ペリリュー・沖縄戦記 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598850

作品紹介・あらすじ

「戦争は野蛮で、下劣で、恐るべき無駄である」。硫黄島に匹敵する損害率を記録した一九四四年秋のペリリュー島攻略戦、そして四五年春の沖縄上陸戦。二つの最激戦地でアメリカ海兵隊の一兵歩が体験した「栄光ある戦争」の現実とは?敵味方を問わずおびただしい生命を奪い、人間性を破壊する戦争の悲惨を克明かつ赤裸々に綴る、最前線からの証言。

感想・レビュー・書評

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  • 感傷に浸りやすいように都合よく修正された日本人目線の戦争記ではなく、一人のアメリカ兵が実際に見た知られざる本当の戦争がリアルに、そして克明に描かれている。
    読んでいて思わず顔をしかめてしまう凄惨なシーンも随所に出てくるのですが、国のために命を投げ出して勇敢に戦った友軍兵士に対する処置が、両国の間であまりにも違っていたことに愕然とする。

    結局のところ、そもそもなぜ無謀にも戦争なんて始めたのかを考えるに至るのですが、と同時にアメリカ軍側の理屈として、あまりにも多くの犠牲を払って勝ち取ったこの沖縄という場所から、我々の活動拠点(基地)をみすみす引き揚げることなどあり得ないことなのだと宣言されたようで、70年後に生きる日本人としてただ無力感に沈む。

  •  海外ドラマ「ザ・パシフィック」の原作の一つだが、戦記ものというより、優れたルポルタージュのように感じられた。精鋭とされる、米海兵隊員であっても、悩み多い、多感な若者であるという、当たり前のことに気付かされる。詳細な情景、心理描写は非常に説得力がある。
     勝者の米兵ですらこうなのだから、孤立無援の中で玉砕して散った日本兵の苦悩はいかばかりであったかと思う。戦争は死と虚無をまき散らすだけである。

  • 他の戦記物と比べて、綺麗事ばかりでなく、現場の兵士の感じた戦場が臨場感を持って語られている作品という触れ込みを聞いて読んだ。

    たしかに、悲惨な戦場が語られているが、この作品の中でも語られている通り、戦地に行っていない人には分からない、現場を体験した人にしか分からないことがあるのだということが、より強く感じられた。

  • アラバマの医者の息子で愛国心に燃える主人公スレッジ・ハンマーことユージーン・ボンデュラント・スレッジ(後に大学教授)の従軍体験記で当時の想いが素晴らしい翻訳からなのか他の体験記よりリアルすぎるぐらいに伝わってきた。
    感性、知性ともにあふれている青年が戦記を書くとこうなるのか驚きながらと一気に読み進んだ。
    戦記物の読書歴は日本9対米国1ぐらいで
    に圧倒的に日本サイドからだった。
    彼の戦場はペリリュー島と沖縄でこの2つは日本側がいわゆる「玉砕=バンザイアタック」戦術をとらずに戦国の真田幸村ばりの谷合でじっくり待って攻撃する戦術をとった為に米軍の損害率が高い事で有名らしい。
    直前に読んだ日本側のペリリュー戦記から比べるとなんとも言えない「兵隊の待遇の格差」を感じた。
    他のレビューにもあるが読むに堪えないに日本兵のひどい残虐行為の箇所も不快な思いよりも補充兵も無く
    武器の格差や制空権や制海権も味方の援護も望めない中我々の先人たちへの尊い犠牲に思いを馳せずにはいられなかった。
    しかし人間として共感できるのは圧倒的にかつて
    の敵国人の書いたこの本。
    それは自分が「現在の価値観」の中で生きているからだろう。
    作者が言う「戦争は野蛮で、下劣で、恐るべき無駄である」そして原題With the Old Breed(海兵隊第一師団)
    にあるような組織への忠誠は日米双方の激戦地からの帰還兵に通じるところ。
    この兵士の最悪の戦場を味わった苦しみに比べれば全ては「なんたる小さいこと」だろう。
    70年この世代の声を聴くにはいい機会だと思う。
    さっそく原書を注文してしまった。

  • 読んでいて厳粛な気持ちになる一冊。
    戦争の最前線が、どんな地獄になるのかを克明に描写していく。
    おびただしい死と、だんだんと理性と正常な感覚が擦り切れていく様子が心胆を寒からしめる。
    日米両軍の兵士に哀悼を。

  • 戦争の足音が聞こえる時代になったので、戦争がどんなものか知るために読みました。
    本書はアメリカの海兵隊員としてペリリュー・沖縄戦で戦った著者の実体験を綴ったノンフィクションで、戦地のリアルが書かれています。著者が配置された場所が激戦だったこともありますが、徹頭徹尾地獄でした。人としての倫理道徳を捨てきれずに殺し合い、だんだん歪んでゆくのが見て取れて胸が痛かったです。著者は本書にて戦場を「人肉粉砕機」と何度も呼んでいますが、確かにその通りだと思います。

    個人的に良かったところは、アメリカ人がちゃんと人だったところです。あまり戦争物を観てこなかったというのもありますが、観てきた日米の戦闘を描いた物語において、米兵は爆弾を落とす鬼畜か、死ぬ前の命乞いをしている可哀想な人でした。同じ人であることを示すようなシーン含めて、どの場面を切り取っても生身の人間として描かれていなかったように思っていました。アメリカ人側の視点なので当たり前ですが、同じ人同士が殺し合ったのだと自分の中でちゃんと理解できた作品でした。
    ただ、とても良い作品ではありますが日本兵が無惨に殺されていくのに著者がだんだん気に留めていかなくなるのが読んでいて辛かったです。戦争で辛い思いをした方は読まない方が良いかと思います。

  • 自らを含めたアメリカの青年たちが戦場で人間性を失っていく様を克明に観察して描いている。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/732293

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/732293

  • 最前線からの証言から、戦争の痛みを感じる。
    2度と起きてはいけないことをこれからの人々は、語り継がなければならない。

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