犯人は僕だけが知っている (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1114
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049141702

作品紹介・あらすじ

 過疎化する町にある高校の教室で、一人の生徒が消えた。最初は家出と思われたが、失踪者は次々に増え、学校は騒然とする。だけど――僕だけは知っている。姿を消した三人が生きていることを。
 それぞれの事情から逃げてきた三人は、僕の部屋でつかの間の休息を得て、日常に戻るはずだった。だが、「四人目」の失踪者が死体で発見されたことで、事態は急変する――僕らは誰かに狙われているのか? 
 壊れかけた世界で始まる犯人探し。大きなうねりが、後戻りできない僕らをのみこんでゆく。

 発売直後から反響を呼び大重版が続き15万部を突破した『15歳のテロリスト』の松村涼哉がおくる、慟哭の衝撃ミステリー最新作!
 

感想・レビュー・書評

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  • 過疎化が進み、いずれ消える町。ある高校の教室で、次々とそのクラスの生徒が消える。学校は騒然とするが、僕だけは知っている。
    姿を消した3人は、生きていることを。

    初読の作家さんで、文庫レーベルの先入観もあり軽めのミステリを予想していたんですが、想像以上に重い話でした。
    過疎と高齢化で衰退していく町のなか、精一杯生きる高校生たち。彼らが抱える問題は、虐待、いじめ、晒し、ヤングケアラー、母子・父子家庭、生活保護と幅広く、失踪や中盤で起こる殺人事件の犯人を暴くミステリーとしてではなく、社会問題とその被害者である少年少女たちの生き方や友情を青春小説のような清廉な痛々しさで描いています。
    問題にはみんな立ち向かえ、克服しろと言いがちですが、立ち向かうだけではなく、主人公の堀口が作るゲームのように逃げたり説得したり助けを呼んだり、色々な解決方法がある。ラストシーン、彼らの根深い問題は解決するわけではないですが、自分がその気になれば選べる選択肢は実は複数ある、と考え方を変える一助になるような、儚くも優しいお話でした。

    ***

    こちらも失踪(消失)を扱った青春ミステリ。
    →『消失グラデーション』 (角川文庫)/長沢樹

  • '23年7月29日、Amazon audibleで、聴き終えました。松村涼哉さんの小説、四作目。

    先に聴いた三作と、基本的には同じ印象でした。この作家さんの、テーマ的なるもの、なのかな…

    今の若い人(というのも、変な&嫌な言い方、ですが)を主人公に、現代の問題をテーマとして書くと、インターネットの「闇」の部分を描かずには不可能、なんだろうなぁ…僕のようなアナログオヤジに言わせれば、「ネット、SNSなんて、見なきゃいい!」で、終わりなんだけどなぁಠ⁠_⁠ಠ

    他人のココロの裏側なんて、見たくないッスಥ⁠_⁠ಥ若者よ!自由に空を、飛びなはれ(⁠θ⁠‿⁠θ⁠)

  • 初作家さん。
    11歳の娘に「好きな表紙の本を選んで♪」と、装丁だけで選んでもらった作品です(*´-`)

    読みやすく、おもしろかった!
    高校生を中心に、現代の社会問題を複数取り上げたミステリー。
    虐待、ヤングケアラー、いじめ、ネットでの誹謗中傷、貧困問題、田舎の過疎化...
    便利な世の中だからこその、若者たちの生きづらさや葛藤。人との関わりを避けているようで、本当は人の心の温かさを求めている。
    ネット社会を避けられない昨今、中高生から大人まで幅広く読んでもらいたい作品だと思いました。

    松村涼哉さんの他の作品も読んでみたいな!

