我、自閉症に生まれて

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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054001824

作品紹介・あらすじ

1953年、6歳のときに自閉症と診断された著者テンプル。彼女は、幼児期から自立に至るまで、何を思い、どう生きてきたか。自閉症に特有な諸症状の背景が、いま明らかに。自閉症者本人が書いた世界で初めての本。

感想・レビュー・書評

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  • TEDプレゼンにて興味を持ったため。
    また、私自身自閉症スペクトラムの症状を多少持っていると思うところがあるため、所々あるある、と思うことがあった。ダナ・ウィリアムズの「自閉症だった私へ」も読み、自閉症は社会生活に非常に支障を来すのでこれほど社会的成功を収めたことがとても素晴らしいと思う。
    視覚的思考と言語思考の人の、それぞれに合う学び方がある。わたしも英語を学ぶなかで文法の説明を読んでも全く頭に入らなかったが、声に出して読むことで文の意味をつかむことができた。単語の意味から大体の意味をイメージして何度も声に出して読む。黙読では頭に入らなかった。それと同じような、脳神経の回路がどことどこが繋がっていて繋がってない、特に発達しているところはどこだ、というような脳の個性によって、その人の学びかたも、考え方も多様に存在するのではないか。最近ドラッカーの思想の要約を読む機会があり、同じようなことが書いてあった。人の能力を勝手に低い、高いと判断するのは傲慢ではないか、と。人にあった仕事や学びかたがある。という。テンプルさんは自分に合う学びかたを見つけ、自分と同じような人にも手助けをしてあげるという成熟した大人として尊敬すべき人だ。

  • レポートのネタ探し。
    障害はサポートする側の視点で描かれることが多く、実際にその障害のある人自身の視点から書かれることは、あまりない。特に自閉症は。
    これは、初めて自閉症者が自らの体験を書いた著作。
    ドナを読んでいて、抱える問題で似ているところもたくさんあったが、似ていないところもそれなりにあり、やはり、自閉症という存在から生じる問題が個に応じてかなり違うのだということが実感できた。
    ドナとは違いテンプルの場合は、家族に恵まれていたということもあり、彼女の持つ優れた力が上手く伸ばされており、いわゆる社会適応を考える上で、ひとつの示唆を与えてくれた。
    ただ、ドナの方が生きている中でたくさんの問題にぶつかっているため、内容が重く、堪える。

  • この本には、知能指数が137と高い自閉勝者本人からの、自閉症に関する極めて大きな情報が詰められている。
    しかしフレーズが長いのと、わかりにくい例えが邪魔したり表現が直接的でないことなどがあって、文の前後を読み合わせながら理解していかないと、誰がどうしたのかの関係を誤解してしまう恐れがある。

    症状と対処療法の要点を買い出してみたけれど、残念ながら字数が多くなりすぎてここにアップすることができなかった。
    自閉症に関わる人にとっては利用価値満載だから、読む価値有り。

  • 今年の論文で使用

  • 図書館で。
    姉に薦められて借りてみましたがすごい人生だなぁと思いました。自分の状態を冷静に分析して、こういう感情の動きでこうなった、と振り返れるのがスゴイ。そうやって考えると自分なんて結構自分の言動を曖昧なまま、感情の赴くままに捨て置いてるんだなぁ。ちょっと反省。

    牛樋ってちょっと違うだろうけれども俎板の鯉みたいなものなんだろうか?なんて思いました。←大分違いそうだけれども。窮屈な場所に入れられて安堵を覚えるというのは胎内還帰みたいなものなのかなぁ。心理学って面白い。
    そして実践的に使えるものを作りあげられるってのもスゴイ。

    そうやって考えると今はやっているらしい、人をダメにするソファとかビーズクッションってのも流行るべくしてはやったアイテムなのかもしれないなぁ。

  • 自閉症の女性の半生。

  • 誰かに抱きしめられる。
    それは、どんなことだろうか。
    暖かいぬくもり。
    包まれる感じ。
    全身の圧迫感。

    その「感じ」は、ほかにどんなときに感じられる?
    風呂に浸かるとき。
    布団にくるまるとき。
    満員電車はイヤだなあ!

    人は、幼少期に抱きしめられていないと、いろいろとまずいらしい。
    人が、狭いところに身体をぎゅっと押し込めたい、というのは本能にも近いのでは無いだろうか。
    我が家の猫など、置きっ放しの小さい箱に無理矢理入り、変形させ、押しつぶす……。
    触覚剥奪は、多動・自閉的行動、暴力や攻撃性を生むとしている専門家の声もある。
    しかし、自閉症の子どもは触覚刺激への過敏な反応により、母親の胸に抱かれることをいやがるようなそぶりをする。
    マシュマロのような身体の叔母からの抱擁に、押しつぶされるような圧迫感を感じ取り、「ちょうど良くコントロールできる」抱擁を、テンプルは夢見るようになった。

    発達障害を知っているだろうか。
    脳における障害があるとされ、自閉症、高機能自閉症(アスペルガー症候群)、注意欠陥多度性症候群(ADHD)、学習障害(LD)などを指す。原因は遺伝、体内環境、出産時の状況など考えられているが特定が難しく、社会的認知度が低いものの一つである。
    学級の6%の子どもが発達障害にあるといわれ、最近の学校事情のテレビ番組でも耳にすることがある。
    障害の生活上・学習上の問題が正しく理解されないために、「わがまま」「育て方」などの問題とされるケースもあり、より正しい認識を持つべきものの一つである。
    個人によって、投薬などの方法もとられる。アスペルガー症候群などは、知的には問題が無く(学習面ではむしろ高いことも多い)、特に対人関係に苦労を持つなど、様々である。
    それこそ、人が一人ひとり違うのと同様、発達障害も、一人ひとり違っている。
    (わたしの認識ですが、間違っていたらごめんなさい)

