猫のあしあと

著者 :
  • 講談社
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062143226

作品紹介・あらすじ

ベストセラー「猫にかまけて」待望の第2弾

それはそれで別にいいんだけれども、君自身そんなことでいいのか? とエルに問いかけるとエルは驚愕したようなまんまるな瞳で私を凝視し、それから、ぴょんかぴょんか、跳びながらやってきて私の手に噛みついた。――<本文より>

感想・レビュー・書評

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  • 町田康さんの猫エッセイ第2弾。
    著者は自宅で2匹の猫を飼っていますが、本作からは保護団体から預かることになった猫たちを仕事場に住まわせることになりました。
    保護される前は野良猫だった彼らは、猫エイズやウイルス性の白血病に罹っていました。
    試行錯誤しながら猫たちと暮らす著者の様子を読みながら、この猫たちは町田さんのところへ来られてよかったなぁ、と思わずにはいられませんでした。

    今回も猫と暮らす喜びだけでなく、つらい別れも綴られています。
    この本を読もうと決めた時点で、私は間違いなく泣く、と確信していましたが、本当にボロボロ泣きました。
    「待ってくれ。俺を置いていかないでくれ」という章題が悲痛に響くのです。
    「一緒に生きていた。いまは生きていない。」という二つの短い文章に胸が苦しくなるのです。
    これを書いている今も、思い出して涙が滲んでいます。

    著者は、動物を飼うということは命を預かることだ、と書かれています。
    「彼らの命を預かるからには、弱くて小さな生き物から何かを得ようとする前に、我々よりはるかに寿命が短い彼らが、幸福で健康な生涯をまっとうするために我々がなにをできるのかをまず考えるべきであると思う」と。

    読み終えたあと、我が家の猫さまが今まで以上に愛おしくて仕方なくなりました。
    最近は、必要以上に「いいこだね」「かわいいね」「うれしいね」と話しかけてくる飼い主に、「急になんなんだ…」と少しうるさそうな顔をしています。
    でも、あなたがしあわせだなぁと感じながら毎日を送ることが、私のしあわせなのですよ。

  • 猫エッセイ第二弾。
    文章がひょうきんな感じで面白い。
    預かりボランティア?をやってらして、無限に受け入れているような感じがする。忙しい仕事の傍ら、すごいな。

    ゲンゾーとの別れは、涙無しには読めない。三種混合ワクチンが原因(著者の推測)で死んでしまうなんて…怖すぎる。

    猫の命は猫自身のもの。だから、飼い猫もまた預かり物であり大切に扱わなければならない、預かった時と同じ状態で或いは利子をつけて返さなければならない、というあとがきにハッとさせられた。

  • 「猫にかまけて」の続編。

    ねこたちにかける町田さんの愛情は前作と変わらない密度で、ちいさなねこたちが必死に生きる側で人間って何が出来るだろうと考えさせられる一冊。

    前作に比べると、率直に言ってつらい。

    ねこたちが死んでしまう描写が多いからだ。
    それは嘘じゃないから、省くようなものではない。
    楽しいだけのウケればいいだけのものじゃないから。

    だけど胸が痛くなる。

    生きてる間に素直になりなよ。
    そうねこたちに言われた気がして…。

    すきなひとに素直になれないのが、
    すごくばかげたことだと思った。

    そしてもっとばかなことに

    「ごめん、意地はって…ぎゅっとしていい?」

    と言えないばかりに、伝えるのを後回しに
    この文章を書いている。

    泣きそうになる前に、伝えに行こう。
    愛猫との日々もだいすきなひととの日々も、有限だ。

    こんな大事なことをこんなに愛情深く、かわいく
    伝えてくれるねこ。

    町田さんじゃなくってもぎゅってしたくなる。

  • このシリーズを読めばきっとまた泣くんだろう、、、と思ってやっぱり泣きました。シリーズ一式母にも読ませました。母は叔母に読ませたみたいです。

  • 2013年7月25日
    町田さんの猫エッセイは、おもしろい所では声を出して笑ってしまうし、悲しい所では胸がえぐられるような気持になる。

  • 2014.2/26 町田さんの硬軟あわせ持った文体と思想に一笑一泪させられまくり。ゲンゾーのくだりはキツかったです( Ĭ ^ Ĭ )猫を保護するということ、彼らの生命は彼ら自身のものであるということ、飼い猫であってもそういうこと。心します。

  • 前半は猫たちと著者の生活がユーモラスに描かれる。猫と暮らしたことのある人なら共感する部分も。
    闘病と別れが描かれる後半は悲しく、つらい。

  • 平成16年9月から平成18年7月まで、『FRaU』 に連載された、愛猫エッセイ第2弾です。ニゴ、シャア、トラ、ウメチャン、エル、ゲンゾー、奈奈と暮す日々を綴って町田節が炸裂します。
    抱腹絶倒、おかしくて笑い転げているうちに、涙がとまらなくなり、やがて悲しい...
    「町田語録」 から
    他を助けるということは実はたいへんなことで自分を滅ぼす、自分を無にする覚悟がないと助けられない。自分は安全な場所にいて他を助けることはできない。水に溺れている人を助けようと思ったら自分も水に溺れるつもりでないと助けられない。それを、俺が助けようとしているのにその態度はなんだ、などというのはバカの極みである。「もう十分にたのしませてもらったから」、「引越しをするから」、「子供が生まれるから」、「子供が飽きたから」、「皮膚病になったから」 など、理由にもならない理由で他に頼るものがない動物を動物愛護相談センターに捨てに来る人...動物を飼うということは、いわば他の命を預かるということで、自分のものなら粗末に扱ってもよいが、他から預かったものは大事に扱って、いずれお返ししなければならない。

  • 2015/07/03 読了 泣いた。
    ウメちゃんの死 ゲンゾーの死 エルの奇跡の回復。
    うちにもエルという猫がいる。乳癌だ。奇跡を祈っている。最後のお医者さまの話がとても参考になった。

  • ゲンゾーの死は町田康にとってペットとしての猫の死じゃかったんだと思うとなんとも言葉が出ない。町田康の本を読んだのはうちの猫が死んじゃってから。また、猫と暮らしたいと思っていた。死んだ猫は野良猫だったから、触ったり撫でたり、膝の上でゴロゴロみたいなことはほとんどさせてもらえなかった。猫にしてみえば単なる同居人か召使いくらいにしか思っていなかったかも。それでもまた猫と暮らしたいと思うのはどこかで癒されていたのかもしれない。でも、ゲンゾーを知って猫を飼うのはもうちょっと考えようと思う。猫にオイラは何を期待してるんだろって、オイラ弱ってるのかなっていう自分の頼りなさを猫に乗っけるみたいだという抵抗感がある。それからあとがきにあった「我々よりはるかに寿命が短い彼らが、幸福で健康な生涯を全うするために我々が何をできるかをまず考えるべきであると思う」という言葉、小さな生き物に甘えようとしているオイラにはまだ早いかなと反省。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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