  • 過疎化する町で起きた高校生の失踪。教室が騒然となる中、僕だけは知っている。彼ら三人が生きていることを。堀口は様々な事情を持つ彼らを匿っていた。しかし、四人目の失踪者が死体で発見されて事態は急変する。

    社会が抱える問題をミステリに柔らかく編み込む松村先生の手腕はさすが。四人目の失踪者は誰が殺したのか。その謎に迫るということは、人とそれを取り巻く社会を知るということ。匿われた皆が隠してきたドラマは現代社会の負の側面を照らし出している。ぼくも他人事ではないテーマもあって心が震えた。

    「犯人は僕だけが知っている」というタイトルのもう一つの意味を知った時の衝撃。表面的なものだけを見て飛び交う憶測と中傷。周りの勝手な正義感が作り出す渦。その中でいかに生きるのか。そして、犯人がわかればすべて解決するわけではない。その先へどう答えを出すのかが重要なのだ。

    堀口のゲーム制作が思った以上にドラマにもテーマにも食い込んできていて面白かった。RPGのコマンドを認知行動療法に転用するって発想は、まさにゲーム感覚で楽しみつつ物事へと向き合えるいい方法かもしれない。真面目でもいい。でも、人生には数多くのコマンドがあるってことを忘れないで生きていきたい。

  • 高校生のさわやかミステリー系かと思ったら、全然違った。いじめ、ネットリンチ、ヤングケアラーなど、かなり重いです。

  • 人の優しさと醜さが複雑に交わっていくストーリーに引き込まれてあっという間に読了。

    テンポよく進み読み易いミステリーだった。

    ただの犯人探しではなく、現代の日本が直面する社会問題について取り上げた内容で少し驚いたが、すごく考えさせられるものだった。

    過去の傷や、解決も逃避もできない問題を抱いてる人は、高校生とか学生に限らずいることを改めて思った。

    人の痛みを知り、寄り添い、優しくするって、なかなか出来ることではないけれど、大切な事なんだと思った。

  • 今の社会問題を扱ってる小説などは世の中にたくさんあるけど、どこか他人事で自分の日常には関係があるようには思えなかった。
    だけど、松村先生の作品を読むと自分の中にスッと入ってきて、社会問題について真面目に考えるきっかけになる。
    今後も読み続けるだろうなって思いました笑

    “犯人は僕だけが知っている”ってならないように...

  • 「排除型社会」によって高校生が苦悩するミステリ小説。
    ※排除型社会とは経済成長がしにくくなった後、不安定化する社会のこと。経済格差が広がることによる貧困層の増加、その結果教育・医療・福祉などのサービスを受けられない人の増加するなどの問題を孕んでいる。

    主人公の堀口は幼少期に母親からネグレクトを受け、精神にバグを持っている。
    久米井は作曲家志望の元アイドルであったが、他を蹴落そうとするような悪意のある編集で都会でつぶされてしまう。
    渡利は父親が生活保護を受け始めてからそれを原因に虐められる。
    田貫はヤングケアラーとしての役割を期待され、自分の夢に挑戦できない。

    排除型社会によって一般人を殺人犯たらしめること、また疑わしいだけで学校での居場所を奪われてしまうストーリーを見てしまうと心苦しい。

    ゲームを作ることでこの排除型社会に向き合い、久米井・渡利・田貫の心のケアをする堀口は格好良かった。

  • 高齢化社会の影響で、ヤングケアラーが増えたのではないかと思うけど、これはその問題が絡んでくるお話だ。
    こういう物語に対しての感想を書くのは難しいけれど、堀口の優しさは素敵だな。
    痛みや苦しみがわかるからこそ、あのような行動ができたのだと思う。
    彼が作成したゲームがあるのなら、一度プレイしてみたいな。

  • 面白かった。
    人はみな誰かを悪魔のように糾弾してしか安心を得られない。そんな人間の哀しい心を繊細に描いた小説だった。一人一人違うというのは、他人を理解出来ないとわかった上での諦めであることという言葉が刺さった。存在論的不安、消えたいとか死にたいとかそういう漠然とした希死念慮はここからきたものなのかなと思った。
    人生は「戦う」ことが全てじゃない。ゲームのように「逃げる」ことが出来るんだと気づける物語。

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著者プロフィール

第22回電撃小説大賞で《大賞》を受賞した『ただ、それだけでよかったんです』(電撃文庫)でデビュー。『15歳のテロリスト』(メディアワークス文庫)が発売から反響が続き20万部を超える代表作に。以降、『僕が僕をやめる日』『監獄に生きる君たちへ』『犯人は僕だけが知っている』も発売即重版のヒット作となっている。

「2022年 『暗闇の非行少年たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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