Web3とメタバースは人間を自由にするか

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046055729

作品紹介・あらすじ

・トークンで「推し」が社会の基盤になる
・自動運転車の「第四の居場所」化とは?
・直感的な操作性(ゼロUI)がイノベーションを生む!
技術進化が暮らしに与える影響をわかり易く解説。

全ビジネスパーソン必読の「AI社会論」誕生!

安直な“ビッグテック崩壊論”も、ITリベラリストの成長至上主義も、
現実は置いてけぼりにしてしまうだろう――
近年のデータ収集攻防戦から論じられた“ビッグテックVSユーザー”という二項対立。
ウェブ3とメタバースの可能性について思索を勧めると、
誰も予測できなかった、「貨幣経済と贈与経済が重なった」未来社会の実像が見えてきた。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えてから裏表紙の近影を見て、著者の佐々木俊尚という人がアベマに出演している人だと気付く。だからという事は無いが、何となく一人納得。斬新な説やオリジナリティはこの本には無いが「見通す力」が素晴らしい。動的な情報の編集力が漲る本。知っている話ばかりだが、おさらいにも有益。そんな位置付けの著書。

    マニュアル等で説明できる知識を形式知、ベテランの経験や間でこなせるが言語化しにくい知識を暗黙知。AIはこの暗黙知を作り上げることができるようになった。言語をイメージにコンパイルだけではなく、何故か儲かる売り子の店内ポジション、画家の特徴を再現するなど、記号化されぬデータを深層学習し、非言語を再現するAI。最近落合陽一も力説していたが、この進化は凄い。

    パンとサーカス。プラットフォームが監視資本主義を起こし、大衆に与える承認欲求。まとめサイトのような情報のキュレーションの時代を今後はAIが担うことになり、レコメンド機能は既に普及。
    ビックテックにより、それ無しではいられないような、まるで薬漬けにされた「支配と隷従」の構造。大多数はAIとベーシックインカムに、極一部がAIを発展、利用するスタートアップに帰属する未来。

    タイトルで問われる自由とは何か。本著にも、移動が自由になる将来像は描かれる。日々の労働からも解放されるのだろう。しかし、承認欲求から解き放たれる事はなく、関係の必要性は持続する。自己に対して決定権を持ち、他者に対して支配権を得て、物理制約を超越する世界。つまり、脳内妄想をデジタルツインで生きる事も可能になれば、もしもボックスや独裁スイッチの世界だ。脳の報酬系を刺激するレバーを押し続けるラットに対する実験設備がようやく複雑な脳を持つ人間向けにも出来上がる。
    …果たして、それは、自由だろうか。

  • この本は、佐々木俊尚さんが考える
    「今注目されている技術を使ってこんな未来になれば素敵だよね」を紹介した本です。

    「そんな未来になれば確かに素敵だね」と私は共感したし、共感しない人は非常に少ないのでは無いかと思います。
    「素敵な未来」とはざっくり説明すると「人と人とが今まで以上に繋がり合う未来」です。

    ここまで見ると「この人、頭の中お花畑かなw」と嘲笑われるかも知れませんが、この240ページ近くの本を読み終わった後には「お花畑とか言ってごめんなさい」となるはずです。



    本書の1番のテーマは「関係と承認」だと私は思います。

    1.「トークンエコノミー」。
    Web3.0に必要とされる「ブロックチェーン技術」を利用した暗号資産のようなものです。

    単純にこの技術を利用しただけでは「ただのマネーゲームになっちゃうからダメだ」という事で
    「佐々木流」のアレンジが本書で提案されています。

    売買することによる金銭的な価値得られる役割を果たす
    「金銭的な価値」に加え
    「サービスとの交換の価値」
    「株式的な価値」
    を付与するというものです。

    「株式的な価値」には「クラウドファウンディング」に近く「魅力的な商品を作る人」「個人的に注目しているインディーズバンド」など、応援した人達のトークンを買う。もしくは買ってもらう、ということ。

    例えば

    『「あの頃応援していたインディーズバンドが今では紅白常連の顔になったな」

    あの日あの時、とあるインディーズバンドの演奏に心を釘付けにされた。
    お布施と応援の気持ちをこめて当時販売されていた「応援! 1000トークン」を購入した。
    それが今では「1000トークン」が「50000トークン」ときたもんだ。凄いなあいつら50倍だぞ。

