愛と幻想のファシズム(上)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062014311

作品紹介・あらすじ

1990年、中南米にデフォルトの波が起こり、世界経済は恐慌へと突入。サバイバリスト鈴原冬二をカリスマとする政治結社「狩猟社」には、官僚、企業家、思想家、法律家、学者、テロリストが集結し、社会的ダーウィニズムを実行していく。良識派は彼らをファシストと呼んだが、「狩猟社」は過激派をつぶし、労組のストを破壊し、要人にテロを加え、反対派を廃人にしながら、一気に日本の中枢を獲ろうとする。そんな彼らの前に、恐慌後秘密結成された多国籍企業集団「ザ・セブン」が徐々にその恐るべき姿を現わす。危険な予兆をはらんだ衝撃の近未来政治小説。

感想・レビュー・書評

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  • トウジとケンスケが出ているとは知らなかった!

  •  作品解説:1990年、中南米にデフォルトの波が起こり、世界経済は恐慌へと突入。サバイバリスト鈴原冬二をカリスマとする政治結社「狩猟社」には、官僚、企業家、思想家、法律家、学者、テロリストが集結し、社会的ダーウィニズムを実行していく。良識派は彼らをファシストと呼んだが、「狩猟社」は過激派をつぶし、労組のストを破壊し、要人にテロを加え、反対派を廃人にしながら、一気に日本の中枢を獲ろうとする。そんな彼らの前に、恐慌後秘密結成された多国籍企業集団「ザ・セブン」が徐々にその恐るべき姿を現わす。危険な予兆をはらんだ衝撃の近未来政治小説。

     家庭・学校・社会・政府・日本、人間が集団で生活をするシステムは必要なものなのか。己のプライドだけで孤高に生きることは儚い幻のようなものなのだろうか。かなり重い作品だが、一読の価値あり。

  • 昭和62年に書かれた本だと言うことはバブルの頃か?その頃に未来を企業が席巻し各国の経済が立ちゆかなくなると言う想定で書かれたこの本は未来を予言していたのか?

    上巻しか読んでいないので極端な思想結社の狩猟社を立ち上げ、率いる主人公の鈴原冬ニと相田剣介そして、その周りに必然的に集まって来た狩猟社のメンバーたちがその組織を揺るぎないものにして行く過程で上巻は終わる。

    相田剣介は坊ちゃんで狩猟社にとって不易なスキャンダルなどを起こし、冬二以外のメンバーから抹殺を進言されるが、上巻では彼を広報担当者にすると言うところで終わっている。

    上巻では、まさにこれからファシズムで起ころうとする冬二のヒットラー、剣介のゲッペルスへの道が見え始めたところで終わる。

    狩猟社や冬二の思想は気味の悪いファシズムな考え方だが、世界の混乱時にはこういう人間が出現しても致し方ないかとも思う。

    さて、下巻でこの二人が狩猟社がどうなるのか?
    楽しみにしようと思う。

  • 近年の有名作に比べて書き込みの多い作品。外で起きていることの描写が詳しい。これを読むと、他の作品は、ただまったりしているのではなく、膨大な情報量からそぎおとしてそぎおとした描写なのだなと思えて、そのためだけにも読んでよかった。話そのものは大変ドラマチック。

  • 面白い。

  • 今更ながらに村上龍。政治経済に詳しいわけではないけれど、疲弊しひとつになろうとする世界、それに反発する民族主義、カリスマを求める風潮というのは現代に似通っていると感じた。この話が書かれたのはバブル絶頂期だけれど、その時にすでに今の世界を見越していたのかと思うほど。文章にこめられた憎悪と絶望(そして再生?)はエヴァに見事に引き継がれてると感じた(登場人物の名前がこの小説からとられてる)。とりあえず前評判見ずに下巻にすすみますー(読書メーターにも同内容投稿)

  •  「この世はしょせん弱肉強食。強ければ生き弱ければ死ぬ」って、るろうに剣心の志々雄が言っていました。日本的な共同体の崩壊が叫ばれて、市場での自由競争が歓迎される。そんなことは今やいうまでもなく自明な時代になりました。会社に縛られない個人の生き方である「ノマド」が話題になり、そのための英語やスキルは現代の刀といってもいいくらいにみんな欲しがる。自己実現や夢みたいな甘い言葉がささやかれて、自由で充実したワタシが礼賛されているそんな雰囲気を強く感じる今日この頃。確かにそういう側面もあるのかもしれません。でも「個」として生きていくのはそんなキラキラしたものなんかじゃなく、もっと切実で「いかに生き残るか」を考えなくちゃならないのではないか。そして、これからますます否応なく「個」として生きていくことになってしまう。そんなとき大切になるのは、動物としての「生命力」なのではないか。そんな「生命力」をこの作品からいただきました。

  • 私の中ではベスト2です。当時23歳の多感な時期にとてつもない衝撃を与えた作品。
    あれから15年経過した今なお本棚から私を威圧してきます!

  • かなり昔に読みましたが、今でも印象に残ってます。理不尽な未来像があり、巧みな言葉使いに、人の言動、全てが響いてきます。村上龍さんの中でもオススメできる物語

  • 購入


    このような未来は極端で、誰もが望んでいないだろう。
    しかし望まない未来だからって想像出来ない訳ではないし、
    その想像力をもっともっと見たい、という欲が掻き立てられる。
    緻密な取材に裏打ちされ、「狩猟」というコンセプトにまとめられた構成がお見事。
    村上龍は何を伝えたくてこの物語を書いたのか。
    「未来への警告」であるか。

    とにかくおもしろい!

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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