葉子さんらしい、鋭い言語感覚で繰り出される言葉に対する考察、原発を想起させる環境問題への示唆など、興味を刺激する話が散りばめられて楽しい。とは言え明らかにされない「消滅した日本」に何が起きたのか不吉な雰囲気はあり、特に原子力の描写は心に引っ掻き傷を残した。
    福島の汚染水の放出など、国際的には「日本政府は説明責任を果たしていない」という認識をされている。そんな状態のまま原子力稼働の方向に舵を切る政府。原発事故が起こった後にあれだけ反省したのに、喉元過ぎれば熱さを忘れるのか。そんな思考を引き寄せられた。

    これら全部、「外から見ている」という多和田さんの在り方から出てきている目線なんじゃないかと思う。
    日本語というもの、母語というものを外国語から見つめる。すると、ままならない親子関係に引っ張られる「母語」の存在、通じるからと便利に言葉を使ってしまうことは、実は思考停止しているということなのだ、ということなどに気づく。
    各国を、外国から見つめる。そうすると、中にいると当たり前で見過ごしてしまう現象を客観的に見ることができ、シニカルに揶揄することができ、それが読者に新鮮さを提供する。
    視座を上げて物事を相対化して考えることを促す文章が魅力的。

    蛇足:若干気になったのは、仏教-蓮-モネの連想がモチーフになっている箇所があるんだけど、モネの描いた植物は蓮ではなくて睡蓮ではないかということ…ブッダと普通一緒に描かれるのは蓮だし、モネがジャポニズムに影響を受けているところまではそうだけど、モネが描いたのは睡蓮であって、蓮とは種類が違う植物だよなと…

  • 普段海外文学しか読まない自分に誰かオススメの日本人作家いない?と友人に聞いたところ、多和田葉子さんの名前があがった。

    読んでみて、なるほど確かに海外文学好きな人に勧めるにはぴったりの日本人作家だと納得する一方で、まぎれもなくこれは日本文学だ、とも感じた。何をもって“日本文学”とするのか、特に自分の中で基準があるわけではない。ただなんとなく、BADHOP言うところの『内なるJ』というやつを文章の端々に感じるのかもしれない。とはいえ、それは全く悪い意味ではなく、むしろ自分にとって新鮮な感覚として味わえて嬉しかった。

    こうの史代さんの漫画「ぼおるぺん古事記」には、イザナミ・イザナキの最初の子、水蛭子(ひるこ)が葦舟で流される際に釣竿を持たされる描写がある。これは、巡り巡って蛭子→ゑびす様として祀られることの示唆なのだと思う。この本のHirukoにおける唯一の武器は釣竿ではなく、パンスカという独自の言語だ。海の向こうからやってきた客人神は、様々な人間を巻き込みながら自分と同じ母語を話す者を探し続ける。。。貴種流離譚というか、あらすじ自体は神話めいている。けれど実際は異人種の若者たちによる青春群像劇で、読み味はとても爽やか。

    全編にわたりパンチラインに満ちているので、最初のうちは感心していちいちメモをとっていたが、そのたび読書が止まるので途中からメモやめて読み進めるのに集中することにした。それくらいハッとするような文章が多い。

    続編もある?といくつかの感想に書かれていたので、楽しみに待つことにします!

    • Kamoshidhaさん
      多和田葉子さんは、ドイツ在住でドイツ語でも書いている方と記憶してます。書店の洋書売り場で働いていた頃に、なぜか日本人作家の中で、特にドイツ語...
      多和田葉子さんは、ドイツ在住でドイツ語でも書いている方と記憶してます。書店の洋書売り場で働いていた頃に、なぜか日本人作家の中で、特にドイツ語訳がたくさん出ていたので、気になって調べてみたことがありました。この記事を読み、この小説を読んでみようと思った。
      2019/05/18
  • Hirukoはヨーロッパ留学中に母国が崩壊し、同じ母語を話す人を探している。その旅に同行することになる様々バックボーンを持つ人たちが、各章ごとの語り手で話が進む。

    すれ違う言葉、言葉にまつわる会話がとてもおもしろい。イメージだけの日本文化、アレンジされた和食の違和感と可笑しさ、そこに消滅した母国、失われた文化の喪失感が重なり、なんとも不思議な読み心地だった。

    やっと見つけた同国人Susanooの故郷の福井県は「原発銀座」で有名になった。引き換えに漁業も農業も衰退し、過去の産業を伝えるのは故郷PR センターのロボットだけ。
    これは近未来なのか?現実味があり恐くなる。

    Susanooが歳を取らなくなったのは、社会の時間の枠組から外れ、まわりの人を基準にして自分の時間を計ることをしなくなったからではないかという。母国から切り離され、どこにも所属していない孤独感の現れなのだろうか。

