女子少年院 (角川oneテーマ21 C 72)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047041523

感想・レビュー・書評

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  • 元法務教官の方の書かれた本。
    女子少年院の中でのことや、そこに来る子どもたちのことについて知ることができ、とても参考になりました。

    加害性がなぜ生じるのかの説明に納得。
    加害者も、過去を遡れば被害者。
    自分を受け入れて、初めて罪と向き合える。

    本当に、早目に子どものサインに気が付いて、早目に心の手当をしたいと思うのだけれど、私は在宅での支援の難しさを痛感しています。
    限られた社会資源と勤務時間で、どう援助関係を築き、支えていけばいいのか。
    「子どもの安全」を、どう確保すればいいのか。

    今の時点でできることは、相手を想い、まっすぐに心に向かって、私の気持ちを伝えること。
    ささやかだけれど、まずはできることから。

  • 元刑務官が書いた、女子少年院に収監される少女たちの実像と処遇の実際。

    この本を読んで一番思ったのが、少なくとも少年院においては、処遇の一部に「保護者への定期的なカウンセリング」を必須にするのが一番の良策なんじゃないかということ…

    じゃないと元に戻ったときに環境が同じ…

    「保護者」というのは、両親揃ってるなら両親ともね。

    それほどまでに、退院前の親との面会が…酷い。
    まぁもちろん、印象的なケースを書いてるからそうなんだろうけど…。これは先が思いやられる、安心して出せない、出して挫折したとしてもそれは本人だけを責められないなと、感じた。

    それと、刑務官にも定期的・継続的なカウンセリングが必要では。それほどまでに、葛藤が深い。

    とはいえ、筆致はさらりとしており読みやすい。

    1カ所だけ、被害者と加害者が向き合うことで「癒しと和解が始まる」って書いてあるところ…「和解」って言葉に違和感がある。
    被害者にしたら「和解!?はぁ?ふざけんな」だよね。「和解」って…。そんな対等なもんじゃないでしょ…
    なんの因果で「和解」しなきゃならないんだ…

    ちょっと配慮が足りないというか、そういう認識なのは、この方が刑務官であり、加害者側の立場に立ちすぎているからではないか。

    「まず本人が自分自身を受け入れられるようになって初めて、加害者としての自分と向き合えるようになる」というのはそうだろうと思う。映画『プリズン・サークル』なんかの描いている世界がこの先にはある。

    「犯罪は、非常識に棲むがゆえにできる行為」であり、「彼らが罪に目覚め、被害者に謝罪し、責任を取り更生するためには、彼らを非常識から常識の世界に連れ戻さなければならないのである」というのも、その通り。だからこそ真の更生の道のりは遠く、難しいのだと思う。

    それと、最後に、受容的関わりをすればいいってもんじゃないっていう話が出てくるけど、これねー。心理臨床の関わり合いが、下手に応用され誤解されて広まってることの弊害だと思う。なぜに心理臨床が、24時間じゃなくて、1時間なら1時間と区切ったなかで行われるか。心理臨床は「傾聴」だけじゃないんだよ…なんのために理論を学ぶのか…。そういう背景がなく、「受容、受容」「傾聴、傾聴」って浅薄に心理臨床外の日常に取り入れる…それを賞賛するような安易な風潮…そういうものが、残念な結果を生んでると思う…。
    「受容」が悪いんじゃないんだよね…。
    その辺が、誤解があるんじゃないかなぁと思った。

  • ちょっと前の本ですが,手に入ったので,通読しました。いろいろなことを考えるきっかけになる,とても良い本だと思いました。

  • 女子少年院の仕組みの説明とかはなくて、著者がいかに受刑者(?)と関わり、彼女たちが改心していったかが、なんだか小説みたいに詳述されている。
    脊髄反射的に「悪いことした奴は人間のクズだ!厳罰だ!」と反応しがちな人にとっては、「悪事」の裏に実はいろんな背景があることがわかっていいんじゃないかな。

    ただ逆に「いろんな背景」だけに注目しちゃって、「本人の罪」を度外視する態度につなげないようには注意しないといけない。
    後半の「被害者と加害者の和解」の話もそう。確かに「美談」だとは思うけれど、和解なんて絶対にできないケースもたくさんあるはず。
    「和解することがすばらしいことで、そうでない被害者は狭量だ」みたいな空気だけは、絶対に醸成してはいけない。

    てな感じで、バランス感覚を要求される本のように思う。

  • 先生のために物語を・・・・

  • 売春、覚醒剤、恐喝、集団リンチ・・・。様々な罪を犯した少女たちが、更生を目指して生活する女子少年院。法務教官として12年間、少女たちの矯正教育に携わった著者が綴る、現場でしか知り得なかった少女たちの叫びとメッセージ。

  • 簡易な語り口で非常に読みやすく、3時間半ほどで読み終えてしまった。
    女子少年院に教官として12年間も勤めた方の、少年犯罪や少年院の現実を綴る本。
    アカデミック系が苦手な人にも触れやすい一冊。

    学校外における教育を考える時に役立つ。
    社会が子どもや家庭をいかに見守っていくか。
    セーフティネットとしての教育とは。
    家庭の齟齬が生む子どもへの影響とは。

    一般に知られにくい教育の場から、子どもの問題を考える。
    普段とは異なる視点から教育を考えてみたい方にオススメ。

  • 女の子は男の子とはまた違った問題性があり,それゆえに処遇の難しさもある。

    「少年院に入ることになったのは親の責任だ」
    とするのは簡単だし短絡的にも思える。
    ただやっぱり家庭という最小単位がうまく機能することが,子どもが安全に問題を起こすことなく成長していくためには必要だと改めて実感した。

    そして,入院するまでに傷ついたり追い詰められたりしないようにするには社会でのシステムやプログラムが必要。
    単なる理解や認識の枠組みを作るだけでもかなり違ってくるんじゃないかな。

    ただ,こういうの読むたびに少年院での取り組みでしか無いのかなとも思ってしまう。
    出院後の社会環境をどのようにすべきなんだろうか。
    いろいろありすぎる…。

  • 珍しい女子少年院に関する本。
    他の(少年)犯罪でもよく示唆されているように、多くの加害者が難しい家庭環境に育ったこと、そして必要な時に十分な助けが得られていなかったことが心に残った。
    これから育てられる側から育てる側へ立場が変わる者として、責任の大きさを感じた。
    よく言われる世代を超えた暴力の連載は、いったいどの様にして断ち切ることができるのだろうか。

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