九十八歳になった私

著者 :
  • 講談社
3.11
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本棚登録 : 115
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209144

作品紹介・あらすじ

時は2046年、東京大震災を生き延びた、独居老人で元小説家の「私」のもとを、「ボランティアのバーさん」やゆとり世代の50代編集者などさまざまな人たちが訪れる……。

生きるのは面倒くさいとボヤキつつ、人生の真実を喝破する、橋本流老人文学の傑作!

「人生は消しゴムのようなものだ。いくら使って消して行っても、使い切るということは起こらないのだ。」

「生きているだけで疲れる年頃なんだ。あーあ。」

【目次】
九十八歳になる私/九十八歳になった私/国会解散の巻/ロボット君の巻/病院に行ってましたの巻/女はこわいよの巻/プテラノドン退治の巻/九十九歳になっちゃうじゃないかの巻/メロンの娘の巻/たまには起こせよなんとかメントの巻/カナブンに寄せる思いの巻/死にそうでなぜ死なないの巻/人生は消しゴムだの巻

感想・レビュー・書評

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  • 69歳の著者の三十年後の近未来小説、98歳になった私。
    いや、なかなかお年寄りのことを分かっておられると感動しました。
    難病を患われ、お体の不自由があったでしょうか。ものすごくリアル。
    ヘルパーさんに連れられて病院にいく件は、納得。
    人は経験でしか考えられない。年取らないと高齢者のことはわからない。本当にそうだと思います。
    介護サービスができて、どこかに通ったり泊まり、知らない人が家に来る。支援者の親切心は当人に
    とっては迷惑とまではいかなくても本人の気持ちには反していることが多いだろう。可能なら他者に自分の考えを分かるように、緩い感じて正確に伝えられる人になれってたらいいなと思います。



  • 著者が69歳の2017年に出版された、30年後の自身を主人公に描いた短編集。最初の「九十八歳になる私」ではあまり面白味が感じられず読み進めるのがシンドかったが、次の「九十八歳になった私 」からは"オサム節"全開で、大笑いしながらあっという間に読み終わってしまった。『歳をとると、頭の命令に身体の動きが伴わない』という話は、身につまされた。

  • 「生きて老残の姿を晒すの。それに堪えて生きるの。滑って転んで骨折って、ヨタヨタレロレロになって生きるの。そういう自分に堪えるの。それが人生なの」p183

    橋本治さんが実年齢より30歳かさ増しして、98才になったつもりで書いた近未来空想科学私小説!
    コロナ禍の日本そのままのようで、笑い事じゃないのに何度も笑ってしまった。
    今年はまた「任期満了」で「衆議院選挙」です。
    ロボット君に取材してもらいたかった。ご冥福をお祈りします。

  • 老いをテーマにした芥川賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」(若竹千佐子著)も良かったですが、こっちも面白い。
    そりゃ、橋本治だもんね。
    面白くならないわけがない。
    69歳の著者の30年後を描く近未来空想科学私小説。
    いや、もうね。
    身体の自由が利かないんですわ。
    寝たら起きるのが痛くて辛いし、歩けば足元が危なっかしくてこけるし、団子やまんじゅうだって注意しないと喉を詰まらせて死んでしまう。
    「生きてるだけで疲れる年頃なんだ」は蓋し名言かと。
    ゆとり世代は既に50代、国会は相も変わらず馬鹿な理由で解散を繰り返し、地方から人口を寄せ集めた東京は超高齢化、大きな地震がその東京を襲い、避難所に暮らす著者は「アンパンが食えるだけまし」と達観しています。
    現在、「絶滅危惧業種」とされている出版業界では「危惧」が取れちゃったというんですから、穏やかじゃりません。
    面白かったのは、科学の力でプテラノドンが蘇っていることね。
    著者は「何でそんなことしなきゃならないのか」と憤っていますが、科学万能主義に対する痛烈な批判でしょうな。
    「バカな頭で神を創ろうとしたって、出来上がった神は作ったやつの性格を反映して、バカで性格が悪いんだよ。」
    素直に耳を傾けたい言葉です。
    本書は「九十八歳になる私」から「あとがき」まで15章で構成されていますが、「白紙の巻」も振るっています。
    何たって2ページまるごと白紙なんだから。
    やるなー、橋本治さん。
    老いを不必要に前向きに受け止めるのではなく、かと言っていたずらに悲観するのではなく、アイロニーを交えながら笑い飛ばす。
    好きだなー、この構え。
    高齢化が今後、ますます進むニッポン。
    30年後の明るいディストピアへようこそって感じで。

