平安朝 皇位継承の闇 (角川選書 550)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047035508

感想・レビュー・書評

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  • 狂気の天皇とされた、平城天皇、陽成天皇、冷泉天皇、花山天皇について、古記録や説話を一つ一つ丁寧に読み解いていく。

    世間一般的に狂気であった、精神的におかしかったとされる天皇達だが、本当にそうであったのか。
    狂人だったから天皇の座を追われた、という解釈が通説であったが、本書はその点に疑問を呈している。狂人と言われているのは随分後の時代に書かれた歴史物語や説話集からなるため、作者の創作であったり、狂人ということで利を得る誰かがいるのでは…ということ。
    つまり大化改新と同じように、勝者側に都合よく作られた歴史ではないか、という結論。

    逆に正常であったことを示す史料があるのかわからないが、結局のところどうだったのかわからないのが歴史の面白さ。
    ただ、花山天皇は特に狂気だったと有名だが、YouTubeのおもしろ動画などに書いてあることはあまり鵜呑みにしないようにしようと思った。

  • 狂人とされた天皇は、本当にそうだったのか。4人の天皇に関し、その説に疑問を呈していく。レッテルを貼った元の書物は、死後何十年、百何年も経過しており、当時では普通の出来事が、異常なこととして広がっていく様が分かります。本来であれば聖帝とも言えそうな人物が、なぜ貶められていったのか。ただ歴史史料ってだけで信頼はおけず、その裏に秘められたことこそ重要だと、久々にわくわくして読みました。

  • 基本を知っているのを前提に書かれているので、知識のあいまいな私にはちょっと解り辛かったです。

  • 古来「狂帝」とされてきた平安期の4人の天皇について、その通説に反論を試みた書。
    今となってはどうしたって答えの出ない問いではあるのだが、当たり前のように狂人と断じられてきた、その根拠もまた薄弱で信憑性に欠けていた事実をひとつひとつ指摘することには、小さからぬ意味があるだろう。著者の姿勢はあるいはやや牽強付会的に思えるかもしれないが、それこそまさしく鏡のように、「狂帝」派の姿を映し出すものなのである。

    2015/9/16読了

  • 歴史は勝者側が作る、という見解がよい。

  • 武烈・平城・陽成・冷泉・花山天皇を狂気に仕立てる要素として、時の政権との関わりを重視し、作られた話としています。結論には概ね賛同です。悪意・歪曲はたぶん事実だと思います。特に六国史が排斥した立場の人が編纂しているし、文学資料はもともと虚構です。
    問題点。その1。若気の至りでの暴行などは、思春期の人間にあり得る特性で、それ自体は問題ではありません。これは庶民の立場ならいえることで、嫡流でしかるべき帝王教育を受けた天皇の立場、当時の常識から言えば、やはり非難されるべきことと思います。
    その2。文学作品は確かに天皇の狂気を引きずっているものも多いですが、一方で敗者の立場での作品も少なくないのです。有名なところで伊勢物語。これを平城・陽成天皇と関連づけると、また違った解釈になると思います。

  • 「狂気」の天皇とされている、平城・陽成・冷泉・花山の4天皇と、その導入として武烈天皇を詳述。
    読み進めながら、この4天皇についての印象が先行研究(というか発表)によるものだということがよく分かった。
    いわゆる「一級史料」からは「狂気」という判断は軽くできるものではなかった。
    また本来正統な流れである嫡流からの転換においてこのような「狂気」を、理由づけに流布してきたというの指摘はなるほどその通りであると思う。
    それにしても、あまりに「狂気」のイメージがついていてこの4天皇の事績を正当に評価するのは、歴史学者をもってしても難しいのだなあと認識させられた。
    とても良い一冊だった。

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著者プロフィール

1958年、三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学。主著に『平安朝 皇位継承の闇』『皇子たちの悲劇』(角川選書)、『一条天皇』(吉川弘文館)、『蘇我氏』『藤原氏』『公家源氏』(中公新書)、『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(講談社学術文庫)、『藤原道長の日常生活』(講談社現代新書)などがある。

「2023年 『小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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