Learn or Die 死ぬ気で学べ プリファードネットワークスの挑戦
- KADOKAWA (2020年3月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784046040497
作品紹介・あらすじ
プリファードネットワークス、通称PFN。
2019年、日本ベンチャー大賞受賞。日本屈指のユニコーン企業。2014年の創業(2006年にPFI創業、2014年にPFN創業)以来、錚々たるリーディングカンパニーの数々と共同研究を重ね、自動運転、ロボット、がん診断にはじまるバイオヘルスケア等々の課題解決に挑む、天才技術者集団――。
新聞や雑誌で語られるPFN像といえば、こんなところだろう。
しかし、実際のところPFNは何をしているのか。若き創業者たち(本書の著者、西川徹社長と岡野原大輔副社長)は何を考え、どんな未来を描いているのか。
本書では2人の創業者が、ベールに包まれていたPFNの仕事、そこで働く人々の描く未来、深層学習の可能性をつまびらかにする。
・天才集団とすら呼ばれているのに、なぜ「Learn or Die 死ぬ気で学べ」なのか
彼らは答える。PFNが挑戦しているのは変化の大きな分野であり、その中で最先端であり続けるためには、学ぶことが唯一の方法だ。未来を切り拓くために、私たちは、学び続けなければならない。
・パーソナルロボットの夢はこれまでに何度も語られてきたが実現していない。本気で作ろうとしているのか。
彼らは答える。もちろん可能性があるからやっている。私たちは、できるとわかっていること、誰でも実現できることはやらない。
・日本を代表するスタートアップ企業と聞けば、カラフルで華やかなオフィスが想像されるが、飾り気がない。なぜか。
彼らは答える。PFNには、洒落たオフィスにお金をかけるより、コンピュータ(GPU)を1台増やすほうがいいと思う人しかいない。
――9割にも及ぶ失敗を推奨し、成功率10%以下の仕事に挑み続けるPFNの思考とは?
感想・レビュー・書評
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プリファードネットワークス(PFN)の創業者西川さんと岡野原さんのビジョン、事業内容そして未来。PFNの見据える未来は頼もしく、ずっとワクワクしてました。
各人が学び挑戦し続けると同時に、違う特技を持った人と謙虚に繋がってチームで解けない問題に挑戦する。組織の作り方としても参考になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
PFNがプロセッサ(アクセラレータ)の独自チップ開発をしていることを知ったときは、「早い!」と思っていたが、なるほど、西川氏がハードよりの方ですぐにその必要性を理解されていたからなのだろうと悟った。
本書においては、PFNの沿革がストーリー仕立てで分かりやすく記されており、特に会社としての行動規範や哲学、考え方にふれることができる。
個人的には7章以降に金言が多かったと思う。勢いがとてもよく伝わってくる。
読んでよかったと思える1冊。 -
刺激的な題名だなと思って手に取った為、恥ずかしながらPFNのことは全然知りませんでした。本の内容はPFNがどのような会社で何を目指しているのかでした。凄い企業が日本にあるのだと知れて良かった。大人になったら学ばなくて良いと、学生の頃思っていましたが、社会人になっても仕事する為にはある程度学ばなくちゃいけない。ただ、その学ぶレベルや量がPFNの人達は全然違う。彼等程にはなれなくても、頑張らねばと身が引き締まる思いでした。パーソナルロボット産業はまだ覇者がいないと思うので、イーロン・マスク等に負けず、頑張って頂きたい!
