マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062140041

作品紹介・あらすじ

謎に包まれた非合法集団とJR東日本の抜き差しならぬ関係。取材をすれば、巨大な暴力が牙を剥く。日本社会最大の禁忌に斬り込む超弩級のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • JR主要労組に革マル派が蔓延る問題。それを掲載した週刊文春のキヨスクでの販売拒否。週刊文春はJRにお詫びし、以降マスコミのタブーに。革マル派は組織破壊行為と決め付けて、反対勢力を潰しにかかる。置き石、妨害、運転士狩り。本著は、この闇に迫ったノンフィクション。しかし、本著を読んでも結局この問題が解決されたのか分からない。ダイヤが乱れまくっただろう、当時の記憶も薄い。でも、今は?まだ続いているなら、暢気にJRに乗っていられない。トラウマになりそうな一冊だ。

    早速ネットで検索してみる。すると、割と最近の記事を発見。2018年末時点で組合の脱退者は計3万4500人にのぼり、残る組合員は1万3000人弱。かつての動労、JR東労組委員長にして新左翼「革マル派」の実質的な指導者と見られる労働運動家・松崎明の死から8年余り。ようやくJR東日本が「JRの妖怪」と呼ばれた松崎の〝呪縛〟から「完全に解放される日」が近づいてきたのだろうか、と。んん、まだ完全ではない?

    権力者に私物化された組織が力任せに、集団の論理を押し付けてくるのは恐怖だ。その抗争に民間人が巻き添えをくらう。コンプライアンスだなんだと厳格化しているこの時代に、まだこのような事があるのだろうか。暴力性を資本力に言い換えるなら、支配の構図は大なり小なり変わらず、か。

  • 私が愛読する週刊誌「週刊文春」が、キオスクの店頭から
    消えた時期があった。同誌が掲載した「JRに巣くう妖怪」を
    問題視したJRによる販売拒否だった。

    何が問題だったのか。そう、「JRに巣くう妖怪」とは、JR東
    日本労組を牛耳った元委員長・松崎明のことである。

    JR東日本は言論弾圧ともいえる「週刊文春」販売拒否という
    強硬手段に出たのか。それは、松崎氏が革マル派の最高幹部
    でもあったからだ。

    正式名称は日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派。
    その最高幹部が、JR東日本の労働組合を自在に操るばかりか、
    経営や人事にまでも介入する。

    JR東日本にしたら、最大のタブーだったのだろう。だから、
    販売拒否という手段に出たはずだ。記事がでっち上げであるの
    であれば、他の手段があったはずなのだから。

    「週刊文春」は屈した。巨大な販売網を、長期間止められては
    雑誌存続さえ危うくなる。

    だが、屈しない男もいた。本書の著者である。舞台を「週刊現代」
    にかえて、JR東日本の最大タブーに切り込んだのだ。

    もうねぇ、唖然とするしかない。他組合所属の社員と芋煮会を
    したり、キャンプに行っただけでつるし上げられるって何?
    同じ労働者同士じゃないの?

    そりゃ、国鉄時代から国労vs動労の諍いはあったけどね。しかし、
    国鉄分割民営化の裏で、革マル派を多く擁する組合が巨大になり、
    JR東日本最大のタブーになっていたなんてね。

    妖怪がいかにして妖怪になったか。綿密な取材をもとに書かれた
    良書だ。

    松崎氏、国の内外に複数の別荘を所持し、専用の高級車を乗り回し、
    「ゴルフは平日に限る」とか言ってるし…。ブルジョアかよ。

    本書で取り上げられている「浦和事件」なるものがある。この事件の
    動画をYouTubeで見たが、心底、怖かった。革マル派の組合員に
    とっては、利用客の命なんてどうでもいいんだな。自分たちの組織
    を守るのが第一だから。

    「週刊文春」のキヨスク販売拒否から、私はなるべくJRを利用しない
    ようにしている。幸い、私鉄・東京メトロを乗り継げば大抵のところへ
    は行けるから。

