イトウの恋

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 183
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062127776

作品紹介・あらすじ

「旅の時間は夢の時間」とあの女は言った。人生はいつも誰にも不可思議なもの-。ヴィクトリアントラベラーに恋した男の手記をめぐる、心暖まるラヴストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新前後の横浜に生きた通訳の少年イトウが、晩年回顧録として残した書付が見つかった。
    中学教師の久保は、途中で終わるその書付の続きを求めて曾孫であるシゲルに会いに行く。

    あらすじを見た時に、あまり好きそうな話ではないかも、と思いつつ、著者の作品だからと手に取りました。
    その印象とは大いに違い、とても興味深く、面白い、いいお話でした。

    イザベラ・バードも伊藤鶴吉の名前も知りませんでしたが、ここから色々調べ、興味の対象となりました。
    これが読書の醍醐味。
    イザベラ・バードの日本奥地紀行もいつか読んでみようと思います。

  •  歴史を元にして忠実なるフィクションを描くのが作者の得意分野で、少々ワンパターンかとも思っていたが、今回は第二次大戦ではなく明治初期が舞台。
     亀吉の出身である寿町周辺は語るには多すぎるので割愛。近年は日雇い労働者や身寄りの無い高齢者、ドヤ街としての印象が強い。
    本作では横浜開港後が描かれているので、少し今とは印象が違うように思えた。
     今でこそ観光旅行業が確立しているが、その前の時代に旅行記作者に個人的な従者、お供として付いた通訳者からの視点、そして思慕恋慕。
     それを現代の子孫(と教え子)が解明していくというお話。解明しきれない部分もあり、謎は謎のままですが、それでも読後感は良好。
     文体はちと読みにくいけど、構成や描写が海外文学を読んでいるかのよう。しかし比喩だらけの読みにくさみたいなものは無いのが良し。

     本筋と関係ないけど、七恵さんの両親が熟年離婚して母親が慰謝料貰ってるというのは校閲のミス?不貞や暴力や侵害があるわけでもなく、慰謝料に該当することは無いと思われ。もちろん、子供も成長してるので養育費でもない。『財産分与』の間違いでは?
     あと、PCでパワポが使えるのに音声はラジカセっていうのは違和感。2004年の設定で音声ファイルはPCで扱えたはず。 当時の中学生なら音声ファイルが扱えてパワポが無理の方が普通に思えるけどなー。
     この二点がすごく残念。

  • 中島作品二つ目。
    女性冒険家I・Bと伊藤亀吉の淡い恋物語。当時の時代背景が丁寧に描かれていて亀吉と一緒に横浜の街を歩いている気分になった。なかなかの秀作。
    でも私的にはシゲルと久保耕平の今後の展開が気になるな~。

  •  イザベラ・バード『日本奥地紀行』に記されている通訳イトーに想を得て書かれたフィクション。
     イトウの手記、手記をみつけた中学教師、イトウの子孫の女性の三つの視点から記されている。明治前期という時代のせいか、手記という体裁からか、ドラマチックでセンチメンタルなイトウ部分と、ドラマチックになりそうでならないコミカル寄りな現代部分。とてもバランスのとれた構成だと思う。出会いの不思議と時の流れる切なさについてじんわり感じ入る。

  • 歴史をベースに書かれたフィクション。イザベラ・バードと伊藤鶴吉がモデル。
    高校の歴史教師がイトウの書いた記録(IBへの思い)の前半を見つけ出し、その後半を郷土部の生徒1名と、イトウの子孫である劇画作家の女性と探していく物語。
    読んでいてバランスのいい小説だった。IBとイトウの旅や、当時の横浜や北海道、アイヌの様子は現実もこんな感じだったのかなと興味深かった。加えて登場人物はそれぞれにかたくなで個性が強いのだけれど、どこかお茶目で好感が持てた。
    イトウの子孫にあたる女性が原作を書いていた劇画漫画『ビースト海峡』を読んでみたくなった。

  • 均ちゃんの失踪がすごーくよかったのに、ほかの作品に全然ときめかない。これもおもしろそうでものたりない。

  • 「『女の業』ってなんなのよ。それが私は気持ち悪いの。それ、なに? そんなもん、ほんとにあるの?」

    開国後まもない日本で、東北から北海道を旅した英国女性と彼女に恋した日本人通訳の話を縦軸に、現代日本に生きる通訳の子孫周辺の話を横軸にした小説。
    幾らでもロマンティックに出来る素材だけれど、あえて真っ直ぐそちらへは行かない(「小さいおうち」でもそう感じた)。
    女性、外国人などへのなかなかシビアな偏見が散らばせてあり、読者がつまづくようになっている。
    一つの物語として綺麗にまとまらないので、フィクションは出来過ぎなくらいの美しさが好きな私には少し物足りないけれど、作者の姿勢はこれはこれで好き。
    しかし結局どうやって先生の家に日記が来たのか…そこは明かして欲しかったなー。

  • 恋か‥
    文章のリズムが好き。

  • イトウの手記は、最初読みにくかったですが、途中から引き込まれました。読んでいて、なんとなく小川洋子さんっぽさを感じました。

  • 図書館から借り出し二度目。
    バードの日本奥地紀行を読んでから再読。
    あらすじは覚えていたけど見え方が違って新鮮。
    こちらだけでも面白いけど、巻末に紹介されている資料
    バードの紀行書も読む事をお勧め。
    個人的にはあちらを先に読んでからの方がいいかな?
    こちらはあくまでも創作なので。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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