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何故か「ストーリーとしての競争戦略」を連想しました。世によくあるHow Toやベストプラクティスはなく、あるとするなら疑え。経験に甘んじることなく常に学び続ける。とてもパワーを貰えるし、読者が行動を起こせるように非常に理解しやすい言語セレクトがされている事が印象的。こんな文章を書く人ほど、非常に優秀なのだろうなと感じる。そもそもこの本が何のためにリリースされているのかを実感する。
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成功率10%以下の課題に挑み続ける。
PFNバリュー
Motivation-Driven 熱意を元に
Learn or Die 死ぬ気で学べ
Proud, but Humble 誇りを持って、しかし謙虚に
Boldly do what no one has done before 誰もしたことがないことを大胆に為せ
IoT × AI
深層学習+ロボティクス、クリエイティブ、スポーツアナリティクス
深層学習専用プロセッサー MN-Core
ファナック
ロボットがロボットを作っている
機械学習が機能する領域はロボット、物理世界での問題をAIとロボットで解く
自動運転
シミュレーター×強化学習 報酬の計算
ゲーム
強化学習で自分と同じくらい強い相手をつくり、学習する
生成モデル
深層学習の派生技術 教師なし学習 似た事例を生成
深層学習
汎化能力 「確率的勾配降下法」 適当なノイズを入れて追試する
インターネット時代の研究開発
自分以外が優れたアイデアを出す可能性はすごく高い。
外部のアイデアを見ながら自分たちができるところを探る。
フレームワークでは機能差がなくなり、競争の源泉が移り変わった。
技術を作るために
一人では絶対できないことをやるために会社を立ち上げた。
エキスパート同士が分担し、繋がり、理解する。
一匹狼では会社は知識を吸収できない。
500年後のテクノロジー
今と全く異なったものになる、今から500年前を振り返っても何もなかった。
製造業
モノを作っているからできることがある。
今のハードウェアは人が設計しやすいようにできている。
将来は深層学習が設計まで踏み込める。人ができない並列で考えることができる。
ロボット
手と足がついたコンピュータになる 自動車もロボット
パーソナルナルロボット分野に取り組む
目は人間にほぼ近いものができている
手=アクチュエーターはこれから
プログラミングのハードルを下げる=ビデオ予約と同じくらいの感覚に
人間ができている情報処理能力を与えるためには ソフトとハードを密に融合
今のロボットもロケットも モデルベースの制御技術、AIではない
ルールベースから、「学習ベース」になると複雑な制御も可能になる
エッジでもクラウドでもない最適化=ネットワークの革新
コンピュータネットワークにも人間の細胞同様、免疫システムを
順当にやることはGAFAのような大手がやる。
できるわけないと思っているところに解を探す。 -
著者が大事にしていることを理解できた。
深層学習、強行学習についてもたくさん触れられていて、
とても勉強になった。
★motivation driven ; 熱意を元に
自分たちが自ら選び、成果と真剣に向き合う。
簡単すぎるコンフォートゾーンと、難しすぎるパニックゾーン、そのあいだにあるラーニングゾーン。
今よりちょっと背伸びできるタスクがラーニングゾーン。
ラーニングゾーンを目標に設定すべきである。
★演繹的なプログラミングから、帰納的な手法へとパラダイムシフトが起きている
★相手のことを尊重できて、自分自身にちゃんと取り込めているのかといった成長の軸が大事である
★どんどん新しいことにチャレンジし続けられる環境をつくること、壁があれば取り除いてあげることが私にはあっている -
プリファードネットワークス(PFN)創業者の2人、西川・岡野原が綴ったこれまでの軌跡と、行動規範・未来についてである。
PFNはAI技術を扱う会社でありソフトウェアとハードウェアの融合、AIを扱うロボットを目指す企業だ。
個人的には、GAFAに蓋をされたような日本において、未来に希望を抱くことのできる内容だった。
まさにGoogleのように研究開発重視の姿勢で20%のリソースを自由な研究に割き、組織も同じ方向性に立つ人材に限って採用する、まさに前に進み続けるためにある企業だ。
コミュニケーションを重視する姿勢も良くあるIT企業とは異なると感じる。
表題にもある当社のバリューのうち、Learn or Dieこそが躍進の源泉なのだろう。その他含めて
*Motivation-Driven(熱意を元に)
*Learn or Die(死ぬ気で学べ)
*Proud, but Humble
(誇りを持って、しかし謙虚に)
*Boldly do what no one has done before
(誰もしたことがないことを大胆に為せ)
どれも、らしさを、表している。
世界を変える様なことをできる彼らを羨むだけであることはもったいない、成功すると分かっていることは面白くないという気概で生きたい。 -
謎の天才集団というイメージが強いPFN。本書ではその天才性をまざまざと感じつつ、「学び続ける」「謙虚でいる」といった姿勢こそが肝要なのだということを伝えてくれる。
読んでいてここまでワクワクする企業ものもなかなかない。
研究開発を主体にした「なにをやっているのかよくわからない」企業への理解を深め、圧倒的に興味を持ってしまう魔力をもった一冊。 -
4つの行動規範
#1 motivation-driven 熱意を元に
#2 learn or die 死ぬ気で学べ
#3 proud but humble 誇りを持って、しかし謙虚に
#4 boldly do what no one has done before 誰もしたことがないことを大胆に成せ
自分が面白いと思えることに、もっと敏感になるべきだと考えた。人生は有限だ。面白いと思えることにフォーカスしないと、最大の成果は出せない。
面白いことをやらないなら生きている意味がない
スタートレック
To boldly go where no man has gone before.
