企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書 234)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048869645

作品紹介・あらすじ

大ヒット商品の発売を機に大きく変貌を遂げた米アップル社を内側から見てきた著者が、独自の視点でアップル、グーグル、マクドナルド、エクソンモービルなどの巨大企業を分析。一人勝ちをする仕組みを創り上げながら、産業やビジネス、消費の在り方を根底から変え、私たちの生活に影響を与える「私設帝国」とも呼べる企業たち。これらの帝国が支配する新しい世界のすがたを明らかにし、企業が構築するさまざまな仕組みの中で、私たちはどのようにそれらに対応し、生きていくかを考える近未来の指南書。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読むとTPPとは何なのかということがよく分かる。

     アップルとの対比で、「じゃあ、サムソンはどうなのか?」と考えてみる。

     サムソンやLGなどは、グローバル化に対応しつつも韓国企業であることをやめようとしているようには見えない。 そして、サムソンを擁する韓国はTPPは自国の利益にならないとして早々に米韓FTAという道を選んだ。

     状況から見ると、日本も韓国と同じような状況だと思われるが、結局は政治判断の遅れと政治家のグローバルな経済戦略への無知からズルズルとTPPの泥沼に引きずり込まれてしまっている。

     食品業界のモンサント社の話を読めば、TPPで問題になっている農業問題は日本の農業というギョーカイの問題ではなくて「食」の安全の問題なのだということがよく分かる。
     「農業を守れ!」というスローガンを掲げつつ、結局は自民党と手打ちをしてしまうであろうJA中央などの事を考えてみると、陰謀論的に見れば、経済問題としての農業に集中することで、肝心の「食の安全」から目をそらそうとしているのではないかとさえ思ってしまう。

     加えて、TPP参加を推進する日本の輸出産業は、グローバル化が遅れていると言われるが、案外サムソンが「韓国」にこだわるほどには「日本」にこだわらないということなのかもしれない。


     それから、フォックスコンに関する記述は、現実を踏まえて極めて公平に、冷静に書かれていると思う。

     龍華のフォックスコンでは、寮だけではなく工場棟にも自殺防止ネットが張り巡らされている。あれを見れば確かに異常と思ってしまうが、日本の人口20万~30万の都市で年間どれだけの自殺者がいるのかを考えると気持ちが暗澹としてくる。飛び降り自殺の少ない日本では都市中のビルにネットを張っても自殺は防げない。

     賃金や厚生施設などを見るとフォックスコンは明らかに平均よりはかなり高いレベルと言える。(本書で書かれているのは控えめな気がする、おそらく社会労働局あたりの役人の話を真に受けている)
     中国のブラック企業は中国資本の方が圧倒的に多いし、炭鉱事故のニュースを見るまでもなく無茶苦茶なブラックが山のようにある。
     確かに台湾系は外資の中では就職先として最低ランクとされているが、それはすでに他の企業であるレベル以上の管理スタッフになっている人々にとっての話であり、末端のワーカーにとっては給料がまともで厚生施設もまあまあならどこも同じなのだ。
     台湾系が嫌われるのは、同じ言葉を話し生活習慣もよく理解しているだけに厳しい管理ができている点である。確かに、とんでもないこともやるがそれは中国企業と同レベルのことをすることがあるという話でしかない。

     最後まで読んで、現在の日本で大学を卒業してこれから企業に就職する人たちは、沖に止まっている立派な船に乗るための艀(はしけ)に乗るようなものなのかと思ってしまった。
     立派な船に乗れるのはほんの一部で、残りはずーっと艀で水上生活か、艀ごと沈んでしまう運命のようで切なくなってしまう。用もなく立派な船に乗っている連中をさっさと放り出して、可能性のある若い人を一人でも多く乗せてやればいいのにと思う。

     それに、就活で列に並んで艀に乗っても、乗ってしまったら自分だけ外に行きたくでも海に飛び込まないと行けなくなってしまう わけだから、最初から「艀なんかに乗らない!」という選択も、もっと増えてもいいんじゃないか?

