代理ミュンヒハウゼン症候群 (アスキー新書 158)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048687010

作品紹介・あらすじ

わが子を病気にしたがる親がいる。-「代理(人による)ミュンヒハウゼン症候群」。子の病気をつくり出し、医師をはじめとした医療機関を巻き込んで子に不必要な検査等を受け続けさせ、長期間の入院を歓迎する。なぜそんなことをするのか?この不可解極まりない現代的な社会病理現象を、新進気鋭の法医学者が解説。

感想・レビュー・書評

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  • 最近のニュースで事例があったので読んでみた

    自分ではなく我が子に対してさまざまな行為によって病気にしたてる そのことによって命を落とす結果になることもある

    単なる虐待とはまだ違うが結果的に死をもたらすので殺人罪が適用されるような気がするが…。

    子供を献身的に看病することにより賞賛されるという情緒的満足感を得る為に繰り返してしまう

    子供時代適切な子育てをされてないその連鎖もあるという
     
    あまりに酷すぎてこんな事が実際にあるんだろうかと辛い気持ちになる 子供をなんとしても救ってほしい

  •  子どもなどを病気にして注目を浴びる代理ミュンヒハウゼン症候群について。

     ホラ吹き男爵という語源の説明から始まって、代理でないミュンヒハウゼン症候群から代理ミュンヒハウゼン症候群まで。
     数多くの症例から特徴を説明するだけでなく、責任能力との関係や近年の免罪まで記し、新しい形の代理ミュンヒハウゼン症候群の定義まで説明している。
     
     代理ミュンヒハウゼン症候群に限らず、精神疾患やそれに準ずる疾患については病気だからという単純な理解ではいけないことを感じた。

  • わが子を病気にしたがる親がいる。―「代理(人による)ミュンヒハウゼン症候群」。子の病気をつくり出し、医師をはじめとした医療機関を巻き込んで子に不必要な検査等を受け続けさせ、長期間の入院を歓迎する。なぜそんなことをするのか?この不可解極まりない現代的な社会病理現象を、新進気鋭の法医学者が解説。(中表紙)

  • MSBP、代理ミュンヒハウゼン症候群をこう呼ぶ。程度の問題で許容範囲の『かまってちゃん』な母親も一線を越えるとMSBPというモンスターになってしまうという可能性が恐ろしい。シリアルキラーは一般人の延長線上にいないが、MSBPはそうではない。ちょっと病んでいる人が深刻化して、MSBPに。

  • 「代理ミュンヒハウゼン症候群」という言葉のインパクト。
    自分の子どもをわざと病気に見えるように仕組むという奇妙さ。
    テレビで初めて知った時の衝撃は大きかった。
    だけど、ついつい学術的に詳しく知りたくなってしまう性分と、これが虐待の一種であるということから手に取ってしまった本。

    正直、虐待の話だから、読んでる途中で気持ち悪くなったり、目を背けてしまう(読めない)ときもありました。
    でも内容的にはしっかりしていると思います。
    専門家ではなくジャーナリストが書いた本だけど、その分事例が豊富(その事例がつらいんだけど。)にあり、この謎な症候群についての全体像がなんとなくわかります。

  • 「代理ミュンヒハウゼン症候群(MSBP)」とは。
     前半では、これが認識されるに至った歴史をたどりつつ、専門家や当時の社会からどのように位置づけられてきたかを概説する。
     後半では症例のラッシュ。そして著者が提起する問題としては、法的にどう捉えるべきか(精神耗弱か否か)、医学的にはどう対処する/できるのか、など。枝葉ではなく根本を直接攻めている。著者は、MSBPを児童虐待の一種として対応すべきだという立場。

     素人の私でも大まかな知識をつかむことはできた(と思う)。新書のため、より詳細な説明が欲しいと思った箇所もあったが、全体的に上手くまとまめられた本だと思う。
     本書の構成は上に書いた通りで、重要概念の「精神耗弱」について扱っているわけはない(個人的にはこれの理解が足りなかったので、勉強するのが今年の課題)。しかし、精神耗弱はちまたでも聞きなれているが一般常識というわけではないはずなので、たとえ分量を増して解説してもよかったのではないかと。

    【目次】
    はじめに [003-009]
    目次 [010-014]

    第一章 代理によらない「ミュンヒハウゼン症候群」 015
    ほら吹き男爵ミュンヒハウゼン/多発性内分泌腫瘍症2型の天照さん/ミュンヒハウゼン症候群/腸閉塞のトーマス/40歳女性、尿路性敗血症と膀胱膿瘍

    第二章 代理ミュンヒハウゼン症候群とは 029
    Münchausen Syndrome by Proxy/メードゥによる症例報告【ケース1】尿路感染症のケイ【ケース2】高ナトリウム血症のチャールズ/2人の母親の共通点/母親のミュンヒハウゼン症候群/病気にするために、彼女たちがすること/心配性の親との違い/他の虐待との違い

