いわさきちひろ 子どもへの愛に生きて

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 46
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062208062

作品紹介・あらすじ

生誕100年を迎える絵本作家・いわさきちひろはいかに生まれたか? 息子の目を通してちひろの生涯と実像を描く決定版評伝。

感想・レビュー・書評

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  • いわさきちひろの息子である松本猛による「いわさきちひろ」の評伝。
    子育てをした女性や子ども時代に絵本を読んでそこに描かれた「絵」を見たことがない人はほとんどいないのではないだろうか。
    優しいタッチ、パステルを多用したかわいい子どもたちの姿など、見ているだけで心が和む絵画である。その絵から想像する作者は優しく、儚げにさえ思えてくる。
    しかし作家本人は大正昭和を生き、初めの結婚で満州でも暮らし、その結婚は意にそぐわぬもので傷心で日本に引き揚げてくるという厳しく辛い時代も経験している。
    また戦後は共産党に共鳴して、共産党員となりそこで松本善明と知り合い、結婚する。この時代珍しく、年下の夫であり、司法試験勉強のため経済的なこともちひろが支える。
    絵のタッチからは想像できない、自立心の強く、自分の意志をしっかり持った人だったのだろう。
    評伝というと第三者が書くことが多く、客観的内容がほとんどだが、この著書は息子が手がけたということもあり、家族でしか知り得ないことや息子として母親をどう見ていたか、どのような母であったかなどプライベートな姿も知ることができる。
    私自身もとても好きな画家の一人だか、このように波乱に富んだ人生を送った女性であるとは、この著書を読むまで知らなかった。

  • 2017年10月講談社刊。いわさきさんの息子さんによる評伝。いわさきさんがこだわった絵の表現のお話を期待したのですが、人となりのお話が主でありました。

  • 息子の猛による偉大な母親の評伝。ちひろさんが日本共産党へ入党した思想的背景に宮沢賢治先生への傾倒があったというところに興味を持って読む。
    戦前戦後と随分波乱万丈な人生を過ごされた方なんだと知った。ちひろさんといえば、かわいらしくデフォルメされた子供を淡い色彩で表現する絵本が思い浮かぶが、あの絵はデッサンなどの確かな絵画技術とともに人生経験が裏付けになっているのだなと思った。絵画の技法について述べられた中でも、世阿弥の“秘すれば花”を、確かな技術の確立したうえで技巧に走りすぎない事の重要性と解釈されていたことに共感する。
    原爆の図で有名な丸木俊に師事しており、一番苦しい時を丸木夫婦に支えてもらっているが、思想問題で後に決裂している。後味のよいエピソードではないが息子の猛はそれなりに後日談などで丸木夫婦に敬意を表していた。夫の松本善明は、今なお丸木夫婦に否定的な意見を別な評伝に書いている。そこには、宮沢先生に関しても空想的社会主義に過ぎず、ちひろはそれらを乗り越えて科学的社会主義に到達したとも書いてあった。 ( ̄ヘ ̄;)ウーン

  • 絵本作家 いわさきちひろ 生誕100年の記念出版

    生い立ちから五十五歳でみじかい人生の幕をおろすまで、ちひろの激動の生涯を丹念にたどった評伝の決定版

    「岩崎さん、絵本でなければできないことをしよう。画集でもなく、紙芝居を集めて綴じたものでもなく、物語にさし絵をつけたものでない絵本を!」
      ──武市八十雄(至光社を設立、ちひろの絵本を多数出版した編集者)

    ちひろを「母であるとともに、師でもあった」と述懐する長男 松本猛 による渾身の一書

    息を引き取る日の朝、夫の松本善明が国会へ行かなければならず病床を離れるとき、ちひろは小さな声でこう言ったという

    「いいわ、革命家の妻ですもの」

  • いわさきちひろの息子である松本猛によるできるだけ客観的に書いた実母についての伝記。身内であるがゆえに弱く甘く書いてしまった部分と、身内であるゆえに知りえたこと書けたことが織り交ざった内容となっている。

  • 岩崎ちひろの絵本を持っています。どの絵も水彩のぼかしが少女の愛らしさ、優しさを際立たせていて、この斬新な筆使いにうっとりしたものです。
    美術館にも行きました。
    でも、彼女の人となりはあまり知らない。
    息子猛の描く「いわさきちひろ」古い時代とはいえ、結婚した相手を尊敬できない、歩み寄ることもできない。ちひろも辛かったでしょうけど、追い詰められ自殺をした男性は不憫です。そんな悲しい事実も含めて淡々とちひろの人生を追う息子の眼差しは暖かく、尊敬してやまない母へのこれはオマージュである。

  • 無垢で透き通るような子供のタッチ。そこに辿りつくまでのちひろの人生は何とも壮絶。結婚相手の自殺、宮沢賢治との出会い、共産党への入党、新聞記者の経験、そしてベン・シャーンの思想への傾倒。人間観察眼磨きの糧にしては、あまりにも凄すぎる。

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著者プロフィール

美術・絵本評論家、作家、横浜美術大学客員教授、ちひろ美術(東京・安曇野)館常任顧問、著書多数。

「2022年 『ちひろ美術館の窓から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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