今はじめる人のための短歌入門 (角川選書 5)

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  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047030053

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  • p.57 短歌は一行詩ではなく、五つの句をもった分節詩である。
    p.76 短歌におけるデッサンとは、名詞の選択である。
    p.82 一般的な表現から抜け出そうとすること→個別化への指向
    p.141 個人的状況を説明しすぎない。感情を理解してもらうことを第一に。
    p.148 特殊な題材、場面こそ初心者にふさわしい。
    p.149 三十一文字にまとめただけでは歌とはいえない
    p.150 常套句を徹底的に避ける


    以下引用。

    或る意味で、歌いはじめと歌い終わりは――初句と結句は、無限の距離にあるべきです。はじめから結句のわかっている歌など、だれが詠む〔ママ〕でしょう。初句にはじまって、第二句、第三句と進んでいくうちに、予想外の言葉があらわれてくる。そのたのしみにこそ、短歌のすべてがあります。短歌は、たった三十一文字ですが、三十一文字の一行詩ではなくて、五つの句をもった分節的な詩であります。文節をもつところに、ひそかに、この短詩型の生理が息づいている、と思うべきなのです。(p.57)

    絵画とくらべながらいわれる場合の「デッサン」とは、まず、名詞の選択ということなのです。いわば、線描におけるたしかな線が、この名詞にあたるのかも知れません。(p.76)

    詩や歌は、《一般的な表現》をきらうのであります。《一般的な表現》から抜け出そうとするのであります。この努力の方向を《個別化への指向》と呼んでみましょう。(p.82)

     自分以外の人によって理解され、場合によっては賞賛をうけることは、たのしいことですし、それを目標にして作歌するのは、わるいことではありません。
     ただ、その時に、〈歌のなかにこめられている感情を理解してもらう〉ことを、第一に考えることです。〈歌をとりかこんでいる個人的な状況説明を理解してもらう〉ことは、必要がないということです。(p.141)

     常識的で、ありきたりの心のうごきは、初心の人にとっては、歌にしにくい題材だとかんがえておいて、まず、まちがいがありません。
     特殊な、ある意味で人に伝えにくいような体験。自分だけの味わっている感情。人生に二度も三度もありえないような体験。それをまず第一に、歌にしようとして下さい。(p.148)

     だから、従来、あなたの先生や指導者たちが、自分の身のまわりを見まわして、ありふれた日常的な事実から、短歌を作るようにすすめて来られたとすれば、(中略)それは、はじめからおそろしくむつかしい要求をして来られたのです。(後略)
     それよりは、今までの人生の上で、あるいは最近の体験のなかで、いま苦しいほどに特殊な状況をえらんで、くりかえし、その時の感情をおもいおこしつつ、歌ってみるのがいいのです。(p148-149)

     その人は、その挽歌や戦争体験をうたうときにこそ、歌人だったわけです。それ以外のときは、作らなくてもよかったのです。三十一文字にまとめあげるぐらいは、だれでもできますから、一見すると歌のようにみえたのですが、それは形だけのもので、歌に魂が入っていなかったのです。(p.149-150)

  • 作歌の分かりやすい羅針盤。これからも折に触れ読み返し、少しでも前に進めればと思います。

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著者プロフィール

1928年名古屋市生まれ。慶應義塾大学医学部卒。内科医。医学博士。1945年17歳で短歌を始める。翌1946年 「アララギ」入会。1951年現在編集・発行人をつとめる歌誌「未来」創刊に加わり、逝去直前まで編集・発行人をつとめる。1983年歌集『禁忌と好色』により迢空賞受賞。2010年 詩集『注解する者』により高見順賞を受賞。2015年『暮れてゆくバッハ』(書肆侃侃房)。『『赤光』の生誕』など評論集多数。日本藝術院会員。2020年7月10日心不全のため死去。享年92歳。2022年に遺歌集『阿婆世』(砂子屋書房)が刊行される。

「2022年 『岡井隆の忘れもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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