    本書は2007年の発行。その後、JR東日本で陰に陽に権力を振るった
    松崎氏はなくなっている。JR東日本は、妖怪の呪縛から逃れられる
    のだろうか。

    尚、一連のJR東日本労働組合問題の様々な記事を読んでから、
    JR東日本で重大インシデントが起きると「すわっ、革マル派の
    仕業かっ?」と思ってしまう私の脳は、かなりいかれている。

  • 異なる考えを持つ者は排除され、目的のためには如何なる活動も許されるとする様な主義主張は、本来ならば全体の支持を受けるものでは無いはずであるが、歴史上において実際そうとも限らないのが、人間社会の恐ろしい所である。

    自ら進んで読み始めたものでもなかった事もあり、革マル派と国鉄の関係とか、よく分からない所は分からないままにして読み飛ばした。

    一部関係者の逮捕迄で終わっているため、勧善懲悪的な終わりを迎えられない。この手の本の難しいところだろうか。この著者による第2弾はあるのだろうか?

    週刊誌の連載を1冊の本にした場合はどうしても内容の繰り返しが多くなってしまい読み難くなる。単行本化の際には繰り返し部分は切り取っても良いのではないかとも思う。

  • なんとかならんもんかね。

  • JR東日本とその労働組合を牛耳る革マル派の話し。
    まあ、正直に言って、21世紀になってもこんなことをやっているのは愚の骨頂だと思いますが。もはや左翼革命でもなんでもなく、自分たちの保身や利権のための組織防衛をやっているだけで、鉄道会社として最も重要な安全輸送という観点はどこに行ってしまったのやらと感じます。
    巻末の早大奥島元総長のインタビューは、短いですが読み応えがありました。奥島氏が銅像の前で吊し上げを食らっているのを実際見た身としては、感慨深いものがありました。
    組織に巣食うものを排除するのは、いかに大変か、改めて感じました。

  • ふむ

  • ★革マル派の資金源なのか★JR東労組からの脱退者が相次いだ背景を描いた「トラジャ」を先に読み、2007年の本書に戻ってきた。
     労働組合の排他性は理解できないほどひどい。ほかの労組の人とキャンプに行っただけで糾弾される。それは身内に敵を作ってたたき結束力を高める革マル派の手法という。JR東の労使が癒着してここまでの組合の横暴を許したのはもちろんでJR東の経営という意味で問題は大きいが、それ以上に組合費が革マル派の資金源になっていたというのが恐ろしい。松崎氏が死亡し経営側も当時の関係者が一線を引くまで、経営側も30年間この関係を絶てなかったというのが改めてすさまじい。
     本書は単にJR東労組の取材をするというだけではない。革マルから襲われる不安を抱えながらだけに、著者の執念が素晴らしい。

  • 極めて重たい一冊。
    感想など、とても書けない。
    この本に書かれていることは、一部の見解と推定を除いて、真実である。

  • 1

  •  「革マル派・・・?」それって、我々生まれるずっと前にすでに終わった話だよね、今はもう戦後じゃないし。と、思ってました、読むまでは。
     国営企業が民営化していく中で、利便性と保身とヤクザ的なユスリ作戦で、JRが乗っ取られていく過程と理由がわかりました。
     どんな企業にも、利権と派閥と弱みはあるけれど、なるはやで正直に、透明性がある経営をしないといけないな、と。そして、消費者は厳しい目と寛容性をもたないと。

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著者プロフィール

西岡 研介(ニシオカ ケンスケ)
ノンフィクションライター
ノンフィクションライター。1967年、大阪市生まれ。90年に同志社大学法学部を卒業。91年に神戸新聞社へ入社。社会部記者として、阪神・淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。 98年に『噂の眞相』編集部に移籍。則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル、森喜朗内閣総理大臣(当時)の買春検挙歴報道などをスクープ。2年連続で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞を受賞した。その後、『週刊文春』『週刊現代』記者を経て現在はフリーランスの取材記者。『週刊現代』時代の連載に加筆した著書『マングローブ――テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)で、2008年、第30回講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『スキャンダルを追え!――「噂の眞相」トップ屋稼業』(講談社、01年)、『襲撃――中田カウスの1000日戦争』(朝日新聞出版、09年)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(松本創との共著、講談社、12年)、『百田尚樹「殉愛」の真実』(共著、宝島社、15年)などがある。

「2019年 『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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