ボーア象限 わかればよい
エジソン象限 動けば良い
パスツール象限 理解したいし、役に立つ
機械学習 解き方を教えるのでなく、正解の事例を大量に見せることによって、コンピュータ自身にパターンを見つけされる
深層学習 機械学習の一つ 深層学習によって可能になったのは表現学習
機械学習 教師あり学習、教師なし学習
現在のビジネスでリスクが低く使えると考えられているという手法は教師あり学習
誤差逆伝播法
強化学習 試行錯誤しながら学ぶ 思考していないことには何も覚えないので、滅多に起きない事象に対応するのが苦手
滅多に起きない事象を作ってみせる技術 生成モデル
人間の行動を観察することによって、人間の持つ報酬関数を推定する逆強化学習
敵対的生成モデル
確率的勾配降下法 わざとノイズを含んだ上でアップデート
深層学習の研究は職人と理論家が共同して進める領域
人の学習から学べることはたくさんがるが、一つの重要あテーマはメタ学習
ずっと学び続け、成長できる人かどうかを見極めるのは難しい。だが一つの重要あシグナルは「楽しんでいるかどうか」だと思う。面接でも自分のやりたい分野について熱く語るかどうかは重視する。
要は「知識を吸収したい」と考えているかどうかだ。
基本的には、誰もやったことがないことに挑戦する人、勉強し続ける人、あとは、謙虚であるひとを評価している
大まかにいうと、相手のことを尊重できて、自分自身にちゃんと取り込めているかといった成長の軸は非常に重要視している。
水樹奈々 深愛
絶対にできるということはやらないでほしい。それは我々でなくてもじつげんできるからだ。できない可能性が9割であってもいい。我々でなければ実現できないこと、できるかどうかわかないことをやってほしい
巷で言われていることを疑い、可能性の抜け穴を探せ -
825
これめちゃくちゃ面白かった。日本で一番注目を集めているAIベンチャー企業の歴史と経営思想と今後の展望が書いてある本。Learn or Die(死ぬ気で学べ)っていうのは企業理念の中で西川さんが一番気に入ってる理念の1つなんだけど、凄い良い言葉だなと思った。こういう志があるから、日本一のベンチャーなんだろうなと思った。学び続けなきゃいけないのはどんな分野でも言えることだと思う。良い本だった。
●西川 徹:1982年11月19日、東京都生まれ。2005年、IPA未踏ソフトウェア創造事業にて1テーマ採択。2006年、第30回ACM/ICPC世界大会19位。同年、Preferred Infrastructureを創業。2007年、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2013年、情報処理学会ソフトウェアジャパンアワード受賞。2014年3月、Preferred Networksを設立、代表取締役社長に就任、現職。声優で歌手の水樹奈々さんの大ファン。
●岡野原 大輔:1982年4月13日、福島県生まれ。2005年、未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定。2006年、Preferred Infrastructureを創業。2006/2007年、NLP若手の会シンポジウム(YANS)最優秀発表賞。2007年、東京大学総長賞。2009/2010年、言語処理学会優秀発表賞。2010年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。2014年3月、Preferred Networksを設立、2018年5月、代表取締役副社長に就任、現職。趣味は読書(歴史小説や技術論文)。
2019年、日本ベンチャー大賞受賞。日本屈指のユニコーン企業。2014年の創業(2006年にPFI創業、2014年にPFN設立)以来、錚々たるリーディングカンパニーの数々と共同研究を重ね、自動運転、パーソナルロボット、がん診断にはじまるバイオヘルスケア等々の課題解決に挑む、天才技術者集団――。
まず我々の会社の概要を説明しよう。PFNでは以下の四つを「バリュー」として掲げている。 1)Motivation-Driven(熱意を元に) 2)Learn or Die(死ぬ気で学べ) 3)Proud, but Humble(誇りを持って、しかし謙虚に) 4)Boldly do what no one has done before(誰もしたことがないことを大胆に)
