蜃気楼の犬

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 104
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062200431

作品紹介・あらすじ

正義など、どうでもいい。
俺はただ、可愛い嫁から幸せを奪う可能性を、迷わず排除するだけだ。明日も明後日も。

県警本部捜査一課の番場は、二回りも年の離れた身重の妻コヨリを愛し、日々捜査を続けるベテラン刑事。周囲の人間は賞賛と若干の揶揄を込めて彼のことを呼ぶ――現場の番場。
ルーキー刑事の船越とともに難事件の捜査に取り組む中で、番場は自らの「正義」を見失っていく――。

新江戸川乱歩賞作家が描く、新世代の連作警察小説。

感想・レビュー・書評

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  • 5つの連作短編集。私は呉さん、これで8作目なのですが・・・・
    もしかしたら、1番好きかも!てくらい、すんごく面白かった〜〜〜!!
    呉さん、短編!いいじゃ〜ん、って思いながら、正直、1、2作目までは軽いテイストが面白い感じで読んでいたのだけど(いや、事件は充分陰惨なのだけどね)事件そのものの、謎や動機も面白く、更に、後半に向かって、いろいろ繋がってくるところ、全編を通じてのルーキー船越や他の同僚との関係性や、そのキャラ。口に出さない番場の1人語りのユーモア感。いや〜〜私はすごく好きなタイプの警察小説でした。
    ラストはちょっと感動もあり、読後感も良いです。当たりだった〜!

    印象に残ったところ少し。
    ーーーーー
    「そう。キリのない仕事だよ。人間の善悪なんて、確率に過ぎないんだからな」

    やがて気づくことなのだ。人間の裏表、被害者と加害者の曖昧さ。割り切ることのできない善悪の泥土でもがいた果てに、たとえば番場のような刑事が出来上がる。

    こいつの悪いところは、自分が不利な時に誤魔化しがきかないことだろう。だがそれも言わない。船越の真っ直ぐさを挫いてしまうのを、躊躇している自分がいる。
    ーーーーー
    「少年」なんであだ名をつけられていたけど、船越も頑張ったね!
    コヨリとのことも気になるし、これは続編も書いて欲しいなあ〜〜〜(^^)

    余談・・・写真ではわからないけど、この本、全ページに表紙のような黒い墨のような色が付いていて、それが尚更暗い印象を持たせますが、内容はそこまで暗くないと思いました〜。

  • うーん。なんだろう。短編集のせいか、物語はしっかりしているのに、全体的に薄いと感じる。
    各章に登場する人物はが最後の章『蜃気楼の犬』の事件に関わってくるあたりの作り方は良いのだが、なんとなく物足らなさを感じる作品。
    優秀な刑事が自分の妻とこれから生まれてくる子どもが事件に関わらぬよう、少しでもその芽を摘み取っていくべく事件を解決していくのだが、帯に書いてあるような『正義より妻。』からイメージする内容とは全く違っていた。
    また、義理の兄との関係性も意味深ぽくしている割には結局『なんだったの?』と思わされるような結論が見えない始末。妻や義理の兄との描写を丁寧に描けていればもう少し良い物語になると思うのだが。

  • すっごく面白かった!!!

  • 呉勝浩さんのミステリートーク後、初の作品。冷たそうに見えるけれど温かい雰囲気を感じる。

  • これは当たりだ。今後も読みたい作家さんがまた増えてしまった。こないだ読んだアンソロジーで知った作家さん。5篇の連作短編集だけど、最後に一気につながる。刑事たちがみんなかつての仲間というかチームだったのはしびれたなあ。あと、船越『少年』が最後に番場を追い詰めるのも。部下を育てる意味。復讐の殺人は許されるのか。いつも考える。続編あるのかなー。妻とのなれそめや義兄がなぜそんなに結婚に反対しているのか、このまま明かされないわけないと思うけど。しばらくこの作家さんの本を読むわ。

  • 連作短編集。
    捜査一課のベテラン刑事、通称”現場の番場”は独自の勘により真相を暴いていく。ペアを組む若手刑事らとの捜査の中、彼の正義はどこに向かうのか・・・
    トリックを探しつつ、という流れにいま一つ乗れなかったが、最後の編はなるほどなと。なぜ若い奥さんを貰ったのかが分からず残念。次作があるのだろうか。

  • やや現実離れをしているものの、どの話も謎解きの爽快感は味わえた。深く心に残るほどではないが、エンターテイメントとしては楽しめた。

  • 刑事ものの連作短編。昨年の乱歩賞作家である作者は、初めて読む。
    ハードボイルドの雰囲気がある警察ミステリだが、矛盾しないライトな読み易さがあるのはよかった。これは稀有なセンスだと思う。
    そんな筆致は魅力なのだが、ページ数が少なく、展開もシンプルに過ぎる。つまりプロットまでライトなのが戴けない。もっと厚みが欲しかった。
    最後の二作はこの難点が解消された上、ミステリとしても見事といえる。
    ストーリーはよくあるものだが、印象は独特なのも良かったので、ちょくちょく読みたい。
    3+

  • 最初はどんな話かな~と読んでいく感じで、ただ追って行っていただけだけれど、最後の話を読んでなるほど…という感じ。
    番場が事情を抱えている点(妻が二まわり年下で親族から反対を受けているため孤立無援)はあるものの、そこについてはとくに深くは触れられていないのがよかった。

  • 連作ミステリ。正義のため、というよりも家族のために事件を解決しようとする刑事の物語。たしかに家族が一番大事だってのは分かりますが、あまりに考えすぎでは、と思う面もあるので。何か事情があるのかと思いきや、そのあたりが描かれていなかったのは少し残念かも。
    それぞれにまったく関係のない事件だったはずなのに、最終話でふと見えてくる繋がりには驚き。だけどそれが必然ではないということが、怖いといえばたしかに怖いことです。どこにでも犯罪の種が転がっている、というのは仕方のないことなのかなあ。

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著者プロフィール

1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。現在、大阪府大阪市在住。2015年、『道徳の時間』で、第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。18年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞、同年『ライオン・ブルー』で第31回山本周五郎賞候補、19年『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』で第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補、20年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、同作は第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)も受賞し、第162回直木賞候補ともなった。21年『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木賞候補。他に『ロスト』『蜃気楼の犬』『マトリョーシカ・ブラッド』などがある。

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