和歌史 なぜ千年を越えて続いたか (角川選書 641)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047036536

作品紹介・あらすじ

人々は、万葉集の時代から言葉と人による網目のような縁をつくり、あるときには「本歌取り」を通して時代をこえた会話をし、一時代にはグループを作って時代ごとの言葉の塊を形成してきた。本書では、和歌の縦の歴史を追いながら、言葉と言葉によってできた網のようなつながりを解き明かす。表現の背後にある観念を析出し、系譜化する。和歌研究の地平をひらく画期的な書!

感想・レビュー・書評

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  • 外国語で書かれた文学を読みこなすように特別なリテラシーが必要とされる自国の文学、あるいは歌会始や新聞の歌壇や同人誌のように高齢の人々のコミュニティのような文学…和歌は馴染んていない人にとっては「関係のない」文学であったりします。新年号の選定に万葉集が関係したニュースは、単なるニュースとして多くの人のナショナリズムを満足させただけに終わった感もあります。それは現代の問題だけでなくいつの時代でも和歌は国民文学になったことはないのではないか?とも思います。それでも本書の副題にあるように「なぜ千年を超えて続いたか」?その謎についての作者の持論を展開する本です。先ずは「和歌を作る人と味わう人は、必ず重なっている」というスタートラインがユニーク。今でいうアクティブ・ラーニングを持ち出し、教育と和歌をつくることの双方向の関係性から、和歌が主体性の営みである、といいます。そこから、和歌にとってイノベーションを起こした作者列伝が怒涛に連なります。目次のオールスターが、和歌史そのものになっているので備忘として記します。額田王-宮廷に演じる、柿本人麻呂-劇を歌う、山上憶良ー到来するものへのまなざし、大伴家持-和歌史を始める、在原業平-生の境界で歌う、紀貫之-言葉の想像力を展開する、曾禰好忠-身の想像力を解放する、源氏物語の和歌-創作感覚を刺激する、和泉式部-生と死を越境する、源俊頼-連動する言葉と創造力、西行-変貌を演じる、藤原俊成・定家-「古典」をつくる、京極為兼と前期京極派-あわいにひそむ意志、頓阿-正統派和歌の普及者、正徹-想念と感覚にまぎれる、三条西実隆-「みやび」を守るしたたかな精神、細川幽斎-戦国を生き抜く歌道、後水尾院-和歌の価値を高めた天皇、香川景樹-溶け込んでいく「しらべ」…正直知らない歌人がいっぱいだけど、彼らが定型のバトンを受け継ぎ続けつつ、新しい意趣を込めていった芸術なのでありました。祈り、現実から理想への境界、そして作者としての演技、さらには縁語、姿、しらべで言葉を連動させていく、というフォーマットが決まったいるからゆえの自由な表現を和歌自身が獲得していった歴史、それが和歌史なのでありました。

  • 和歌史を、時代を代表する歌人にスポットを当てて解説する。和歌は詩であり祈りである、そして集団的な思いが刻印された社会的な詩である。現実と理想といった境界の表象は和歌にふんだんに登場する。
    額田王、柿本人麻呂、山上憶良、大伴家持、在原業平、紀貫之、曾禰好忠、源氏物語、和泉式部、源俊頼、西行、藤原俊成と定家、京極為兼と前期京極派、頓阿、正徹、三条西実隆、細川幽斎、後水尾院、香川景樹。
    実際歌集を読んでみようかな。

  • 和歌のことはよくわからないけど、訳を読むと当時の人たちが感じた想いや気持ちに自分の思いを重ねられるようで、時代を超えて心が通じ合えた気がして素敵だなと思っていた。そんな初心者にとってもこの本はわかりやすく、和歌の歴史をひとりひとりの歌人の作品と一生を振り返りながら解説してくれる。和歌とはいったい何なのか?が語られている「はじめに」がもういきなりわかりやすい。初めて和歌のことを知るガイドブック的に手元に置いておきたい本。

  • 2021/10/25

  • 万葉歌人から江戸時代まで節目ごとの著名な歌人を取り上げて和歌の歴史をたどる本。
    和歌に歌われた普遍的な人間の心に共感する。

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著者プロフィール

1957年、東京都生まれ。
東京大学大学院人文社会系研究科教授。
和歌文学専攻。
『中世和歌の生成』(若草書房、1999年)、『中世和歌史論 様式と方法』(岩波書店、2017年)

「2020年 『和歌史の中世から近世へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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