裔を継ぐ者

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062120203

作品紹介・あらすじ

はるか遠い昔。月の神を奉じる縄文びとと、日の神を崇める弥生びと。ふたつの文化が交錯したときに激烈な争いが起こった。その戦乱の世に和平をもたらさんと、ふたりの少年が立ちあがり、やがてその甲斐があって平和への礎が築かれた。しかし、その絆が結ばれてから五百数十年後、人々は我が祖であるかの人々の思いを受け継ぐすべをなくしていた。そのとき新たなる運命の子がおりたつ-。野間児童文芸賞受賞の『月神の統べる森で』に始まる長編四部作、外伝登場。

感想・レビュー・書評

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  • 月神シリーズ番外編。
    本編から500年ほど後の話。
    「神もカムイも大嫌い」とひねていた子が、試練を乗り越えて、神とカムイを敬う巫女的存在になる。変わりようがすごくて、びっくり。

  • 本編を読んでのこの巻だとは思うけれど、この巻が一番良かった。素晴らしかった。

    五百年後の世界という本編が薄れいく時代の設定。
    生意気で小憎たらしいけれど、現代にも繋がる現実味のある主人公。自分もポイシュマに導かれ、一緒に成長していくように感じられた。
    そして、満たされていく者に、受け継いでいくということの難しさと大切さが、身にしみて感じられる

    この後に、もっと忘れ去れていく時代やってくることを思うと、哀しくなる。
    それでいて、別世界では無く、後の歴史に、そして今に繋がっていくことを予感させて、胸が高鳴りもする。

    しかし、もう出版されていないのが残念なシリーズ。
    名作の部類だと思うのだけどなあ。

  • このシリーズの中で外伝である今作が一番好きです。
    サザレヒコの駄目さかげんがあってこそカムイの世界の清らかさが際立っていたと感じました。
    学生時代におすすめのシリーズ。

  • 腹立たしいほどに自分勝手で、なんでも人のせいにする、いやな主人公。ポイシュマを見てからだとそのぬくぬくとした高慢さに嫌気がさします。
    しかし、山に放り出されたときに自分は守られていたことを知り、ポイシュマに教え諭されながら成長していくのがとてもうれしい。
    他人に自慢することが誇りではない、というポイシュマの言葉は刺さった。
    相手を見て、敬意を持つ。しかられたくないから謝るのではなくて、申し訳ないと思って謝る。
    ありがたい、という気持ち。頂いている、と言う気持ち。
    忘れてはいけない。

  • 「ジャケ買い」みたいな感覚で図書館で借りていたシリーズ。

  • 「月神・・・」シリーズの500年後の外伝。
    モノとか、いのちとか、大切にしなくてはいけないと
    わが身を振り返って反省

  • ポイシュマがオオモノヌシとなって500年以上の歳月が過ぎたころ。
    ポイシュマの血脈の末裔として、またたぐいまれなる才能を内包して生まれたものの、どうしようもなく捻くれた子供に育ってしまったサザレヒコは、自身の犯した罪を贖うため、ムラを追放される。
    物語の序盤はサザレヒコの性格の歪みっぷりに嫌悪感ばかりが湧きあがりページを繰る手が遅々として進まなかったけれど、サザレヒコの口から懺悔と感謝の言葉が自然とあふれたときから、物語は一気に盛り上がりを見せる。

    他の命をいただいて、此の命は繋がっていける。
    現代の私たちが、すぐに忘れてしまうこと。
    耳と、胸が痛い。

    東逸子さんの挿絵が、月神シリーズの中では、一番多く感じられて、
    それだけでも、やっぱり読んで良かったな、と思えるのだった。

  • 現代の日本では「自分が生きるということ」、「生きるために食事をしているということ」、「食料を得るために他の生物を殺すということ」が1つの連環にあることを忘れがちで、「生きること」は「生きがいを得ること」だと考えたり、「食事をすること」については、ありがたいことに飢えとは無縁の食糧事情であるために食事を抜いたり食べ残しをしたり残飯を捨てたりお菓子で済ませちゃったりということを無意識にやりがちです。  食料品に至っては工業製品なみの「モノ」だと考えがち(食料となるために失われた命があることには思い至らない)なわけで、そういう意味ではこの物語の主人公サザレイシ以上に甘ったれの自分本位な人間だらけなのが今の日本と言っても過言ではないような気がするんですよね。

    病弱で体も小さいということで、親兄弟から守られるようにして生きてきたサザレイシの最初の頃の生き様は現代人の甘ったれ根性・身勝手さをこれでもかっていうぐらいデフォルメして投影されているので、正直なところ読んでいてあんまり心地よいものではなかったりもするけれど、実はそれは我が身を映す鏡みたいなもの・・・・・と思い当たらないでもなくて、穴があったら入って隠れたいような気分になります。

    (中略)

    KiKi 的にかなりツボだったのは、説話というものがどのように語り継がれていくのか(同時に忘れられていくのか)というあたりの描写で、大学生ぐらいの頃にはやたらと説教くさい日本の民話、昔語りというものにどうしても興味が持てなかったけれど、今となってみると本当に大切なもので守り続けていくべきものなんだなぁということが実感できたこと・・・・でしょうか。  サザレイシがオオモノヌシから賜った「真名(まな); 幼名とは別の大人としての正式な名前」が「ユカラ」というのも素敵でした。  ユカラと言えばアイヌ民族に伝わる叙事詩の総称です。  金田一京助先生によれば、ユカラは「人間のユーカラ ≒ (英雄叙事詩)」と「カムイ・ユーカラ ≒ (神謡)」の二種類に分けられるとのこと。  KiKi の本棚に眠っている平凡社ライブラリーの「カムイ・ユーカラ」を読むのが楽しみです。

    (全文はブログにて)

  • 番外編の位置づけながら、個人的にシリーズ中一番好きな巻。
    忘れないこと、語り継ぐことはかくも難しいのだと思い知らされます。

  • おもしろかった。
    月神シリーズの続き。

    そーいやカムイって人の姿で現れるんだっけ、と思いだす。
    相変わらずイラストが美麗。

    サザレヒコ、最初ちょっとイラつきました。
    嘘つく主人公とかありえん~、とか。
    あまったれすぎる~。とか。
    私は主人公には結構かっこよさとか、憧れとかを持って読みたい方なので
    でもあとでシクイルケが言っていた通り、そーゆー卑怯な部分とかも
    含めて、全部まとめて人間なんだろうなあ。
    全て必要なことだった、のひとことがなんかじーんときた。

    あらゆるものに命があって。
    生きるために自分のものにした命に感謝を忘れないでいなければ、
    と思わせてくれる。
    荒川さんの銀の匙でも思ったけど、
    そーなんだよなあ、その現実を、もっと実感として生きないと、と思う。


    本当に伝えなければならない物語が忘れられてしまうってゆーのは
    現実にもいえることで、
    ユカラのように伝える存在の大切さってゆーのはすごく感じる。
    語り継がねばならないこと。
    過去の出来事、うまれた犠牲、過ち、歴史問題にしても、
    原発にしても基地問題にしても、
    美談にするのでなく、いいとこだけ声高に叫ぶのでなく、
    あったことをそのまま伝えること。
    簡単なようでこれほど難しいことはないのだろう。

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