変愛小説集2

著者 :
制作 : 岸本 佐知子 
  • 講談社
3.75
  • (21)
  • (29)
  • (32)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 343
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162456

作品紹介・あらすじ

真実は奇なり、愛は変なり。世にヘンアイの種はつきまじ

ギャルが漂着した孤島にはイケメン男子だけが住んでいた……「彼氏島」
体の中にブリザード吹き荒れる空虚を持つ少女の哀しみ……「スペシャリスト」
会ったこともない友人の妹への妄想愛を育む独身老人の物語……「妹」――など新たに発掘された11編の“変愛高濃度・現代英米文学”

“変な愛”の探求者、岸本編訳による人気シリーズ第2弾!

「彼氏島」 ステイシー・リクター
「スペシャリスト」 アリソン・スミス
「妹」 ミランダ・ジュライ
「私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ」 アリソン・ベイカー
「道にて」 スティーヴン・ディクソン
「ヴードゥー・ハート」 スコット・スナイダー
「ミルドレッド」 レナード・マイケルズ
「マネキン」 ポール・グレノン
「『人類学・その他 100の物語』より」 ダン・ローズ
「歯好症(デンタフィリア)」 ジュリア・スラヴィン
「シュワルツさんのために」 ジョージ・ソーンダーズ

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • またしても変愛小説だ(決して恋愛小説ではない)

    1よりも滑稽さは消えて背筋がヒヤッとする変愛が増えてる気が。

    中でもヴードゥ•ハートは背後にヒタヒタと迫る狂気か見え隠れして一番印象的な作品だった。
    巻末の編訳者あとがきが1の時から楽しみにしていたが、「スペシャリスト」がThe big emptyの名で短編映画になっているようでyoutubeでも公開されてるようだ。(→先ほど確認したら著作権の申し立てがあったようで現在は削除されていました、残念。)こちらも印象に残る作品です。
    変愛と言いつつこれは純愛なのではという話も1より多いかなとも思う。

    1の時も強く感じたのだが、原作を読むと英語の勉強になりそうだなと個心的に思いましたがどうでしょうね?

  • 奇妙な設定で、示唆に富んだ「変愛」の話ばかり集めたアンソロジー。次は何が出てくるのかわくわくした。
    以下、特に好きだった作品。

    ・彼氏島 ステイシー・リクター
    冒頭のギャルの1人語りが、急に「船のみんなが死んじゃったことについては、ほんとに気の毒だと思ってる。」とギアチェンジするところから、グッと引き込まれた。
    主人公が「おおぜいの彼氏志願者に囲まれて暮らしてる社会」が嫌になってしまう状況に、今選ぶ側にいる男性も、実際幸せなのか、女も支配階級になったら男を虐げてしまうのか、と考えさせられた。

    ・スペシャリスト アリソン・スミス
    寂しさとか、孤独のような気持ちを、「体の中にブリザードの吹き荒れる広大な空虚をもつ娘」というぶっとんだ設定に落とし込んでいるのがすごい発想すぎ。
    1番伝えたい痛みについての質問をやっとされた時、アリスが答えられないのが、辛さを人に伝える難しさを暗示しているようでよかった。

    ・ヴゥードゥー・ハート スコット・スナイダー
    1の時から、この人の作品が1番好き。
    広い家の中での、恋人とのトランシーバーでのやり取り、裸で螺旋階段を上がり、青空を背景にしてのメイクラブ、恋人と託児所の当番をした時の、トンネルの中での一幕と、鮮やかな映像とともに心に残るシーンがたくさんある。
    この人の作品をもっと岸本さんに翻訳してほしい!

  • 面白かった!おぃおぃ、そっちに行っちゃうのかよ。な「妹」ニヤニヤさせられた「私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ」後半に、しまった!これ、変愛小説だったと期待を裏切られる捻りの効いた「ヴードゥー・ハート」が、お気に入り。

  • 装画/金氏徹平
    装幀/名久井直子

  • 1より評判控えめですが、なかなかどうして「私が西部にやってきて、そこの住人になったわけ」にはやられました。
    訳が分からないし凄いシュール、だけど最後はなんか心温かくなった。不思議惑星キンザザみたいだ笑
    他に「歯好症」も良かったけど、全身に歯が生えまくる妻をひたすら愛し続ける夫の話なんだけど、これよりもっと凄い愛の話あるかと考えたら、あった。チェルノブイリの祈りに出てくる、消防士の妻だ。現実は小説の斜め上をいく。

  • 変愛二作目。こうも変なことを思いつく人がいるもんなんだね。どれも面白かったが、ヴードゥ・ハートが一番好き。一作目でもこの人のものが一番好きだった。飛行船に乗って行ってしまった恋人をずっと追いかけていく話。どこか不思議ででも輪郭があって、この人の別の作品も読みたいな。

  • 今回も良かった。変わったグロテスクで愛と悲しみのある短編集。こんなストーリーをよく思いつくなぁと思う。スペシャリスト/私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ/ヴードゥー・ハート/歯好症/シュワルツさんのために、が良かった。歯好症とシュワルツさんのためにはグロテスクなのに美しい物語。

  • 【選書者コメント】やっぱり誤字ではない。でもなにかがおかしい。

  • 変愛小説の二弾目。
    前回はちょっと片寄った不思議な「物」に恋する話が多かった気がしたが、今回は恋愛自体は変ではなかった。確かにどこかはおかしいのだけれども、静かで波のない海を漂っているのにそれが通常だと思わせるような…どことなく孤独感が感じられた。
    一弾目より好きかもしれない。
    「人類学.その他100の物語」より
    一番好みだ。

  • 2冊目も素敵に変な恋愛小説だらけで、うれしい。
    1発目は、ギャルが難破してイケメンだけの孤島にたどり着く、という「彼氏島」(ステイシー・リクター)。逆女護ヶ島かい!って突っ込みたくなる妄想設定のなかでフェミニズムの問題を追求してるのが、ナイスすぎ。
    友人の妹と脳内恋愛をしているはずだったら、いつのまにか兄貴が・・・というミランダ・ジュライの「妹」は、老人同士の話であるところが味噌。
    「人類学・その他100の物語」(ダン・ローズ)は、いかにも岸本さん好みらしい、シュールな極短小説。
    個人的には、レナード・マイケルズの「ミルドレッド」が拾いものだった。悪態まじりの優しいモノローグと、場面の転換の妙。ときおりシュールな描写を含むそっけない場面の中から、切なさがたちのぼってくる。

全36件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

岸本 佐知子(きしもと・さちこ):上智大学文学部英文学科卒業。翻訳家。主な訳書にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、リディア・デイヴィス『話の終わり』、スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』、ショーン・タン『セミ』、アリ・スミス『五月 その他の短篇』。編訳書に『変愛小説集』、『楽しい夜』、『コドモノセカイ』など。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』(講談社エッセイ賞)、『なんらかの事情』、『死ぬまでに行きたい海』など。

「2023年 『ひみつのしつもん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸本佐知子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×