- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061984103
作品紹介・あらすじ
昭和十四年五月、満蒙国境で始まった小競り合いは、関東軍、ソ蒙軍間の四ヵ月に亘る凄絶な戦闘に発展した。襲いかかる大戦車群に、徒手空拳の軽装備で対し、水さえない砂また砂の戦場に斃れた死者八千余。生還した三人の体験談をもとに戦場の実状と兵士たちの生理と心理を克明に記録、抑制された描写が無告の兵士の悲しみを今に呼び返す。芸術選奨文部大臣賞、吉川英治文学賞受賞の戦争文学の傑作。
感想・レビュー・書評
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戦死した者達の指を切り遺品として持ち帰ろうとする、それだけでも悲壮感のある話なのに自分達が全滅する可能性が高くなり、指を遺品として持ちつづけることの無意味さを感じたときの絶望感は計り知れないと思う。
弔いは生きる者がいて初めて成立する。それすら許さない戦場がノモンハンにあった。
前線で戦死した兵士も、停戦後に自決を強要された連隊長たちも全く報われなかった。戦争が起きてしまうメカニズムを追求せずにはいられない一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ノモンハン事件に出動した旭川第七師団に所属した、立場や階級の異なる三名の兵士の体験談をもとに綴った本(2005/07/09発行)。
本書は、第34回芸術選奨文部大臣賞及び第18回吉川英治文学賞受賞作品で、北海タイムスの「七師団戦記 ノモンハンの死闘」でも名前の挙がっている鈴木上等兵(旭川歩兵第二十八連隊第一大隊第二中隊)、小野寺衛生伍長(歩兵第二十六連隊第一大隊付)、鳥居少尉(歩兵第二十八連隊第二大隊速射砲中隊)の所属・兵科の異なる三名の目を通して描かれています。
三名の体験談は、どれも過酷で衝撃的な考え深いなモノですが、本書のタイトルにもなった鳥居少尉の体験談が特に印象的です。 又、ノモンハン事件後、生き残った三名の境遇についても触れらており、さらに考えさせられてしまう内容でした。
本書は、間違いなく上位にランクインする、名著ではないかと思います。 -
今ここに、失った戦友の死にざまと意思を後世に伝えてくれる一冊がある。これこそが真の軍記であり、そこに学ぶことこそが戦果であると思う。
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貴重な一冊である。死が日常茶飯事の戦場における男の生き方と無数の戦死者。なんのための戦争か。静かなノモンハン。
これ以外のタイトルは考えられない。本書に出会ってよかった。名著だと思う。 -
伊藤桂一著「静かなノモンハン」講談社文庫(1986)
体験談をもとに、実際の戦争の戦いの中で感じる兵士の心理と悲しみを描く本。戦争体験者自身の戦う信条と、それに基づく行動。死が隣り合う世界での緊張感と人の心情が細かく描写されている。エグイ描写もあるが、それが事実なのだろう。
究極な死に接する人間の感情を知りたく読んだ本。 -
村上春樹が「ねじ巻き鳥クロニクル」で取り上げていた「ノモンハン事件」に興味を持ち、入手。
戦略研究書の類ではなく、3人の兵士の体験談で構成された、実際の戦場の風景を描き出した作品。
ちなみに3方とも旭川の第7師団所属、自分とは同郷の方々である。
巻末には作者と司馬遼太郎との対談も収録。
「自分がノモンハンを書くと血管が破裂するだろう」という司馬氏のコメントが、重い。
2008年5月購入、読了。中古で700円。