小説太平洋戦争(1) (山岡荘八歴史文庫)

著者 :
  • 講談社
4.04
  • (24)
  • (31)
  • (21)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 260
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061950924

作品紹介・あらすじ

昭和16年、日米両国は最悪の関係に陥っていた。前年の日独伊三国同盟に徹底対抗を宣するアメリカ。大統領ルーズベルトは、すでに対日戦争の肚(はら)を固めていたのだ。日本は打開策を模索し、再三交渉の特使を派遣するが……。太平洋戦争全史を描いた唯一の大河小説、今よみがえる!全9巻。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 全9巻。

    坂の上の雲で、司馬遼がやたら陸軍バッシングしてたので。
    ついにずっと読むの拒否してた昭和へ。
    しばらく司馬遼が続いたので、
    久しぶりの山岡先生ってワクワクして読んでみる。
    が。
    少しびっくり。
    自分の知ってる山岡作品ではなく、
    司馬遼タイプの先生が語る感じ。



    ご本人が報道班員として従軍されていて、
    まだ戦後から25年。
    硫黄島が返還されて、まだ沖縄が返還されていない。
    いつもの時代小説として書くには、
    あまりにも身近な出来事だったんだと思う。

    正直、いつもの山岡作品のような楽しみ方はできなかった。
    が。
    すごく考えさせられる。
    だって歴史と呼ぶには近すぎる、
    身近に体験者がいる世代だもの。
    まだ。



    自分が祖父母や学校から聞かされて来た戦争は、
    「戦争はダメな事」という教訓のための、
    道徳教材な昔話でしかなかった。
    「欲しがりません勝つまでは」
    「神風特攻隊」
    「強制労働」
    「原爆」
    自分の持ってたイメージなんてそんなもん。
    なんで戦争始まって、なんで日本は負けたかなんて知らない。
    昔の日本がヒステリックで非合理的だったからでしょ?みたいな。



    すごく驚いたのが、サムライだったんだってこと。
    日本人が。
    昭和でも。

    明治までのサムライな空気の残る日本と、
    自分が生まれた昭和の日本は別の国だと思ってた。
    だって自分が育った昭和にはサムライなんていなくて、
    カメラで眼鏡で出っ歯のいじられキャらだもの。

    サムライがいなくなったのは、
    時代の流れで国が変わったんじゃなくて、
    戦争に負けてサムライが淘汰されたからって印象を受けた。
    インディアンみたいに直接的じゃなく、
    少しずつ時間をかけて洗脳するみたいに。

    大戦まで、日本は確かに認められ、恐れられる部分が
    世界に対してあったように思えた。



    自分が育って来た日本は
    アメリカに教育し直された日本で、
    だから過去の戦争で日本は悪く、愚かで、悲惨で、
    一流になるには外国と同じようにしなければいけないって
    教育して来たんじゃないかと思った。

    アメリカはじめ、白人国があの戦争でどんなことをして、
    何をしようとしたか。
    そこで行われた事が、
    本当に彼らが胸を張れる正義だったのか。
    彼らの文化で日本の文化をキチンと計ることはできてたのか。

    白人達は有色人種を認めないっていう時代の中で、
    有色人種代表として、ただ1国で有色人種の解放を訴えた、
    日本人の、日本人らしいロマンチックな誠意ってのがあったことを、
    自分は全く知らなかったし、教わっていない。




    もちろん小説だし、氏が戦争に近すぎるし、
    かたよった感想かもしれないけど、
    今まで持っていたイメージをガラリと変えられる事が多かった。
    戦争はくり返してはいけないけど、
    右な人間を無条件で認めようとは思わないけれど、
    今の日本が過去の日本に胸張れるのか分からんくなった。

    戦争を知らない、自分たちの世代は、
    ちゃんと勉強してみた方が良い気がした。





    ちなみに...............。

    後書きが個人的にかなり好きだった。
    山岡先生の年譜が、エッセイみたいになってる。

    吉川英治、村上元三、海音寺潮五郎、富田常雄....
    自分の大好きな作家達との交流がチラホラと。

    小説しか読んでこなかったので、
    経歴とか知らなかった。
    凄くびっくり。
    この時代すげえ。

    吉川先生と、若い頃の氏とのエピソードが特に好き。
    にやっとした後、鳥肌立った。

  • 第一巻は、開戦前夜まで。前半では、近衛文麿がいかにダメダメな政治家だったか、「気の弱いありふれたインテリ」、絵にかいたような優柔不断、怯懦な政治家だったかが印象的。読んでいてガッカリ。後半は、何とかして戦争を回避したい天皇の意を受けて急遽担ぎ出された東条英機首相とその閣僚達の虚しい奮闘。「天皇絶対」、律儀で几帳面、単純で率直な東条という人物は、戦前の日本人の典型かな?
    当時、英米の指導者達は、有色人種を蔑視し、自らの白欧文明を維持・発展させるために植民地から搾取することを当然と考える、白人至上主義に凝り固まっていた(この思想、今でも欧米人の根底には脈々と流れているんだろうなあ)。はなから叩き潰そう、懲らしめようと思っている相手に対して、必死に妥協点を探そうともがいていた日本外交の姿が悲しい。

