サブマリン

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199537

作品紹介・あらすじ

陣内さん、出番ですよ。

『チルドレン』から、12年。
家裁調査官・陣内と武藤が出会う、新たな「少年」たちの物語。

伊坂幸太郎、書き下ろし長編。

感想・レビュー・書評

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  • 殺られたから殺り返す。
    殺ろうとして殺り損なう。
    殺るつもりはないが殺ってしまう。

    人を殺すにも、色々な背景や経緯がある。

    その負の連鎖を断ち切る力を持つのは、この作品では漫画だったように思う。
    物語が持つ力は、儚くて、ときにとてつもなく強い。


    いやまた陣内さんがよくてよくて。

  • 「チルドレン」の続編。
    家裁調査官の陣内と武藤が出会う少年たちの真実は…

    破天荒な陣内が移動先でまた上司になって、真面目な武藤が再び、振り回されることに。
    3人一組で調査に当たるので、今回は木更津安奈というとらえどころのない女性も加わって、一味添えます。

    無免許運転で歩行者をはねた少年・佑真が、かって交通事故の被害者側だったことがわかる。しかも‥
    一方、ネット上で脅迫状を送り付けた少年・俊が自首してきた…
    次第にわかってくる陣内の過去との関連とは。

    口は達者だが、子供のようなところがある傍迷惑な陣内。ただし大事なところではブレないというカッコよさ。
    少年たちの起こした事件を捜査するにあたり、表面に出ていることだけでなく、何が起きたのかを丁寧に探り、隠れていることも見落とさない。
    事件が起きる時には、物事が絡み合っていて、すぱっと白黒つけられない事情もある‥
    それは、ありえますね。
    まして、関係者がまだ少年では。
    判別しにくいことも、価値観によって受け止め方が違うことも、あるだろう…
    自分が直面したらどう判断するのか?
    それは何とも難しいことですね。

    地道に暮らしていても襲われる、思いがけない出来事。
    そういう時にもふとした善意、勇気、機転が事態を救うこともある。
    伊坂さんの作品にはいつも、そういったものへの信頼と希望が芯に感じられます。

  • 『チルドレン』の続編にあたる。

    前作を読んでから相当時間が経っているのに、数ページ読んだだけで、ああそうそう、こういう困った人だった陣内さん、と旧友に再会したような懐かしさを登場人物に覚えた。本当に面倒くさい人だよなぁ、なんて。

    家庭裁判所の調査官として、事件を起こした未成年の少年少女たちと関わる陣内と武藤。
    上司である陣内は突拍子もないことばかり仕出かす幼稚園児のような男で、陣内に振り回される武藤は真面目で誠実に仕事と向き合っている。

    正義とは、贖罪とは何か。罪を犯した人間は罪と同じ罰を受けるべきなのか。一度罪を犯した人間は決してやり直せないのか。悪人ならば、罪人ならば殺してもいいのか。悪意のない事故で起きた殺人と、悪意があったのに起きなかった殺人ならばどちらにより非があるのか・・・。

    物語の根底に流れる問いかけは重く真摯なのに、伊坂幸太郎の手にかかると語り口はとても軽妙で洒落ている。
    陣内と武藤の他愛なくくだらないやり取りに笑いながらも、芯の部分が胸に響く。

    ラストがすごくいいなと思った。
    作中で問いかけられる問題に、答えは出ない。たぶん正解はない問いだから。
    けれども陣内の言葉に、救いが、光が、くっきりと、ある。

  • 世の中に溢れている、正解のないあやふやな問題。

    えいやーと突進した先にあるのは、ふかふかのマットなのか、それとも泥水なのか…

    いやいやマットだよかった~と思っていても
    湿っていてカビだらけで
    異臭を発しているかもしれない。

    泥水かと思っていたら、コーヒー牛乳で
    口に入ってしまい飲んだら
    美味しかったりするのかもしれない。

    白黒はっきり分かれないグレーゾーンの中で
    陣内にばったり遭遇したら絶対について行ってしまう。
    だって、乱暴だけれども言い切ってくれるから。。。

    不安なときに、風邪です!と断定する
    お医者さんに出会ったような安堵感。
    この一切の責任を持つという言い切りに
    どうしようもなく惹かれてしまうものなのです。

    『放っておけば争うに決まってるんだから』の歌が
    無性に聞きたくなる一冊です。

    盲導犬のパーカー。いい味出してます。
    『チルドレン』のベスもかわいいですけど、
    陣内にそう言わしめるパーカー、グッジョブ。
    長生きする気がします☆

  • たまたま家裁調査官関連の書籍が続いた。うわべだけの情報だけでは善悪の判断つかないことがなんと多いことか。今回の伊坂作品も私の好きなラサーン・ローランド・カーク推しの情報が盛りだくさんだった。

  • 面白かったー!
    やっぱり陣内、いい感じ〜

    面白く、テンポ良く読めるが、少年犯罪の加害者がテーマの話。

    新たに登場した小山田俊のキャラも良し!!
    第三弾があればいいのに〜

  • 20191005
    家裁調査官の武藤と陣内シリーズ。チルドレンの続編。連作短編集ではなく長編。前作から時間がたち、家庭を持った武藤と主任になった陣内くんが大活躍?
    相変わらず陣内君が素晴らしい。滅茶苦茶だが、ハートがある。本当に格好いいところでは格好つけない。9割間違っていても、大事な1割りは決して間違わない。家裁調査官としてはいかがかというところもあるが、誰にでも自然体というのは何よりも難しいことだし、だからこそ信頼できる。
    亡くなった友人の話など、チルドレンとサブマリン以外にも関連する話があるのかも。

  • ものすごく悪い奴がいたとする。
    でも悪い奴になってしまったのには、過酷な生い立ちなどそれなりの理由があったとしたら?
    ひき逃げ交通事故の被害者がいたとする。
    でもその被害者が実は加害者以上の極悪人だったとしたら?
    私たちの思う一方的な善悪の基準なんて、一瞬でグラグラと揺らいでしまう。
    では、私たちは何を信じて人を裁いたらいいのか、
    そもそも法律で人を裁くことなどできるのだろうか。
    その答えは、超変人の家裁調査官・陣内君がきっと教えてくれるだろう。
    孤独や悲しみの中にいる人にしてあげられることがあるとしたら、
    ただ友として隣にいて、そっと寄り添うことだけなのかもしれないね。

  • 大好きな小説のひとつである、チルドレンの続編。

    十数年ぶりの続編ということで、前作の記憶はおぼろげで、覚えていたことは
    盲導犬、銀行強盗、家裁調査官、陣内さん、、、
    ストーリーはうろ覚えだけど、陣内さんのキャラクターが強烈で、ときに笑いながら読んだ記憶がある。

    本作ももちろん、破天荒な陣内さんは健在。
    前作のような短編集ではなく、ひとつの物語として仕上げられている。
    記憶よりも陣内さんの破天荒さが落ち着いていて(齢をとったから?)物語も笑えるようなものではなく、
    物事や結果の正しさや因果関係、憎悪の連鎖など、少年犯罪をテーマに考えさせられるような作品だった。
    一方で、相変わらずテンポよく軽快な物語の流れは、テーマの重さを和らげ、
    チルドレンの続編だなーと再認識させられた。

    読了後の前作とはまったく違う感覚に、チルドレンを再読してみることを決意。

  • 『チルドレン』の続編。また陣内に会える!とワクワクしながらページを開いた。もちろん、期待は裏切られる事はない。陣内は相変わらず、破天荒だけと、カッコよかった‼︎

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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