  • 大して目新しい一貫した主張はない。
    国際的な大企業は、ある意味国家を超えた存在になっており、利潤のためには国民の利益は考慮しない。
    そういう企業では、仕組みを作る側と仕組みの中で働く人とでは収入に雲泥の差がある。
    仕組みの中で働く人は、過酷な労働を強いられているが、それでも、それほど不幸せではない、というのは大企業の外がもっと過酷になっているから。
    個人は、大企業の中で仕組みを作る側を目指すにしても、大企業から独立して事業を営むにしても、専門性と創造力が必要。
    こんな内容ですね。

  • アップル、マクドナルド、モンサント、エクソンモービル。こうした企業は今や、帝国とでも形容するしかない力を持っている。国家に従属せず、税金を払わず、各分野で世界を支配するべく活動している。まさに帝国だ。このアナロジーに、帝国主義の発展と凋落の歴史を重ねてみても面白いと思った。こうした帝国がこのまま発展を続けていけるのか、それとも、歴史上の帝国と同様、いつか崩壊していくときがくるのか?興味深い。また、それぞれの帝国の仕組みも解説も面白い。こうやってやっていたのかと、感心する。無力感を感じないでもないが、利用してやるぜという意気込みも本書は与えてくれる。

  • 出だし良いのに途中迷走、何が伝えたかったのやら…?

  • 大企業が私たちの生活にどのように入り込んでどんな影響を与えているのかが、わかりやすく簡潔に説明されている本。
    このまま大学を卒業して就職して10年、20年先まで生き残っていけるのかどうかという漠然とした不安を感じていたが、その原因をこの本にうまく説明してもらったという感じ。

    仕組みを作る側と従う側
    使う側に回るのか使われる側におちるのか
    語学、美的感性、専門性

    今自分が何を持っていて何に向いているのか。
    移り変わる世の中にどのように自分を個性的な人間として順応させていけるか。
    いろんなことに手を出しがちな自分にどんな専門性が一番合っているのか。
    むずかしい!!!

  • アップルを退社した著者の本
    すごくイライラする本。
    帝国が力を持つのは仕方ないという考え方が嫌!
    クソが!
    たとえ、そういう流れだとしても!!

  • わかりやすく、色々と学ぶことも多かった。
    芸術を身につける、勉強し続ける、専門性、とことん議論、とことん勉強、とことん仕事

  • 著者は、高校を卒業後に渡米してアメリカの大学で学び、日本企業に就職した後、アップルジャパンを経てアメリカ本社で7年間勤務した。情報源は海外のものが多く、食、IT、石油業界を紹介しながら、帝国の仕組みを分析している。

    顧客を餌付けする強力な仕組みを持つことによって、ビジネスのあり方を変え、業界の頂点に君臨して巨大な影響力を持つ企業を、著者は「私設帝国」と名付けている。その例として、アップル、グーグル、マクドナルド、エクソンモービル、モンサント、ネスレ、コカ・コーラなどをあげる。私設帝国は、得意分野に集中し、本社機能は小さく、世界中から人材を獲得し、世界中に展開し、最適な土地で最適な業務を遂行している。

    アメリカでは1936年から50年間に、45都市に展開されていた100路線以上の路面電車は、自動車会社や石油会社によって設立された鉄道会社によって買収され、すべてバス路線に切り替えられた。

    ベネズエラで1970年代に石油が発見された当時、一人当たりのGDPは南米で最も高かったが、2003年には1960年のレベルに低下してしまった。天然資源が発見されると逆に豊かになれない「資源の呪い」は、取り分をめぐっての対立や抗争が引き起こされること、既存の産業から人材が流出して衰退すること、税金が安くなったり無税になることにより、政府への無関心が広がり、腐敗が進むことが原因として指摘されている。オランダでは、1960年代に天然ガスが発見されると、通貨ギルダーの上昇を招いたため、労働者の賃金と生産コストが上がり、国際競争力が低下して、1980年代前半には低成長と高失業率に悩んだ。

  • ★私たちの生活がいかに世界的企業に囲い込まれているかがよく分かるのだが、アップルの内部がどのように変わっていったかという話と、食肉生産の工業化による健康被害などの社会問題が一緒に取り上げられていて、途中やや論点が分かりにくいこともあった。とは言え最終章の、これからの時代をいかに生きるべきかという話は大変的を射ており簡潔にまとまっていて参考になると思う。

  • これまた、遅まきながらですが、帝国化した企業の戦略も何の疑問もなく生活の一部に取り込んでいたこと。そして、これからの働き方。考えさせられること満載の一冊でした。

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著者プロフィール

米国にて大学卒業後、沖電気工業、アップルジャパンを経て、米国アップル本社に移籍。iPodやマッキントッシュなどの品質保証部のシニアマネジャーとして7年間勤務。2009年に同社退職。カリフォルニア州にて保育園を開業。15年フィリピン・セブ島にて Brighture English Academy を創設。

「2019年 『なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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