    Hirukoの名前は神話のヒルコの意味だ。イザナギとイザナミの最初の子だが祝福されずに葦の舟に乗せられ海に流された。Hirukoが日本から離れて、国を失ったのと同じだ。

    Hirukoが生みだした共通言語パンスカは、国や民族の境界を曖昧にし、バックボーンの異なる人と繋がる未来を感じる。
    彼らの旅の先にあるものは何か、続きが読みたい。

  • 未来の架空の不思議な話。
    ファンタジーのような、哲学のような…。

    ちょっと読み慣れない文章で、多少流し読みしてしまったが
    地球上の色々な人達が、国という概念から離れて、出会い繋がっていくのが面白かった。
    言語、絵画(モネ)、原子力発電、などのキーワードももまた、ちりばめられている。
    話が進んで行き、これからどうなる?というところで、唐突な感じで物語は終わる。
    やっぱり、普段読む小説とは違う、食べたことのない料理のよう。
    不思議な面白さだ。


    特に、印象に残ったのは、留学中に自分の国(中国大陸とポリネシアの間に浮かぶ列島)が消えてしまって、帰る事の出来なくなったHirukoという女性だ。

    覚えておきたいので、彼女の言葉の部分抜粋
    <子供の頃は「不法滞在の外国人」と聞くと、遠い国の悪い人の話だと思っていた  が、今は、自分自身がすぐにそうなってしまう。よく考えてみると地球人なのだから、地上に違法滞在するということはありえない。>

  • 友人からの頂き物。
    読み終えて、この本を渡してくれる友人がいるのは幸せなことだなと思った。
    あちこち渡り歩いて来た中で出会った人というのも、今作と重なるところがあってより嬉しい。
    国がなくなったらしいHirukoが、移り行く先で人と出会い、出会った人もまた他の人と出会っていたりして、段々と共に行く人が増えながら旅をする。
    そして割と唐突に終わる。
    唐突なのだけど、充足した読後感だった。
    一つ一つのエピソードがとても良く、私の中に降り積もっていく。
    苦しいものも悲しいものも含まれているし、現実の大きな問題と結びついているもので単に心温まったで終われるような安易な作品では決してないのだけど、愛おしい。
    繰り返し再読したい作品だった。

  • 全米図書賞受賞作でブクログユーザーの評価が高く、期待して手にとりました。

    残念ながら、私には理解することが出来ませんでした。

    敢えて感想を記すとすれば、よく最後まで読みきったと言う事でしょうか...^^;

    いやぁ、まだまだ己の読解力の無さをただただ痛感させられた作品でした。

    説明
    内容紹介
    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。誰もが移民になり得る時代、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。


    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。

    誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
    内容(「BOOK」データベースより)
    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語“パンスカ”をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る―。言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
    著者について
    多和田 葉子
    多和田葉子(たわだ・ようこ)
    小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞を受賞。2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数。2016年にドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞。著書に『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『ボルドーの義兄』『献灯使』『百年の散歩』などがある。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    多和田/葉子
    小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞、2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 架空の時代設定で、ちょっと現実的ではないけど面白かった!
    架空と言っても、未来であることは間違いない。地球温暖化か、もしかしたら原発事故か何かで日本という国が消滅したらしい未来。主人公の女性は、「移民」としてヨーロッパを転々としている。ヨーロッパは多言語だ。いちいちその国の言語を覚えていられない。そこで、スカンジナビアの人なら何と言っているかだいたいわかる、という独自の言語「パンスカ」を生みだした。
    なんかよくわからないけど興味深い(笑)!
    それをたまたま聞いていた若い言語学者は、彼女に非常に興味を抱き、連絡をとる。そして彼らの旅が始まる…。彼女は自分と同じ言語(日本語)を話す人を求めて…言語学者は彼女がどこへ行きつくのか見届けるために…。そこに、一人、また一人と旅を共にする人が増える。
    「文明が行きつく限り成熟したヨーロッパ」という設定なのか(?)若者たちが非常に細分化された”学問”を修めている(または修めようとしている)のが興味深いし、登場人物の母親が「エスキモーを援助することに人生をかけている」とかいう設定も面白い。消滅した日本では、生物学的な”性”は消滅して少子化が進み、社会保障制度も崩壊していたらしい、という語りも出てきて、「実際そうなるかも」とか思える。
    逆にデンマークでは社会保障は完璧に成り立っていて、若者は学びたい学問を思い切り学べるようだ。
    日本にルーツがあるHirukoが、母国語を話す人と出会えず、日本が今どうなっているかもわからない、という設定は、数百年とかもしかして千年も未来の話かもしれない、と思わせるが、海外留学中に母国が消滅した、みたいになっているのでそこはあまり現実的じゃない。情報化・国際化が進んだ現代であれば、日本がもし突然消滅することがあっても、世界中に何が起こったかが発信されるだろうし、日本出身者がヨーロッパにもっとたくさん存在するだろう。
    まぁそういうことは無視して、「母国を失った一人の女性が、”パンスカ”を操り、”地球に散りばめられ”た母国のカケラを拾い集める物語」として読めば面白い。
    Hiruko に興味を持った言語学者クヌートとの間に、「愛」のようなものが生まれているのにそれはいわゆる「性愛」ではない、というのも興味深い。未来に進化した人類の「愛」は「性愛」ばかりではなく、「言語愛」とか、「性」を飛び越えていろんなジャンルで魂が深く結びつく「愛」なのかもしれない。