2番目の「Learn or Die(死ぬ気で学べ)」については、私はよく「エンジニアはマグロのようなものだ」というたとえ話をしている。マグロは泳ぐのをやめてしまうと酸素を取り込めなくなり、やがて死んでしまうと言われている。だからマグロは海の中で常に泳ぎ続けている。マグロと同じように、エンジニアも新技術を常に取り入れ続けなければ死んでしまう。だからエンジニアはマグロのようなものなのだ。常に学び続けなければならいい。
筑駒はとても自由な校風なので、授業中も自分のパソコンを持ち込み、あまり興味のない授業のときはパソコンでノートを取っているふりをしながらプログラムを書いていた。だから総合成績は後ろから数えたほうが早いくらいの順位だった。その一方で、パ研でCGを扱うために中学2、3年生の頃から線形代数を勉強したり、興味ある分野は自ら深く勉強した。
念願かなって東大の理科一類に合格すると、同じクラスに、後に共同創業者となる岡野原大輔がいた。岡野原とは最初から気が合って、合宿やクラスのイベントでいつも一緒にいた。
岡野原はコンピュータや数学が本当に得意だった。一緒に仕事をする中で、私はいつも「すごいなぁ」と思いながら見ていた。
私はバグを見つけるのが得意だった。 コツがあるのだ。最初はあらゆる可能性を頭の中で考える。1回広げてみるのだ。バグは思いもよらないところに潜んでいる。見つけるためには想像を膨らませる必要がある。 後に、バグを見つける経験は会社でも役に立った。
岡野原は、あんなに賢い人はいないと思っている。何でも知っているし、何でも理解する。それを誰にでもわかるように説明できる能力を持っている。論文を読んでチンプンカンプンなことであっても、彼と3分間くらい話していると「なるほど」と理解できるようになる。本質的なところを抜き出してわかりやすく伝えるのが、ものすごくうまい。 技術だけではない。経営においても本質を見抜く力が優れている。どんな技術にも共通部分がある。コンピュータサイエンスにおいても、コアの部分を理解しておくと同じ考え方が様々な部分に適用できて、すんなり理解できる。そういった「勘所」をつかむ力があるのだ。だから岡野原は、どんな分野でもすぐにキャッチアップした。
社内のコミュニケーションツールは主にチャットツールの「Slack」を使っている。基本は完全にオープンで、プロジェクトに無関係な人でも、自分が興味のあるテーマや協力できそうなテーマだと思ったらすぐに会話に加わることができる。
ずっと学び続け、成長できる人かどうかを見極めるのは難しい。だが一つの重要なシグナルは「楽しんでいるかどうか」だと思う。面接でも自分のやりたい分野について熱く語れるかどうかは重視する。こちらからも専門分野についてはかなり踏み込んだ質問をする。そこで、その人なりの独自性が出てくるのかどうかを見る。
要は「知識を吸収したい」と考えているかどうかだ。そういうわかりにくいところは経営陣面接で判断する。ただ最近は、メンバーの面接スキルが上がってきているので、最終面接でお断りすることは以前より少ない。それだけ優秀な人が集まってきてくれているということだと思う。
私が想定していた以上にコミュニケーションを取ることに積極的な人が多い。一般的な人たちよりは技術の話をしていることも多いし、不特定多数の人がいる飲み会に行って「ウェーイ」とするようなノリではない。
基本的には、誰もやったことのないことに挑戦する人、勉強し続ける人、あとは、謙虚である人を評価している。できるかわからないこと、失敗するくらい難しいことに挑戦してほしいと考えているので、失敗で評価を下げることはしない。モチベーションも大事にしてもらいたい。行動規範として掲げるPFN Valuesに基づいて、評価項目を設定している。 大まかに言うと、相手のことを尊重できて、自分自身にちゃんと取り込めているのかといった「成長の軸」は非常に重要視している。人を助けることによって得られることもたくさんある。そういった協調性も重要だ。
私は技術書をたくさん読むが、経営書はたまに見るくらいだ。もちろん勉強になるところもあるが、3分の1くらい読んで「だいたいこんな感じかな」と思ったところで閉じるケースが多い。創業当初は実は経営書も読んでいた。だが、本を読むと影響を受けてしまう自分もいることに気づいてからは、本気では読まなくなった。
これまで会った人の中で印象的だった人の1人は、NVIDIAのCEOジェン・スン・ファン(Jen-Hsun Huang) 氏だ。すごくワンマンだが製品や技術を愛しているところに共感する。お互いにライバルでもある。
