- Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062163705
作品紹介・あらすじ
父から「悪の欠片」として育てられることになった僕は、「邪」の家系を絶つため父の殺害を決意する。それは、すべて屋敷に引き取られた養女・香織のためだった。十数年後、顔を変え、他人の身分を手に入れた僕は、居場所がわからなくなっていた香織の調査を探偵に依頼する。街ではテログループ「JL」が爆発騒ぎを起こし、政治家を狙った連続殺人事件に発展。僕の周りには刑事がうろつき始める。しかも、香織には過去の繰り返しのように、巨大な悪の影がつきまとっていた。それは、絶ったはずの家系の男だった-。刑事、探偵、テログループ、邪の家系…世界の悪を超えようとする青年の疾走を描く。芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしサスペンス長編。新たなる、決定的代表作。
感想・レビュー・書評
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「悪と仮面のルール」
邪悪な家系に囚われた男の話。
お前は邪に育てるために私の意思で生まれた。お前に生得の権利などない。お前は邪になる。お前は邪を避けようとして邪となる。それは変更されない。
久喜家の当主である父は死ぬ前に僕にそう告げたが、父に久喜家の歴史を告白された時点で僕は既に邪だった。
世に邪を生み出す風習がある久喜家に生まれた久喜文宏が、初めて好きになった香織(久喜家養女)を久喜家から守り通す物語。ともすれば純愛小説に見えるが、邪に苦しむ文宏の苦悩の物語の様にも見える。香織を陰から守る為、父を始め一人また一人と殺していく。殺された相手は悪人であり、文宏にとって香織は悪も善も超えた存在であることを踏まえると、自らを邪と認識している文宏は気に病むことは無さそうだが、父に取り込まれたように顔が父に似ていき、麻薬の売人を殺した時は後悔を吐露するかのような悪夢にうなされる。
本書のテーマに愛が含まれるとすると文宏が苦しんだ邪もその1つだと思います。邪をもっと具体的に言えば、人は何故人を殺しをしてはならないか?。父や兄は邪としての喜びを語り尽くす一方で、文宏は香織を守る為に人を殺したからこそ分かる感覚や重さを邪を引き継ぐ伊藤に語るが、その語りの量は膨大。その後、伊藤が殺人を犯すことは無かったのかは定かではないが、伊藤と文宏はある種の信頼関係を結ぶことになる。
最終的には香織に本性を告げず、久喜家の魔の手から彼女を守り切り、海外に逃げることになる文宏だが、そこで探偵のルール破り(プレゼント)が発覚する。
全てを投げ打ってきた文宏がその後どのような人生を歩んだのか興味深い終わり方だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
201803
あとがきがなーい。著者のあとがき好きなのに。共に生きましょう。 -
殺人を犯したという
罪に苦しむ 主人公の姿が
とても哀れです
こんなやつらのために苦しむなんて
割に合わないと思うから
殺人に一歩踏み出すべきでは
ないのかもしれません -
1日で読み終えた。
タイトルや、出だしから興味を惹かれて読み進めたが、結局、いつ面白さのピークが来るのだろう、と思いながら読み終えていたと言う感じだった。
ストーリー自体はとても重く、引きずり込まれそうな感じだが、一人の女性を愛するが故の行動、主人公にそこまでの異常性は感じられず、以外にあっさりと感じた。
私の読み方が浅かったからかな?
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50悪魔の伝道書
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純愛はニヒリズムを凌駕する。