    ちなみにエスキモーなのに日本にルーツがあると勘違いされてしまったナヌークという青年の、独学でしゃべる日本語の感じもすごく可愛くて好き。

  • 近未来かパラレルワールドなのか、いつのまにか日本という国が滅びて無くなってしまった世界。海外にいたものだけが生き残っている。はっきり日本という国名は使われず、鮨の国とか抽象的な感じ。物語はHirukoという日本人女性を中心に集まった人々が、彼女と同じ母語を話す人間を探す旅となっている。章ごとに語り手が代わるので、以下その順番で登場人物メモ。

    ○クヌート:言語学について研究しているデンマーク人青年。母国を失くしたひとたちにインタビューするテレビ番組で偶然Hirukoを見て興味を持ちコンタクトを取る。母親がやや毒母で、息子よりもエスキモーの学生の援助に熱を上げている。

    ○Hiruko:新潟出身。スウェーデン留学中に母国がなくなり、現在はデンマーク、オーデンセのメルヘンセンターで子供たちに紙芝居をみせる仕事をしている。オリジナルの言語「パンスカ(汎スカンジナビア)」を編み出す。母国語を話す人間を探しており、ドイツのトリアー、カールマルクス博物館で行われる「旨味フェスティバル」というイベントの主賓、テンゾという人物が同国人ではと思い、クヌートと共にトリアーに向かう。

    ○アカッシュ:ドイツに住むインド人男性…からの女性へのトランス。トリアーにやってきたHirukoとクヌートに出会い、クヌートに恋をする。二人を旨味フェスティバル会場へ案内する。

    ○ノラ:トリアーに住むドイツ人女性。旨味フェスティバルの企画者。ある日遺跡で怪我をしたテンゾを助け、そのまま一緒に暮らし恋人となる。しかしイベント直前にノルウェーのオスローへ行ったテンゾが戻らずイベントは中止に。テンゾに会いにやってきたHirukoたちと共に、オスロ―にテンゾを探しにむかう。

    ○テンゾ/ナヌーク:グリーンランド出身のエスキモー青年。デンマークの慈善家女性(クヌートの母)のおかげで学費援助を受けコペンハーゲンの大学に通っていたが、試験が終わり新学期がはじまるまでに軽い気持ちで旅行中、ドイツに行ってそのまま帰る気をなくしてしまう。見た目から日本人に間違われることが多いため、日本人のふりをしてテンゾと名乗り鮨レストランで働いたりしていた。旅の途中でノラと出会いそのままトリアーに居つく。しかしオスロ―でHirukoに会ったことで日本人ではないことがバレてしまったため、ノラにも正直に話す。自分の代わりに、人づてに聞いたSusanooという日本人らしき男がアルルにいることをHirukoに教える。

    ○Susanoo:福井出身。父親はロボット製作者で故郷PRセンターにロボットを卸していた。造船を勉強するためキール大学へ留学するも、バイトで鮨レストランで働くうちにそちらが本業となり、友人ヴォルフとレストランを開業、成功する。恋人がいたが、偶々闘牛場で出会ったアルルの女カルメンに恋してしまい彼女を追ってアルルへ。しかしカルメンとはあっさり破局し、そのまま今も現地の鮨レストランで働いている。かなりの高齢のはずだが見た目は若いまま、年齢不詳。言葉を失っていたが、Hirukoと出会ったことで失語症を直すためストックホルムへ向かう決意をする。

    旅をしながらどんどん仲間が増えていくのが、なんかブレーメンの音楽隊みたいで楽しい。そして序盤の舞台がデンマークなのでやたらと出てくるラース・フォン・トリアー監督の名前。「Riget」って、邦題は「キングダム」ですよね。確かにあれを医療ドラマといっていいのかどうか(笑)日本に亡命してくるムーミンとかも笑っちゃう。とりあえず、このあと続編へ。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。小説家、詩人、戯曲家。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。91年『かかとを失くして』で「群像新人文学賞」、93年『犬婿入り』で「芥川賞」を受賞する。ドイツでゲーテ・メダルや、日本人初となるクライスト賞を受賞する。主な著書に、『容疑者の夜行列車』『雪の練習生』『献灯使』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』等がある。

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