アースダイバー 東京の聖地

著者 :
  • 講談社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209441

作品紹介・あらすじ

2020年の東京オリンピックを錦の御旗に東京は大改造をされようとしています。レガシーを作ると言って、本物のレガシーを破壊していいのでしょうか?
築地市場の豊洲への移転が、決定しました。しかしアースダイバーは言っておきたいいことがあります。なぜ、築地でなくてはならないのか? 日本人と海の関係、古代から連綿と続く、市場の特別な機能、江戸時代から紆余曲折を経て現代に繋がる歴史……。築地という場所が孕んでいる聖地性が見えてきます。仲卸の果たす重要な役割、博物館に匹敵する海産物に対する深い知の体系。効率だけを考えた豊洲市場への移転はこの国の文化の大切な暗黙知を消滅させてしまいます。
2014年には新国立競技場のデザインと費用について、大論争が巻き起こり、最終的にはザハ・ハデッィド案は廃案に追い込まれました。
独創的なデザインの新国立競技場に、無意識的になんかおかしいぞと感じたのはなぜでしょうか? アースダイバー的視点から、その理由をあらためて解き明かしてみると、外苑と明治神宮との不可分な関係があったことに気づかされます。
アースダイバーの号外として、静かだが重要な提言をします。

感想・レビュー・書評

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  • 署名活動についてのお知らせ · 神宮外苑にとって6/29は特別な日。署名20万突破しよう!ロッシェル・カップから誕生日のお願いです · Change.org
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    村上春樹氏が神宮外苑再開発「強く反対」! 故・坂本龍一氏に続く表明で小池都知事KO寸前|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/325135

    「築地問題」は本能寺まで遡る!? 『アースダイバー 東京の聖地』の鋭視線|今日のおすすめ|講談社BOOK倶楽部
    https://news.kodansha.co.jp/5729

    『アースダイバー』(講談社) - 著者:中沢 新一 - 松原 隆一郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    https://allreviews.jp/review/240

    『アースダイバー 東京の聖地』(中沢 新一)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190673

  • 築地市場と明治神宮。人工的に作り出された場所でありながら(前者は埋立地、後者は練兵場の跡地に植林)、「そこにほかのどんな場所にもまして、日本人の伝統的思考が凝縮されて表現されている」(序文より)、と著者は主張する。

    海の民は、古より天皇家に海産物を届けるという役割を担って来た。その流れを汲む魚河岸の気風は、関東大震災を機に日本橋から移転した築地においても受け継がれた。戦前建築の代表作ともいうべきカーブを描いた建屋の中で味の目利きとしての仲買人が立ち回るさまは、「制御された混沌(Controlled chaos)」と外国の人類学者に言わしめた。豊洲は幹線道路によって敷地を4つに分断し、この類まれな秩序をズタズタにしていると著者は憤る。

    私の感想では、つまるところ市場における「仲買」の機能をどう評価するかで解釈は変わる気がした。著者が言うような味覚の目利きだとすればその機能が豊洲では制限される、という意見にも一理ありそう。一方で、時代遅れの中間流通だと考える人にとっては豊洲は物流効率化の第一歩となるだろう。著者の立場は最終的には「アンチ市場至上主義」ながら、「市場そのもの」を論じていることで若干の錯綜は感じざるを得ない。

    その点、明治神宮についての著者の筆はいっそう冴え渡る。内苑と外苑との二元構造は、「閉ざされた見えない空間から、神々があらわれ出ようとする」ときに生まれる聖なる力(ミアレ)が無意識に表現されており、それは古くは前方後円墳にも見られると言う。「自然が人間に拘束を課し、その拘束を人間が受け入れながら仕事をおこなうとき、そこには軽やかな自由の感覚が漂うようになる。・・・ここには人間的欲望を解放しきろうとする資本主義にたいする、見えない『結界』が張られてきた。」(p197)。

    ザハ・ハディドの新国立競技場案がこの聖性に反しているとの著者の主張には今ひとつ裏付けが感じられないものの、ともあれ著者ならではのイマジネーションの洪水には唸らされる。写真も美しく、建築家伊東豊雄氏との対談も必読。

  • 2022/2/20
    ふむふむ。

  • アースダイバー第三弾。今回は、スピリチュアルブラタモリではなく、研究対象地(築地、明治神宮)に対する中沢的視点で切り取りまくった書。
    相変わらずの中沢節で、読んでて『ホンマかいな。』と感じてしまい、ガードしながら読み進めた。

    江戸の市場は大阪から専門家を呼んで作り上げ、日本橋から築地へ移転したのは震災がきっかけ。明治神宮は明治天皇が祭られており、民間の声をきっかけに検討が進み、作られた。というのは、調べて裏を取ったので本当です。

  • 帯表
    ほんものの保守思想の根源がここにある!
    海民の二千年の知恵=築地市場
    太古の無意識の現出=明治神宮
    日本人の暗黙知が生み出した天才的な「生命体」を次なる世代へと受け継ぐために
    写真・大森克己
    建築家・伊東豊雄氏との対談2編収録
    帯背
    金銭にかえられない「愛」と「富み」のありか
    帯裏
    築地市場は江戸湾を埋め立てた土地の上につくられた魚市場であるし、明治神宮にいたっては代々木の荒れ地に植林してできた人口の森につくられた、創建のきわめて新しい神社にすぎない。

    しかしこのおよそ非アースダイバー的場所に一歩足を踏み入れた私たちは、そこにほかのどんな場所にもまして、日本人の伝統的思考が凝縮されて表現されていることを見出して驚くことになる。
    まるで白いキャンバスの上に緻密な絵画を描いたように、この二つの場所には、日本人の思考が「聖地」に見出してきた空間の構成原理が、ほとんど純粋な状態で実現されている。

    その二つの生きた聖地が、深刻な危機に直面したのである。
    (序文「聖地の条件」より)

  • 再び、東京。今度は「築地市場」と「明治神宮」が聖地として登場。人工地にできた聖地とは?(コアラ)

  • p.87 魚河岸が、海の自然と人間をつなぐインターフェイ)の働きをしている。魚河岸を通過することで、自然界のものが文化的なものに変身する。そういう転換の場。
    p.89 魚河岸という境界には、代々の仲卸によって、海の食材に関する膨大な知識が蓄積された。里山は農村文化での境界。
    p.167 明治神宮が古代天皇の御陵を思想的モデルとした。
    p.174 昭和天皇は「雑草というものはない」。明治神宮の森と吹上御苑は同じ思想。外の世界の影響が及ばない自由な空間であり、力からの自由が森から放たれている。

  • 珍しく読むのに難航。でも歴史は分かった

  • 秋葉さんのオススメ

  • 社会 213.61-NA

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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