お父やんとオジさん

著者 :
  • 講談社
4.02
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本棚登録 : 216
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (634ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162449

作品紹介・あらすじ

「心配するな。何とかしてみよう」母は、泣き崩れて弟の救出を父に懇願する。失敗すれば、その場で捕縛され、射殺されるかもしれない。だが、父は平然と言った。朝鮮戦争のさなかの父と母とオジさんの話を聞いて、ボクは衝撃を受けた。かれらの強靱な精神力と勇気、限界まで頑張った人間の姿に。家族の困難が問われる時代にむけて贈る、著者渾身の力作小説。

感想・レビュー・書評

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  • 家族を救うために単身戦場をひた走る男。作者の父親をモデルにしたこの小説は、半島事情がきな臭い今、ぜひ読んでおきたい小説のひとつです。

    作者の伊集院静さんが自分の父親のことを描くのはこれから近いうちに紹介する『海峡』三部作以来なのですが、書いた本人が
    『これは面白い。だけど本人が面白いといったものはあんまり面白くない。』
    というようなことをおっしゃっておりましたが。この小説。ものすごい分厚いです。最初にこれを見たときには正直読めるんかな、とさえ思いましたが。そんなことは一切気にならずに、一気に読み終えてしまいました。

    物語は戦争末期から高度経済成長の直前あたりで。伊集院さんの父親がモデルである高山宗次郎が朝鮮戦争で真っ二つになった半島を部隊に妻の要子のたっての頼みで彼女の弟とその家族を救いに戦場にただ一人向かっていくものです。こういってしまうとそれまでなのですが。宗次郎たちが日本にやってきた経緯や妻の要子との出会い。事業の拡大の箇所を見ると、一人男ののたどった人生が見えてなるほどな、とうならせました。

    中盤から後半は宗次郎が戦場となった朝鮮半島での描写になるのですが。これがまた悲惨でしてね。同じ民族が殺しあうというのはむごいことだと思わずにはいられませんでした。結末は読んでいただくとして、今、また半島で火種がくすぶり始めておりますので、彼らの今後の行く末を見守っていくためにも、この本はひとつの道しるべになってくれるのではないのでしょうか?

    • hahaさん
      早速、読んでみたいと思います。
      早速、読んでみたいと思います。
      2011/07/24
    • 有坂汀さん
      suzukiさま

      コメントありがとうございました。伊集院先生の「家族の物語」は理屈ぬきで読む人間の心をわしづかみにするものがあります。
      suzukiさま

      コメントありがとうございました。伊集院先生の「家族の物語」は理屈ぬきで読む人間の心をわしづかみにするものがあります。
      2011/07/27
  • 同族民同士での戦争は惨い。大国間に翻弄される小国はつらい。人間の本性は醜い。
    そんなことより、どうだ、ぼくのお父やんは凄いだろう!というお話かな。

  • 凄い。
    また朝鮮戦争について、あまりに知識がないことに気づかされました。

  • 『生きることの苦しみと誇り、家族について考える。』

    週刊ポスト男前コラムの集大成
    ベストセラー『大人の流儀』でご存知、
    伊集院静氏の自伝的小説
    大満足の一冊でした。

    生きることの難しさや苦しみを考えながら
    同時に、生きてこれたこと
    そしてこれからも生きていけることを
    心からありがたく感じる

    読中はそんな感情に満たされていました。

    生きていくことは苦しくそして何より誇らしいことだと思えます。

    特別で最高の一冊です。

  • 978-4-06-216244-9 627p 2010・7・5 2刷

  • 作者の父親がモデル(お父やん)。日本が終戦を迎え、朝鮮の人達は祖国に戻るか日本に残るか選択が分かれた。作者家族(お父やん)は日本に残る事を選択したが、母親の父母と弟は朝鮮へ帰って行き、朝鮮では祖国を分断する戦争へ・・・。
    その朝鮮へ、義父母&義弟を助けに単身乗り込んだ父。
    作者は父親の事を『乱暴で粗暴なだけ』と思っていたが、激動の時代に家族のため、命をかけて戦った父親の姿を知り、父親への思いが変わって行く。

    家族のために、自分のすべてを捨てる覚悟が出来るか・・・。そんな事を考えさせられた。
    また、親の思いや親の本当の姿は、子供には伝わらないものなのかも。子供自身が成長し理解していくのだろう。自分自身も、少しずつ、親の事が理解できてきたような気がする。

  • 伊集院静さんの本は昔読んだ、機関車先生以来である。私の頭の中ではイコール夏目雅子に妻子をすてての不倫愛の良くあるパターンであり、小説家の前に人としてどうなのか?と思ってました。この小説も父親の凄さを伝えるための意味でしか理解できず、あの当時の歴史に翻弄される人びとを最も描くべきてはなかったか?ストーリーも一本調子だし、行け行けどんどん

  • 長い。自伝小説。山口の三田尻と朝鮮半島を舞台に話は進む。太平洋戦争後、日本に残った主人公の家族と祖国再建の為に半島に帰った母の両親と弟。学問はないが生きる力は誰よりもたくましいお父やんと、学問ができ優秀ではあるが理想を追い求め共産活動に傾倒していくオジさん。オジさんは進行してきた北の軍隊に徴用され兵士となるが、その後隊を逃げ出す。村に帰り村民の目から逃げて穴に隠れているのを、日本から命がけでお父やんが救出に行く。日本を舞台にした所は、情景が目に浮かびどんどんページが進むが、話が朝鮮戦争最中の韓国にうつるととたんにつまらなくなる。戦争を描くのが下手なのかなぁ。

  • 途中途中泣きながら読んじゃいました。

    自分の祖父・祖母と重なって。。。。。

  • 少年はひとりで日本に渡り、働き続け、家族を持った。戦乱、終戦。妻の弟・吾郎は家族と祖国のある半島に帰る。5年後、朝鮮戦争が勃発。吾郎は戦乱に巻き込まれる。過酷な潜伏生活を強いられた弟のために、妻は夫に救済を求める。戦火の中、夫・宗次郎は義弟を助けに戦場に突進する。救いを求める弟。生還を祈る妻と家族。戦火を走る主人公たち。
    家族の絆を命がけで守り抜く父の姿を描いた、伊集院文学の原点。
    新たな代表作というべき、自伝的長篇小説の決定版。

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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