クロコダイル路地1

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062200080

作品紹介・あらすじ

quo fata trahunt, retrahuntque, sequamur.

運命が運び、連れ戻すところに、われわれは従おう。

1789年7月14日、民衆がバスティーユ監獄を襲撃。パリで起きた争乱は、瞬く間にフランス全土へ広がった。帯剣貴族の嫡男フランソワとその従者ピエール、大ブルジョアのテンプル家嫡男ローラン、港湾労働と日雇いで食いつなぐ平民のジャン=マリと妹コレット。〈革命〉によって変転していくそれぞれの運命とは。上巻は貿易都市ナントを舞台にしたフランス編。小説の女王が描く壮大な物語と、仕組まれた巧妙な仕掛けに耽溺せよ。

感想・レビュー・書評

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  • 母親は貴族だけれど家柄は富裕な商人のロレンス(ローラン)、少年時代のロレンスが憧れる母方の従兄で貴族の嫡男フランソワとその忠実な従者ピエール、貧しい庶民で日雇いで食いつなぐ少年ジャン=マリとその妹コレット。

    1巻の時点では表面的には、彼ら貴族、商人(ブルジョワ)、労働者、というそれぞれの立場の登場人物の視点で描いたフランス革命時代の群像劇として読める。貴族らしく王党派として戦うフランソワと彼に従うピエール、ブルジョワゆえ革命の進行によって立場が変わってゆくロレンス、日々生きることに必死なのに革命に振り回される庶民のジャン=マリ。さらにフランソワの異母兄で助祭のエルヴェ、ローランを利用しようとする元従業員らの思惑が絡まって最終的に彼らはひとつの大きな流れの集まる場所へ集結する。

    とにかく展開がスリリングで一気読み。およそ主人公らしからぬ臆病で内向的、流され体質の精神的ワニ男ロレンスよりも、ロレンスの憧れのフランソワがベタに眩しく、そんな彼に屈折した愛情を抱くピエールとの主従萌え。女性では唯一主要キャラのコレットの禍々しいまでの小悪魔っぷりがかなり怖い。

    フランス革命については以前アナトール・フランスの『神々は渇く』を読んだときに、べるばら知識しかない自分が思っていた以上に複雑で、王と王妃を処刑してめでたしめでたしでは全然なかったことに驚愕したのだけど、本作でもそこは同じ。独裁者が王から革命政権に変わっただけで、庶民の生活の苦しさは変わらず、むしろ恐怖政治や徴兵で情勢は悪化している。1巻ラストでそんなフランスを逃れてイギリスに渡った一行。2巻に続く。

  • 富商、労働者、貴族側の視点で語られるフランス革命。
    激動を追う面白さの他に、時折現れる鰐によって、当時を振り返る語り手の「今」がどうなっているのかとても気になる。

  • うーん…今のところ全然ピンとこない。
    海賊女王はあんなに面白かったのに。

    なんで。
    鰐のくだり、理解できないし、故意だろうけど文がバラバラしていて把握しづらい。
    ジャンマリとエルヴェ以外みんな感情がよくわからんよ。
    特にココ。

    ここから面白くなるのかなー。

    年末、姉と話した時に
    私「皆川博子の海賊女王、面白かったよ」
    姉「えーー、皆川博子ってめっちゃ暗いよね。私は無理だ」
    という話をしていて、ああ一作目でクロコダイルに当たったら私もそう思うかも、と今は思った。
    ちなみに、このときの結論は、藤本ひとみからエロさを抜いたもの=皆川博子、でした笑。

  • 21:「世界史クラスタと読む皆川博子」的読書会が待たれます。集中して読めないのがつらいけど、面白い……!

  • フランス革命以降のヨーロッパを舞台にした歴史的ミステリ。フランス篇ではフランス革命そのものが描かれるのだけれど。歴史の教科書に出てこないような一般の人々の物語がメインです。なので、まさかこれほどのひどいことが行われていたとは……というのにまず驚きでした。
    それぞれの立場から革命に巻き込まれ、運命に翻弄される登場人物たちの物語は、ある意味どれもが苛酷です。暗い。重い。苦しい。それでも引き込まれるとぐいぐい物語に引っ張って行かれました。そして激動のままイギリス篇へ。

  • フランス革命のお話。
    王族ではなく、革命軍でもない視点から見たフランス革命。
    ロレンス、ジャン=マリ、ココ、ピエールの語り。
    世間が狭くてもどかしくなったりする。

  • 上巻だけでもう面白い。装丁の鰐革模様の遊び紙が素敵。

  • いわばフランス編。この登場人物の多さと彼らの人生の複雑怪奇なめぐり合わせ、にも関わらず全てをここまで巧みに絡み合わせ織り上げてしまう氏の手腕。その上でなおも失われない、幻想的な皆川ワールド…平伏で御座います……イギリス編もこれから読めるのたのしみ

  • なんか・・・コレット・・・ショックだったな・・・
    いや、でもその残酷さを包み隠さず描くのが皆川博子先生であって・・・むしろお得意な手法だ・・・
    清らかで無垢だった子どもの残酷な末路・・・

  • フランス革命時のナントが舞台。貿易商の息子ローラン、貴族の子息フランソワの従者ピエール、日雇いの仕事で日々を生きるジャン=マリ。様々な立場の3人の少年の視点から描き出される物語。
    個人の力じゃどうしようもない事に巻き込まれていくときの感覚ってこういう感じなのかな…と思いながら読み進める。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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