スピンクの笑顔

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 79
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062208024

作品紹介・あらすじ

私たちの日々はこんな感じです。いつまでもこのままでいたいなあ、と私は思います――犬のスピンクと作家ポチの暮らし、ついに完結。

感想・レビュー・書評

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  • 山奥の家で、人間、猫などとひとかたまりになって暮らすスピンク。7歳から9歳まで日々が描かれている。もはや老犬。景色や匂いに誘われ先へ先へと急ぐことはない。散歩は匂いをじっくり嗅ぎ深く思索するものに変わっている。家におれば殆ど横になり身に危険が及ばぬ限りは自ら動くことはない。すっかり成熟して静かで穏やかな毎日を送る。何気ない変わらぬ日常を微笑ましく眺めた。唐突すぎる終章には著者の胸いっぱいの愛がつまっている。笑顔に不覚にも、もらい泣きしてしまった。

  • 町田康が、飼い犬のスタンダードプードル「スピンク」になりきって綴るシリーズの第4弾。
    そして、これがシリーズ最終巻である。なぜなら、当のスピンクが本書の最後に亡くなってしまうから(泣)。

    これまでのシリーズより大幅にボリューム増して、430ページ近い大部の書になっている。
    とはいえ、町田家の日常のよしなしごとを、飄々とした笑いの中に綴る脱力感あふれる内容は、これまでと同じだ。

    スピンク以外の飼い犬にも、これまでのキューティー・セバスチャンとシードのほか、本巻では「チビッキー」(トイプーとマルチーズのミックス)が新たに加わる。
    町田夫妻プラス4匹(ほかに何匹もの飼い猫がいるらしいが、本シリーズには一切出てこない)の暮らしぶりは、まことににぎやかである。

    過去三作同様、スピンクたちになりきって犬の気持ちを綴るディテールが微笑ましい。

    《犬の人生は楽なものではないが、人間は人間で苦しいのだなあ、可哀想に。耳でもなめてやろう。私にできることはそれくらいしかない。》286ページ

    などというさりげない一節を読むだけで、楽しくなってくる。

    町田康が近著『しらふで生きる』で綴った断酒生活の発端が、この『スピンクの笑顔』にも描かれている。犬たちの目を通して綴られるそのいきさつには、『しらふで生きる』とはまた違った味わいがある。

    そして、本書の掉尾を飾る一編「家の中が静かです。」は、スピンクに代わって弟キューティーが綴る(という体裁の)、スピンクの最期の様子である。

    《スピンクがいなくなって家の中は静かです。
     静かでスカスカです。
     その静かな家の中に私は息を潜めて踏ん張って立っています。
     スピンクがいた場所に立っています。》

    ……というラスト・フレーズは、町田康の喪失感をそっくり反映しているようで、しんみりとする。

    そして、このシリーズ各巻に共通することだが、随所に挿し挟まれたスピンクたちの写真が、しみじみとよい。

  • この角度で笑ってる顔が一番好き。最後のキューティーが語ってる前まで、今までと変わらないのに。あんまり突然過ぎて、ただ驚いてるよスピンク。キューティーの想いがきっとその通りだろうなあって思うと、ただただ泣けました。夜中に号泣しました。スピンクのいた場所にどんな想いで立ってるのかなあ、キューティー。会ったこと一度も無いけど、君が大好きだったよ、スピンク(/ _ ; )

  • ポチとスピンクのライブのお話読みたかったよ。
    最後のキューティの文は、号泣でした。

  • あとがきが泣ける。

  • 泉蛸先生の御著作からのスピンク先生のお教えのくだり。…(怒りをなくすれば、人間はよりよく生きることができるし、長生きができる)
    そう。怒ってはいけない。なのに「愚僧」ポチのおたおたぶりったらもう…。今作からはチビッキー(新入り)が加入。
    本を閉じて、スピンク(9歳)シードとキューティを従えて得意げに笑ってる顔見たらこれまでのいろんなエピソード思い出して、しみじみ泣けてきた。

  • シードとスピンクの人間観察の対話がどんどん面白くなり、新たな住人のチビッキーの声をこの先聞いてみたいにもらかかわらず、とても残念で悲しいです。

  • キューティーの書いた章で泣いた。このシリーズで泣くとは思わなかった。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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