    1000円で買ったものが今では50000円。

    儲けはデカい、が。
    しかし…あの日あの時購入した唯一無二の「トークン」を見ながら
    「私はインディーズ時代から応援している古参だぞ。儲けはでてもニワカにこれは金を積まれても渡さん」などと優越感に悦に浸るのもやめられないんだよなぁ』
    みたいな事が本書で書かれています。

    作品紹介でもあった「推し活」がこれで、「関係と承認」に必要な技術の1つです。

    2「メタバース」
    こちらも「関係と承認」に必要な技術の1つ。
    「メタバースとは何か」この説明はここでは省きます。

    私が特に重要だと思ったのが「アバター同士の目線と目線が合わさる」
    というこれはzoomやMMORPGにはないメタバースにしか無いものです。

    「目線が合わさる」ということは「私は見られているる」ということ。承認欲が強い人弱い人 様々いると思いますが「承認欲が無い」人は中々居ないと思います。

    「見られている」ことは実は非常に大事なことらしく
    「1997年 神戸児童連続殺傷事件」を例に説明されています。

    3.「ユニバーサル・ベーシックキャピタル」という経済の仕組み

    これは「ベーシックインカム」をパワーアップしたような仕組みです。

    『2008年のリーマンショックの時、倒産しかけていた金融機関に7千万ドルの公的資金を投入した。
    公的資金は元を正せば国民が納めた税金だ。リーマンショックがひと段落して再び金融機関が儲けを出しても国民には一切リターンが無い』

    また、
    『GAFAMなど巨大な会社はAIなどの技術で儲けを出している。その技術が磨かれたのは大学などの機関での基礎研究に税金を投入したからだ。
    国民のお金でAIなどの技術が進歩したのに国民への金銭的なリターンはあまり無い。(リターンを得た人と言ったらGAFAMの株で利益を得た人ぐらいだろう)』

    簡単にいうと
    「税金で救済を受けた企業、税金で成長した企業は法人税などを多く払い、多く払った分を国民に還元するべき」
    という仕組みが「ユニバーサル・ベーシックキャピタル」です。語弊はありますが大体こんな感じの仕組みです。

    「AIに仕事を奪われて大変だ」「しかしベーシックインカムを導入するには多大なコストがかかる」と昨今騒がれていますが、
    この制度があれば「全国民が住んで食べていける位のお金」はベーシックインカムで賄えるのかもしれないですね。

    必死に仕事をする必要が減るので余暇時間が増えます。
    「人と人とが(仮想空間などでも)触れ合う時間」も増えますね。

    4.最後に

    以上が本書のテーマだと思った「関係と承認」に特に重要だと感じた技術や仕組みです。

    他には
    「自動運転技術によって車内がエンタメ空間になる」とか
    「この世界とメタバース世界が相互作用する為に必要な技術」とか、
    「メタバースの行き着く先は『映画マトリックス』のマトリックス空間のような現実と区別のつかない仮想空間になるだろう」とか
    色々な技術が私達の暮らしをどのように変えていくのか。読んでいるとワクワクが止まらくなります。


    「未来は巨大企業やAIに支配された暗いものだ」と思っている人は少なくないと思いますが、
    「未来は思っていたよりも明るいものになるかもしれない」と少し救われた気持ちになる。

    そんな本と出会うことが出来ました。

  • 佐々木さんの最新作、早速手に取った。

    Web3やメタバースが進化することは、人々にどのような影響を与えるのか、自動運転も交えながら語られる内容はかなり前向きに感じた。
    支配と隷属、というのは本書のキーワードと思うが、この本を読んでいるとそれは必ずしも悪いことではないということを、教えてくれたように思う。

  • 途中までは雑な論考の印象であったが、これらの類の書籍に正確さを求めるものではないと改めて感じた。
    思考実験を見事に言語化したものであり、それにより読者に何が新しい気づきを与えられればそれで十分なのかもしれない。
    キュレーションの時代を読んでから参考にさせて貰っているが相変わらずでした。

  • あまり印象的ではなかった

  • 東2法経図・6F開架:007.3A/Sa75w//K



  • ベーシックインカム
    国が国民に定額の生活費を支給
    国民が企業のサービスを購入
    企業が国に納税する




    ユニバーサルベーシックキャピタル
    税金で企業を救済しても、救済した企業が儲かった時の配当は国民に分配されない。分配できるように政府系ファンドを作って分配すれば良い。

