刑事の怒り

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062207942

作品紹介・あらすじ

凄惨な事件の裏に潜む、やむにやまれぬ“想い”を前に、刑事は何を思うのか――。推協賞受賞作「黄昏」を収録、夏目シリーズ最新刊!

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな夏目刑事シリーズ。

    #黄昏
    トランクに詰められた老女の遺体が見つかる。容疑者は娘。
    これは…身につまされる話でした。
    娘の想い、後悔、俳句に託された贖罪。
    「願い見る蒲公英の綿毛虹の先」
    娘の幸せを願う母の句に涙があふれた。

    #生贄
    これは同性として、とても重く苦しいテーマ。
    咲の覚悟と、”心の牢獄”の一言が深く胸を抉る。
    夏目も男性なんだと、ちらっと心をよぎった。

    #異邦人
    外国人留学生の日本への憧れと、厳しい現実。そして孤独。
    日本の代名詞のような「桜」と、彼らの目に映る「桜」が、それらを如実に表していると思った。
    クエットの今後を見たくなった。

    #刑事の怒り
    半分ぐらいまで読んで、どうしてタイトルが怒りなのかと思った。
    何ともやりきれない思いが残ります。
    夏目の娘は10年あまりの昏睡から目覚めたとはいえ、今も重篤な状態は続いている。
    どうしてそんなに強くいられるのかと、このシリーズを読んでいて感じていた。
    「信じる」と、言葉に出すことは容易いけれど、
    一番難しいことだと思っているので…

    >彼らの周りには自分を支えてくれる人がいた。
    献身的に支えてくれる人がいる人間が自ら命を絶とうとするとは思えない。

    うーん、果たしてそうだろうか…
    寝たきりの状態に置かれている人が、自分の家族を苦しめてまで生きていたいと思えるだろうか…

    「彼らの周りにいる人たちは不幸なんかじゃない!」
    夏目の叫びと、最後の靖子の涙を見た時に、
    真実が必ずしも遺族の救いにはならないのだと思った。

  • 通り魔によって幼い娘を植物状態にされた夏目信人。
    彼が選んだのは刑事の道だった。
    夏目刑事シリーズ第4弾!

    ・黄昏
    ・生贄
    ・異邦人
    ・刑事の怒り

    被害者と加害者、その家族たちのやむにやまれぬ〝想い〟をみつめてきた
    夏目刑事が出会った4つの事件。
    死体遺棄…年金不正受給・性犯罪・外国人労働者への偏見・
    介護…命。
    社会の歪みが生み出す不平等ややり場のない虚しさを抱えた人々。
    とても重厚な社会問題をテーマに織り込みながら
    事件そのものよりも、その背景にある人間を深く深く描いてる。

    本質を見抜く目を持ち、人に対する優しさや愛情が深い。
    そして人の心に寄り添う。
    そんな夏目刑事が信念を貫き地道な捜査が導く真相はとても切ない。
    今迄、懸命に前を向く人々に常に温かみに満ちたまなざしで見守っていた
    夏目刑事が今回は怒りに燃えていた。
    どんな状態であっても消してしまっていい命なんてない!
    命の在り方についても考えさせられました。

    性犯罪を描いた生贄は、異常過ぎるよ、駄目だよって思うけど
    そこまで追い込まれてしまった被害女性の心理が理解されていない気がして
    ちょっと…って思ってしまいました。
    夏目刑事も男性ですからね。

    夏目刑事やはりとてもとても素敵な刑事さんでした。
    やっばり良いなぁ

  • 夏目刑事シリーズ4作目。
    異動になった夏目刑事が、また事件を解決していく。
    刑事のイメージとは違う穏やかな人柄にほっこりしながら読んだ。

  • なんと夏目刑事の異動という変化球からこの作品はスタートする。
    新しい職場の錦糸署でも相変わらずの深い洞察で事件を解決していくが、この作品では読んでいてツラい話が多い。また新しい同僚の本上刑事がクセ者だが、関わり方というか絡み方が中途半端であまり作品にプラスになっていない。期待が大きいシリーズだけに残念な感じだったが、夏目刑事は好きなキャラクターなので今後もシリーズ継続には期待したい。

  • 夏目シリーズ第4弾。
    今作で夏目は錦糸町へ異動。舞台も錦糸町へと変わる。
    隠れた犯罪多発地帯として知られる錦糸町の危険な一面と、夏目ならではの深い視点で事件の真相に迫る4編。
    外国人犯罪、性犯罪、介護疲れ…
    現代の闇を代表する犯罪を描いていて、それぞれ短編といえども、重い。
    そして、表題である「刑事の怒り」普段感情の乱れを感じさせない夏目の心を揺るがす事件が描かれる。ここでは一つの物語に過ぎないが、生きていれば、誰もがぶつかる可能性が高い問題。読み終わった後に考えさせられる内容だった。

  • 2018年21冊目。刑事・夏目シリーズ最新作。⌈黄昏⌋ただただ感動。どうも最近こういうのに弱い。⌈生贄⌋夏目なれどままならないこともある。これこそ当事者にしか理解できないものなのだろう。⌈異邦人⌋これまた難しい問題。それでも救いの見えるラストは素敵。⌈刑事の怒り⌋夏目が見せる静かで激しい怒り。同じ境遇にある夏目だからこそ説得力が増します。

  • 東池袋署から錦糸署へ。刑事・夏目信人シリーズ第4弾。
    淡々としているようで、納得がいかなければ、ねばりづよく捜査を続ける。容疑者をしっかりと見つめ、隠しているものを見逃さない。
    「黄昏」「刑事の怒り」は、身勝手さにいらだちを感じる。「生贄」はつらく、「異邦人」はやるせない。

  • 事件には加害者と被害者がいて。加害者は罪を償いそしてその罪への報いを受ける。
    けれど、そこには事件を起こさなければならなかった何かがあるはず。その何かを常に考えその罪によりそうのが刑事夏目。今回も悲しくてやるせない「何か」を夏目は見逃さない。なぜその事件は起こったのか。通りいっぺんの捜査では見つけられなかった本当の「罪」。
    けれど今回、夏目が激しい怒りを見せた「何か」は夏目のどうしても許せない、そして譲ることのできない一線だったのだ。夏目の怒りが心を激しく揺さぶった。

  • 夏目刑事シリーズ第4弾。連作短編集。4編。
    今作にて、東池袋署から墨田区錦糸署へと移動になった夏目刑事。年金不正受給、性犯罪、外国人労働、介護といった社会問題をテーマに織り込みながら、事件そのものよりも、その背景にある人間を描く。
    娘が少しずつ回復していることにほっとするが、そのことに相反して「刑事の怒り」では考えさせられる面も。

  • このところ
    すっかり
    薬丸さんの「刑事の…」シリーズに
    はまり込んでいる

    なんだろう
    この「癒され感」は
    物語の中で 起きている事件は
    それはそれで救われようのない事例が
    多いのだが
    夏目信人刑事のお陰で
    「人であることは」
    をしみじみ 追体験できる

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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