  • あの戦争を「愚か」だと思っているのであれば、騙されたと思ってもいい、ぜひ冒頭だけでも立ち読みしてほしい。

    なぜ「愚か」に至ったのかの経緯が、「真珠湾強襲」、までが、この第一巻には書かれている。

    昭和天皇はもちろん、東条英機さえ、戦争を回避したかった。
    それが痛いほどわかる内容が克明に、しかも小説という読みやすい形をとりながら書かれている。

    読み進めれば進めるほどに、そこに至る経緯は必然であり、歴史の流れの無情さを思い知るだろう。

    あの戦争が決して「愚か」ではなく、植民地支配が当然であり、白人至上主義であった当時、有色人種で唯一独立を勝ち得た我々日本人の、ギリギリの迷走と葛藤を痛いくらい思い知らされるであろう。

  • 最初に『執筆を終えて』から始まりますが、これが印象的。この小説がどこまでノンフィクションかフィクションなのか分からず、でも一方で、戦争が行われたのは事実なので、なんとも言えない気持ちで読みました。太平洋戦争の始まりっていつなのか、やはり昭和2年の満州事変からなのかな。20年近い戦争の最終盤が、この最悪の太平洋戦争。しかし、欧米に戦争をするよう仕向けられた。相手は原爆を落としたのに、日本はホノルル市街に被害は与えていないといった内容をはじめ、日本贔屓の論調が、かなり偏った見方かもと、気になりました。残り8巻!

  • 小さい頃は
    アメリカに挑むとか無謀すぎ...
    神風って何だ?イカレてんのか?
    東洋のヒトラーって何を言った?
    と思っていた。
    現代の日本の世情と比べては、どうしてそうなったのか全く想像がつかなかった。
    悲しい、苦しい、数多くの人の決意と決断の連続じゃないかぁ。
    昔、知覧特攻平和会館でも沖縄ひめゆりの塔でも感じるものが少なかったが、今頃思い通じて胸痛くなった。

  • 日米開戦という歴史上の厳然たる事実があるのに、別の展開を期待しながら読んでしまう自分がいる。

  • これまで抱いていた松岡洋右や東條英機のイメージが覆った。特に東條が戦争を回避するために首相に推されたというのには驚いた。海軍は開戦反対派、陸軍は好戦派といった単純なものでもなく、無謀に戦火に進んだのでなく、米国の白人至上主義が有色人種を締め上げ、窮地に追い込んだのだと。70年前の遠い過去のことと言えない。トランプとルーズベルトがダブって映る。2018.3.19

  • 如何にして、日本が太平洋戦争に足を踏み入れていったか(アメリカによって戦争する以外の退路を断たれた)か分かる一冊。
    あの戦争が良かったとは思わないが、戦争しなければ、軍部の内乱や内紛等で日本は内部崩壊していたと思われる(少なくとも当時、山本五十六はそう見ていた)。
    今の日本は、あの戦争があったからここまで繁栄したとも言える。

  • まず一巻は、三国同盟締結後から真珠湾攻撃まで。人物を中心に描きながら、丁寧に背景事情を説明しているので、止むに止まれず日米開戦に至った当時の空気がよく伝わってくる。

  • 小学生のころ父親の本棚にあったので何度か読んでいた。最近、近現代史の本をよく読んでいるので、感じ方も違うだろうということで、何十年ぶりかに読み返してみることにした。

    この作品はかなり日本側に同情的に書かれている。最近は「日本善玉論」的な居丈高な論調も多いが、この本が書かれたのは、昭和30~40年代。戦前の日本のすべてが悪い、と考えられていた時代である。かなり思い切った作品だと思う。

    山岡荘八は従軍作家として実際に戦場に赴いている。その15年後の作品だけに、筆致に迫力がある。文庫版で全10巻の大作なのでゆっくり読もうと思う。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

明治四十年(1907年)新潟県に生まれる。十四歳で上京し、博文館印刷所に文選工として働く。長谷川伸に師事、山岡荘八の筆名を用いる。昭和二十五年(1950年)より、北海道新聞に『徳川家康』を連載開始。昭和二十八年(1953年)単行本の刊行が始まり、ベストセラーとなる、『徳川家康』により、第二回吉川英治文学賞を受賞。以後、歴史小説を中心に創作する。昭和五十三年(1978年)七十一歳で亡くなる。

「2023年 『水戸黄門 下巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山岡荘八の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×