何にしても、人間はこうした変化に適応するために、生涯にわたって学習し続けなければならない。子供の頃に学習していたことがずっと役に立つという保証は以前からなかったが、最近はさらにそれが加速している。どちらかというと、大人になって必要に迫られた際、学習できる環境があるかどうかのほうが重要だと思う。だからもしかすると、現在のように「若いうちの 20 年間に集中的に学習する」という仕組みは、システムとしてなくなるかもしれい。
未来のデータセンター、スパコンは、今日のスパコンとは全く違ったかたちになるだろう。そういったものを作っていきたい。量子コンピュータは、おそらくその中の一部だ。
技術が本当に世の中に浸透すると、誰もその存在を意識しなくなる。今、インターネットやコンピュータに対して「うわあ、インターネットだ!」と、はしゃぐ人はもういない。技術そのものを知らなくても、誰もが当然のように生活や仕事などあらゆる場面で使っている。 AIやロボットも本当に社会に普及すれば、「自然にそこにあるもの」になる。そしてAIやロボットが存在しない世界が考えられないくらい不可逆的な変化が社会に起きる。 我々は、そんな変化の中心の一つになりたい。 我々が作る製品や技術が、世界が変わったときの中核の一つとなり、誰もがその恩恵を受けている──そんな世界を実現したい。 10 年でできるかどうかはわからない。だが、行けたらいいなと思っていた。
コンピュータについては小学生くらいの子供が一番面白く感じられるのではないかと思っている。コンピュータは大人になると仕事の道具になってしまう。だが、論理回路の面白さこそがコンピュータの面白さの本質だ。NAND素子を並べるとANDになって、2個のNAND回路を並べると1ビットの情報を保持できるフリップフロップの回路ができ、さらにそれらを組み合わせるとコンピュータが計算できるようになる。 そして、計算が世の中の仕組みを変えることすらできるのだ。この面白さを新鮮な気持ちで受け取ることができるのは小学生だ。だから私も、特に自分の子供には「将来はコンピュータを作るようになるんだよ。一緒に作ろうね」と言っている。 中学生くらいが相手だと「僕らはプログラミングの方法を変えたいんだ」と言っている。 今、プログラミングのやり方は大きく変わりつつある。ルールを書くのがプログラミングだ。これまでは人間が手でルールを書いていた。だが、これからはコンピュータが自分でルールを学習するようになる。これからの5年、 10 年くらいで人間はコードを書かなくなるだろう。本編でも書いたとおり、私たちは、人間がコードを書かなくてもプログラムを組めるようなシステムを作っているということになる。
私は巷で言われていることを疑うのが好きだ。 PFNでは経験を極端に重視する人は採用しない。自分の経験からしかものが見られない人のことは「経験厨」と呼んでいる。今は以前とは条件が変わってきているのだ。コンピューティングパワーも社会も変わってきている。一般大衆のあり方も変わってきている。 前提となる条件が全然違うのだ。「できるかできないか」を問うのではなく、「どこかに実現できる穴があるんじゃないか」と考えるべきだ。そこにチャンスがあるからだ。 逆に言えば、我々のようなスタートアップが勝つ道はそれしかない。 順当にできることはGoogle、Facebook、Amazonのような大手がやる。だから「穴」を突かないといけない。「当たり前だ」と思っているようなところに私たちが勝てる解はない。だから皆が今までの経験上「できるわけがない」と思っているところにこそ解を探していくしかないのだ。誰もやっていないことに取り組んでいるから「何をやっているのか、よくわからない」と言われるのかもしれない。 相手が大学生くらいだと、もう仕事を意識している人ということになるので、もうちょっと違う説明をする。私たちが今やっている領域は、現実世界に影響を与え得る領域だ。だから「現実世界の問題を解くためにコンピュータを活用しているのだ」と話す。 現実の問題を解くためには現実世界を深く知ることが必要だ。だが、現実を知ることは予想以上に大変だ。たとえば、製造業の現場に入り込むのはものすごく大変で、私たちは今、ようやく入口に立ったところだ。製造現場では、現在も多くの泥臭い作業を人間がやらなければならない。そういった作業のほとんどは、難しすぎてコンピュータには解けないと考えられている。私たちはそういう難しい問題を解きたい。