怪談四代記 八雲のいたずら

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062190244

作品紹介・あらすじ

1904年、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が「耳なし芳一のはなし」「雪女」などを収録した怪奇文学作品集『怪談(KWAIDAN)』を発表。
 それから110年、曾孫(ひまご)や玄孫(やしゃご)の時代になった現在の小泉家でも、いろいろな怪談が語り継がれ、そして不可思議な出来事が多発するという。
「カラスの因縁」「如意輪観音の呪い」「三途の川」「仏壇」など、あまり活字として出てこなかった小泉家の怪談や、親族ならではの考察を交えた小泉家の評伝・エピソードの全てがこの一冊に。
 八雲の曾孫で民俗学者・小泉凡が、怪談を愛する現代人、そして曾祖父におくる怪談逸話集。まさに110年ぶりの新刊!

感想・レビュー・書評

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  • 怪談というよりは、ちょっと不思議な因縁譚が中心。「へるん先生」のひ孫である著者の手にかかると、スピリチュアル方面のいかがわしさがほとんどなくて、「ああ、そういうこともあるかも」とすんなり読んでいけるものになっている。

    なによりもいいのは、著者が、曾祖父ハーン、その妻セツをはじめとする小泉家の人たちに、心からの敬意とあたたかい愛情を持っていることがよく伝わってくくることだ。こんなにハーンを身近に感じられるものを初めて読んだ。

    また、今更ながら、ハーンの「思想」に感銘を受けた。自然と調和した暮らしのありよう、霊的なものがごく自然に生活の中に溶け込んでいるさま、権威主義とは無縁な厚い宗教心…、ハーンがかつての日本人に見いだし、この上なく尊いと認めたものを、今の私たちは失っている。時々ちょっとしたイタズラをなさるらしいあの世のハーンは、どんな顔で今の日本を見ていることやら。

    作中に、「境港は妖怪、松江は怪談、出雲は神話の里」というようなくだりがあって、出雲生まれの私は、しみじみなるほどなあと思った。若い頃は早く出て行きたいばかりだった、あの湿った土地柄を、やはり年のせいだろう、懐かしく思い出したりする。

  • ラフカディオ・ハーン/小泉八雲は、間違いなく松江の文化英雄です。極めてナイーブな感性と徹底した思考力を持つこの作家は、明治の松江で暮らした一年足らずの間にこの街の自然と人の営みのディテールを魂に刻み込み、文学として世界に発信しました。彼の魂に濾し取られた「松江」は、現代の松江に非常に豊かな意味世界を与え続けています。

    ハーンは東京へ転居し、子孫も長く首都圏に暮らしていました。しかしハーンの曾孫に当たる民俗学者・小泉凡先生が松江にIターンされ、島根県立大学で教鞭を執りながら、ハーンの開拓した意味世界を更に賦活させる様々な文化活動を続けておられます。そのひとつの核が「怪談」、ハーンの代表作であり松江の文化資源である物語群を活用した町おこしです。

    本書はその現時点での集大成といえるでしょう。帯の惹句「110年ぶりの新刊」とは、今年がハーン没後110年であることに依ります。ハーン自身とその直系親族の歴史の中で起きた様々な綺譚を紹介しながら、そこに潜むtruth人間の真実を浮かび上がらせる──本書は間違いなくハーンの文学活動の正当な後継です。普通の文章から突然文字が太文字に変わる、それは「ここからが怪談だよ」という明瞭なシグナルで、読者は息を呑み心を構えて読み進めることになります。現実と地続きの怪異、私たちの日常に滑り込む不可思議。それは現実を見失わせる夢想ではなく、かえって現実を照らし返し、読者の現実を見る目を広げ深める役割を果たすのです。

    本書は普通に読んでも抜群に面白いのですが、ハーンとその子孫にまつわる様々なエピソードを記述した資料性の高さは、ハーン文学愛好家にとって何物にも代え難い価値を持っています。妻セツや長男一雄のエッセイが今もなお第一級資料として輝くように、本書も百年スパンで読み継がれるでしょう(本気で言ってます)。

  • 1904年、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が「耳なし芳一のはなし」「雪女」などを収録した怪奇文学作品集『怪談(KWAIDAN)』を発表。それから110年、曾孫(ひまご)や玄孫(やしゃご)の時代になった現在の小泉家でも、いろいろな怪談が語り継がれ、そして不可思議な出来事が多発するという。「カラスの因縁」「如意輪観音の呪い」「三途の川」「仏壇」など、あまり活字として出てこなかった小泉家の怪談や、親族ならではの考察を交えた小泉家の評伝・エピソードの全てがこの一冊に。八雲の曾孫で民俗学者・小泉凡が、怪談を愛する現代人、そして曾祖父におくる怪談逸話集。まさに110年ぶりの新刊!
       
    ハーンのひ孫・凡さんにより、小泉家の歴史と知られざる怪談が語られます。ハーン著の『日本の面影』でハーンの人となりや日本での功績はある程度知っていましたが、子孫が家族の視点から描くハーン像はまた違っていて興味深く読めました。また、小泉家にまつわる怪談として紹介されている逸話は、怪談というよりも邂逅や不思議な縁といった内容ですが、凡さんの語り口(ハーンに似ている?)のせいかどこかつかみどころのない不思議な空気を感じるものでした。「妖怪のふるさと」境港、「神話のふるさと」出雲に続いて松江を「怪談のふるさと」として多くの人に認知してもらおうという動きもあるようで、僕も先日松江に遊びに行きましたがかなり駆け足だったので、次回はのんびりハーンの足跡と怪談をたどる旅をしてみたいと思います。

  • 小泉八雲の子孫が八雲の生涯,足跡について書いた一冊(だったはず)(2015/6/6記入)

  • 登録番号:11504 分類番号:388コ

  • 【6/1記事追加】小泉凡さんの新刊『怪談四代記 八雲のいたずら』7月24日発売 | 八雲会 | The Hearn Society:小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の研究・顕彰
    http://yakumokai.org/7326

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。成城大学文芸学部・同大学院文学研究科で民俗学を専攻後、1987年に島根県松江市へ赴任。島根県立大学で教鞭をとりつつ、妖怪・怪談を切り口に、文化資源を発掘し観光・文化創造に生かす実践研究や、小泉八雲の「オープン・マインド」を社会に活かすプロジェクトを世界のゆかりの地で展開する。現在、小泉八雲記念館館長・焼津小泉八雲記念館名誉館長・島根県立大学短期大学部名誉教授。2023年1月、アカデミア賞(文化・社会部門)を受賞。主著に『民俗学者・小泉八雲』(恒文社、1995年)、『怪談四代記―八雲のいたずら』(講談社、2014年)、『小泉八雲の怪談づくし』(八雲会、2021年)ほか。小泉八雲の曾孫。日本ペンクラブ会員。

「2023年 『小泉八雲と妖怪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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