  • ★想像老人小説の技★桃尻娘の次に読んだのがこれなので差がありすぎるが、うまいなあ。30年後、98歳になったときをイメージしたエッセイ風小説。思うように動かない身体、混濁する記憶、食べ物への妙な執着、誰かに格好をつける文章、面倒くさがりながらも生きていることを拒むわけではない、そんな飄々とした表現にうなる。過去の出来事は覚えていて、それが団子のように串刺しになっているだけで他人の時系列とはつながらない。30歳下でも70歳というのはシュールだなあ。

  • 発想勝ち。2050年は自分は70歳。2040年代を60代として、どういう気持ちで過ごすのかな。

  • まわりから見て年寄りでも、本人はきっとこんなふうにチカラ強い思考を生きているのだろう。98歳の橋本さんに会いたかった。

  • 30年後の日本を描くとディストピアになるのは必然なのだけれど、現実が虚構を追い抜きそうで厭だ。

  • 「三十年後の私」は、東京直下型大震災のあと仮設住宅「2DKに四人は嫌だ、どんなボロ家でも独居で」「そういうのは栃木県の日光の杉並木のほうにしかありませんよ」「それでいい…」杉の木にプテラノドン(空から人をさらって食う)が巣を作っていた…/延々と面々と本質的には“現在の延長線上の世界”を、“意識の流れ”手法で描く。/月刊誌連載になったため「君野くん」が度々訪問するイベントがあったりする╱『長生きは健康に悪い』ロボット化して115歳まで元気に見える地方権力者もいるようだが機械のことで突然死。ガン死とどちら良い?

  • 橋本治氏の作品には夢中になって読んだシリーズがある
    それは『桃尻娘』シリーズ

    『桃尻娘』
    『その後の仁義なき桃尻娘』
    『帰って来た桃尻娘』
    『無花果少年と瓜売小僧』
    『無花果少年と桃尻娘』
    『雨の温州蜜柑姫』

    って、シリーズものはそれだけ?

    調べたらこの続きらしい
    『桃尻娘プロポーズ大作戦』というのがある

    わたしはもう中年になっていたけれども、おもしろかったなあ~
    息子や娘がちょうど同じ年ごろで、子供たちの気持ちがわかっていたつもりになった


    さて、橋本さんおっしゃるところの「近未来科学私小説」
    私小説だからといって橋本さんの等身大ではない、空想
    そりゃそうだ、1948年生まれで、これを書いたのは2016年、68歳

    わたしだって「どんなふうになるんだろう」って興味におもう
    60代でおもう98歳と70代でおもう98歳は違うだろうけど
    読みながらクスクス笑ってしまった

    老人はよく独り言を言うようになる
    地の文よりかっこの中のモノローグの方が多いのがそれを表している

    (なんだ、ちくしょうめ!足が動かねえじゃないか)なんてね
    気持ちはちっとも変っていないのに体がいうことを聞かない

    これから30年後はどうしてもデストピアになるという

    東京直下地震で家が壊れ、命は助かったけれども
    仮設住宅が栃木県の日光の杉並に近いところに避難している設定
    作家だから心境を書けという注文が来る
    それでダラダラ、モノローグを綴り、間に文章が・・・

    橋本さんは実際、難病を患っていらっしゃるらしい
    でも、人間が年取るって難病みたいなものね
    それがうまく絡み合って、シニカルな、コミカルな、ユックリな

    まず、まず、面白かったですよ

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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