    以前レポをした「火星の人類学者」に出てくる、テンプル・グランディンは、自閉症と診断され、自らの障害と闘ってきた一人の動物学者であり、アメリカの1/3の屠殺場の設計に関わっている人物である。
    彼女も、自らの自閉症からくる困難に、強く悩まされ続けていた。
    ・抱きしめて貰いたいのに、抱きしめられたくない。
    ・強くこだわりすぎる。
    ・環境の変化に強く戸惑う。
    ・視覚的にでないと学習しづらい。聴覚からは覚えられない。
    ・触覚刺激に弱く、毛でできた服は着られない。
    これらが彼女の抱えていた問題である。
    また、神経が過敏であるために、胃を強く痛めることすらある。

    発達障害は、生活に支障が無い限り、特に意識する必要は無い。
    しかし、前述したものがいくつか「軽度発達障害」と、区別されるのに対し、自閉症はその仲間から外れる。
    実際、テンプルはそのかんしゃくによって、家族を交通事故で殺しそうになったことがある。そのとき、テンプル自身は、状況がよく分かっていなかった。割れて降り注ぐフロントガラスを見て「アイス、アイス」と、喜んでいたのである。それくらい、生活に支障がある。
    幼少期の友だちとのトラブルの解決方法は、「ひっぱたく」ことであった。
    しかし、気をつけたいのは、ただ、困ったものとしてではなく「世界を違った方向から見ることができる」ということにもなる、との認識が必要なこと。
    序列的に物事を理解する者と違い、彼らは、視覚的に理解する。物事の全体像が見えなくても、部分をイメージすることができる。
    物理学者アインシュタインも、視覚的に学習をしている。
    すなわち、彼ら発達障害者を「生み出さないように予防」するというようなことがあった場合、非凡な才能を平凡な才能に変えてしまう恐れがあるのだ、と、著者は指摘している。
    テンプル自身、
    ・動物が好き
    ・工作を工夫して作ることが好き
    ・独創性の実行
    ・こだわりによる達成までの執念
    などの良い特性が、成功へと導くもととなっている。但し、彼女自身、知能指数137という、大変高い知性の持ち主でもあったのだが。

    話を戻そう。
    人は、かすめるような軽微な刺激では無く、ややしっかりした圧迫感を伴う触れ方に安心感をもつ。
    牛樋。
    牛に烙印を押すために、狭い通路に押し込め、圧迫することで固定する。
    牛は、圧迫されることで落ち着く。そうした機械である。
    それを自分用にも作りたいと考えたテンプルは、ついに、それを作り上げ、全国の自閉症の子どもがいる施設で効果を上げるようになる。
    それを「締め付け機」という。
    自分でコントロールできる圧迫感を受け入れることで、中枢神経に働きかけることのできる機械。
    健常な大学生が使ったときも、60%が好ましく感じた。
    それほどに、動物と人と、共通した感覚なのである。

    人は、誰かに抱きしめられたいと願う。
    テンプルを抱きしめることをしなくなった母親の手紙を読むと、母親は、身体の代わりに心を抱きしめているのだと分かる。
    それでも。
    この身体を抱きしめて欲しい。
    人は、そう願うのだ。

    某サイトより転載

  • [プロフィール]1947年生まれ。6歳時に自閉症と診断される。自分自身の神経的な発作や触覚刺激に対する過剰反応を抑制するために、17歳で「締めつけ機」を思索し始め、現在、改良された「締めつけ機」は様々な施設で利用されている。

  • 自閉症患者自身が執筆した数少ない自叙伝。

    面白いか、と言われると、
    エンターテイメントとしては別に面白くはないです。
    興味深い、と言ったほうがより適切かな。

    少し古い本ですが、自閉症について勉強している人、若しくは何らかの関わりのある人は読んでいるべき本だと思います。

    著者さんが、幾多の社会的障壁を乗り越えて健常者と変わらない生活を送っている姿には頭が下がる思いです。
    自閉症でなかったら、もっと活躍なさってたのかなぁ、とか
    自閉症だから、ここまで努力できたのかなぁ、とか、いろいろ考えさせられました。

  • この本は日本では1994年に出版されたが、もともとはアメリカで1986年に出版された。

    それだけに自閉症当事者の記録としては古い。

    テンプル・グランディンが感じ、経験したことから自閉症の特徴を読み取ることができる。

    しかし、大学院に進学したあたりから、牛樋の話が多くなり、文章も難しくなってきてなかなか読めなかった。

    後半の技術的情報は役に立つ部分もあり、一度読むとよい。

    何にせよ、世界初の自閉症当事者の記録だから、自閉症に関わっている関係者は読むべき。

    2008年01月21日読了

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著者プロフィール

1947年生まれ。世界各地の家畜施設を設計する動物科学者。コロラド州立大学で教鞭をとり、自閉症関連の講演や執筆でも活躍中。著書として『アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク』(ケイト・ダフィーとの共著、梅永雄二監修、柳沢圭子訳、明石書店、2008年)、『我、自閉症に生まれて』(マーガレット・M・スカリアノとの共著、カニングハム久子訳、学習研究社、1994年)、『自閉症の才能開発』(カニングハム久子訳、学習研究社、1997年)ほか多数。

「2009年 『自閉症スペクトラム障害のある人が才能をいかすための人間関係10のルール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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