    第三章 MSBPの母親の特徴とは 094
    キャシー・ブッシュ事件/キャシーの刑事裁判/MSBPの母親のプロファイル/「母親の特徴」は「診断基準」ではない

    第四章 子どもを病気にするために、彼女たちがすること 073
    MSBPの二大手口/赤ちゃんの突然死の歴史/ワネタ・ホイト事件/MSBPと窒息/毒を盛る母親/プリシラ・フィリップ事件【最初の養女ティア】【2人目の養女ミンディ】/冷静な行動力と華やかな演出

    第五章 日本で報告された代理ミュンヒハウゼン症候群 095
    どのくらい起こっているのか?/日本のMSBPの加害者像/MSタイプの母親【ケース1】【ケース2】【ケース3】/日本社会と母性愛神話/自己犠牲の美徳/「私を、認めて!」/ウソの上塗り/日本人が感動する母親像/父親の役割

    第六章 「病気」か「犯罪」か 121
    「ぶっちゃけ、責任能力はあるの?」/MSBPは児童虐待の一類型/メードゥ医師の注意書き/仙台筋弛緩剤点滴混入事件/「代理による虚偽性障害」/診断基準としての動機/MSBPと否認【アンソニー事件】/「児童虐待病?」/動機と殺意/演技性人格障害とMSBP/人格障害と責任能力/筆者の考え

    第七章 点滴汚水混入事件 157
    初のMSBP裁判員裁判/事件の概要[次女][三女][四女][五女]/本件の争点/MSBPについて/精神鑑定の内容/検察側と弁護側の最終意見/判決 (1) 犯行について (2) MSBPについて (3) 量刑

    第八章 MSBP概念はどこに行くのか? 193
    喜びと悪夢/「殺人容疑で逮捕します」/再度の再審請求、そして無罪/メードゥによる魔女狩り/がけっぷちの小児科医たち/メードゥの失脚、そして/MSBPのこれから/MSBPは「症候群」である/PCFとFDP/MSBPは、もうなくなるの?/児童虐待のさまざまな局面[介入の第1段階][介入の第2段階][介入の第3段階]

    あとがき(二〇一〇年七月 南部さおり) [225-229]
    参考文献 [230-231]



    【抜き書き】
    ・第三章「MSBPの母親の特徴とは」第三節「MSBPの母親のプロファイル」より。ある要因の重みづけについての推測。
    ――――ここから――――
     しかし、MSBP加害者がほとんど常に母親であるということの原因を、ジェンダーの弊害としてとらえる考え方には、異論も唱えられている。例えば、法医小児科医であるローゼンバーグは、『虐待された子ども』(前掲)の中で、精神科医のシュライアーたちが「MSBPの母親の背景要因」として強調する、「幼い頃に親に蔑視され情緒的にネグレクトされた体験の深刻な影響、および社会におけるさらに規模の大きい女性蔑視」という分析について、以下のように切り捨てる。

     しかし、同じ社会に生活している女性のほとんどがMSBPの加害者にはなっていないという事実は、MSBPの加害者は「男女差別という憎むべき害悪」と関係しているというよりも、「女性(母親)という立場の自分勝手な、ひねくれた濫用」と関連があるといったほうがいいだろう。

     母親によるMSBPをジェンダーで説明することはが容易であるが、しかし安易でもあるというローゼンバーグの指摘には、かなり説得力がある。
    ――――ここまで――――

  • 人は怖い(;´Д`A

    病気というもの、特に精神疾患、そして裁判というものがどういう繋がりになっているかがわかる本でした。

  • ニュースでこの症候群を聞いた時には、非常に珍しいものと思っていたのですが、この本を読んでそうでもないと知り、意外でした。この症候群のなりたちや責任能力などの周辺問題も分かりやすく書かれて、読みやすかったです。

  •  代理ミュンヒハウゼン症候群(MSBP:Münchausen Syndrome By Proxy)について、その症例報告を参照しながら概要と特徴を解説し、司法の場、ひいては社会においてどのように認識されるべきかを論ずる。著者は法学部を卒業したあと医学博士を取得した、法医鑑定と刑事司法の専門家。

  • ずっと精神疾患の1種を表わす言葉だと理解していたのだけれど、そうでは無くて児童虐待の1つの形態を表わすものなんですね。いずれにしても、苦しみながら亡くなった子供達はとても可哀想。

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著者プロフィール

日本体育大学スポーツ文化学部武道教育学科准教授・医学博士。高知県生まれ。
専門分野は法医学・刑事法学・スポーツ危機管理学。児童虐待やスポーツにおける体罰・ハラスメントに関する問題を、医学・法学等の分野横断的なアプローチで研究している。

「2021年 『親の手で病気にされる子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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