- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062191913
作品紹介・あらすじ
1996年より劇団FICTIONを主宰。2011年より小説を発表しはじめ、2012年「ギッちょん」で芥川賞候補、同年初の創作集『緑のさる』で野間文芸新人賞を受賞。2013年「砂漠ダンス」で芥川賞候補。同年、「コルバトントリ」で芥川賞候補となる。今最も注目される作家、山下澄人氏最新作。
人間という暮らしにうんざりした、というわたしは、それでも自殺はせずに「わたし」と呼ぶ装置をもう少し観察してみたいと望み、家を出て山へ向かうことに。ユという女性との記憶と死んだはずの友人の中西を道連れに山を目指し、吹雪の中で出会った黒い馬「ルンタ」に乗り、さらに深い雪の中を進んでいく。
生と死、現在と過去を行き来する人々が、人間の意識や時間の虚構を疑わせながらもまた確かな生を感じさせる。
天性の言語感覚と非凡な着想で書かれた傑作。保坂和志氏絶賛!デビュー作『星になる』も収録。
「そろそろ無理か」
ユが言った。たぶんそういった。
「無理ちゃうか」
わたしがいった。
わたしの見ているこいつがそういった。
ユが手元で携帯電話をいじっているのがわかった。
少ししてわたしの携帯電話がメールを受信した。そこにはこう書かれていた。
「でんきつけて」
わたしはため息をわざとつきながら明かりをつけた。そのとたんなぜか電子レンジが大きな音をたてて、パンッと破裂し壊れた。
ルンタがからだを揺すって泣いていたわたしが雪の上へ落ちた。雪は冷たく、わたしはわたしの中にいた。──本文より。
感想・レビュー・書評
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☆何なのかな、この人もあっちの人だな。
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こういうのって、好き嫌いというか、好みがわかれますな。なにが書かれているかとか、文章の主語述語とか、そいうことにこだわる人は付いて行けまヘン。学校の国語の先生が「お前なあ、ここの展開意味わからんやろ。」とかいいそうなところがいっぱいあるけど、これはいい小説です。結構断言します。
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一気に読まないとわからなくなると思って一気に読んだ。すごい疾走感。
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文体が独特です。最初は取っ付きにくいですが、そのうちこのぐるぐる感に慣れてきて、妄想とも自分の脳内思考とも言う物が自分の中で出来ていく不思議な共有化がありました。だけど、それで?と言う感じ。何がしたかったのだろう?