    ビックテックの支配
    ネットワーク効果とは同じサービスを使ってる人が増えれば増えるほどそのサービスを使うメリットが高まることをさす経済用語。内向きの閉じた世界。プラットフォームの支配下。

    21世紀の世界では表現力やコミュニケーション、対人能力の高い人が評価されやすい

    トークンエコノミーは消費だけじゃなく出資という立場で参加することになる。応援する、社会に参加している、承認欲求も満たされる
    そして投資する側とされる側はいつでも入れ替わる
    トークンによって応援というものが相互に網の目のようにネットワーク化されていく。
    関係と承認のテクノロジーという新しい可能性

    キャズム理論
    キャズム=深い溝
    アーリーアダプターとアーリーマジョリティの境目に存在する。この溝を越えることがマーケティングでポイントになる。

    メタモビリティ
    メタバースとモビリティ(移動)を掛け合わせた造語
    空間の移動と情報の移動の組み合わせ
    メタバース空間からリアル空間にアクセスできる世界観

    プロセスを楽しむ移動をシリーズ移動
    ただ移動することだけが目的のネクサス移動
    →あらゆる移動はネクサス移動になる
    ※車の中がフォースプレイスになったり

  • ★内容ざっくり
    ・ウェブ3 DAO トークンエコノミー
    NFT 用語の理解

    ・ビックテックからの脱却を目指しているが、結局は権力奪取ゲームになっている。エリートと落伍者の差はどんどん開いている。
    上のような新しい技術が出てきて、どのように未来が変化していくかの著者の考察。


    ★感想
    没入と摩擦。
    自分の手先のように自然にネット世界に入り込む「没入」と、リアルな感覚や人間関係を感じられる「摩擦」どちらも必要と言う著者の意見に同意する。

    大変便利な時代が待っている予感。賢い金持ちや大企業に支配されてしまう恐れもあるが、同時に便利で楽しい時代が持っている予感もしている。
    今はまだ移行期間。今後も注視していきたい。

    金持ちと貧乏人、頭良い人と悪い人、善人悪人そういった差はいつだってなくならないと思う。


    。。。。。
    用語

    ◉ベーシックインカム
    企業は国に法人税を払い、国が国民にベーシックインカムを支払う。国民はそのお金を使って企業のサービスを買う。
    今までとの違いは、企業から国民に支払われていた給与が国から払われる流れになること。

    ◉今後予想される二極化
    市場拡大を目指す人(エリート)と、その恩恵を受ける人(落伍者、ベーシックインカムを受け取る人)


    ◉ AIのできないこと。
    どうしてその結果になったのかの理由は説明してくれない
    データがないところから(ゼロから) は作り出すことができない

    ◉ウェブ3
    ブロックチェーン技術を使って作られた
    特定の企業に依存しない分散型インターネットの総称

    ◉DAO(自律分散型組織)
    株式会社のアップデート型
    同じ目的を持つ人たちが集まって、資金を集め、共同で管理する。独自のコミュニティーを築いたり、NFTを収集したりする。


    ◉NFT(非代替性トークン)
    ブロックチェーンを使って、アートなど作品に唯一性を持たせる技術
    仮想通貨


    ◉メタバース
    キーワードは3Dと近接


    ◉UIとUX
    UXはユーザー体験

  • Web3になっても、ブロックチェーンを使っても、管理者のいない完全な自由な世界ではうまくいかない。社会実装は難しい。トークンを用いた、関係と承認の世界が求められる。
    トークンを活用した関係と承認をベースにしたコミュニティという世界観には納得感がある。ただ、それって、Web3でなくても、ブロックチェーンでなくても、既存のテクノロジーを用いても実現できるのではないだろうか。トークンがどこまで一般的に受け入れられるか不透明ではあるし、無理にWeb3と結び付けて語る必要もない気はする。

  • こちら(↓)で書評を書きました。

    https://www.rinen-mg.co.jp/web-rinentokeiei/entry-5398.html

    Web3とメタバースの単なる入門書ではない。
    それらがいまのネットのように「あたりまえ」になった先に、何が起きるのか? 社会がどのような方向に変わるのかを見据えた論考である。

    いまはWeb3もメタバースも、一攫千金を狙う山師たちが多数群がっている状態だ。
    著者はそのことを認めつつ、それを過渡期の現象であると捉え、いわゆる「キャズム」を越えたあとの未来の激変に希望を託す。

    メタバースもWeb3も、《「関係と承認」の新たな地平を目指すことになる》と……。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2022年 『楽しい!2拠点生活』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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