修養 (角川ソフィア文庫)

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  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044002237

作品紹介・あらすじ

当代一流の国際人であり教養人だった新渡戸稲造が、未来の日本を担う青年達に向けて記した実践的人生論。
自らの経験と深い思想にもとづき、人として生きるうえでの礼節や心構えはもとより、「不向きな職業を選びて失敗した実例」「打ち明けて頼めば反対者も同意する」「名誉を毀損されたときの覚悟」「新刊書はいかにして読むか」など、日常のなかでの必要な事例をふまえた啓蒙的内容に富んでいる。
百年読み継がれてなお、現代日本人に多くの示唆をあたえる不朽の名著、待望の新訳決定版! 解説/斎藤兆史


総 説
第一章 青年の特徴
第二章 青年の立志
第三章 職業の選択
第四章 決心の継続
第五章 勇気の修養
第六章 克己の工夫
第七章 名誉に対する心がけ
第八章 貯 蓄
第九章 余が実践せる読書法
第十章 逆境にある時の心得
第十一章 順境にある時の心得
第十二章 世渡りの標準
第十三章 道
第十四章 黙 思
第十五章 暑中の修養
第十六章 暑中休暇後の修養
第十七章 迎年の準備

感想・レビュー・書評

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  • 修養とは、教養であり、人を導くための指導者となるべき人間に書かれた書
    身と心との健全なる発達を図るのが目的とあります。

    気になったことは以下です。

    ・平素の修養があればこそ、非常の時の覚悟が定まる 「かかる時さこそ命の惜からめ、かねてなき身と思ひ捨てずば」
    ・いかに逆境に陥っても、その中に幸福を感じ、感謝の念をもって世を渡ろうとする。それが、僕のここに説かんとする修養法の目的である。

    ・青年ということは、先のまだ分からない、茫漠たる、青々と発芽した草葉の意味から生まれた言葉である。希望さえあれば、30になっても、60になっても、すなわち、青年というべきである。
    ・1の使命を果たせば、果たすにしたがって為すべきことが、限りなく現れ来る。いわゆる人間の理想なるものは、限りがなく、それが満足に達せられたという限度はないものである。
    ・百里に行くものは九十里に半ばす
    ・孟子 「大人はその赤子の心を失はざる者なり」
    ・青年は、不要な知識を知る必要はない。ゲーテの「ファウスト」にも、無用の知識を誹りて、「人は知らなくとも善いことを知り、知らねばならぬものを却って知らぬ」
    ・好きこそ物の上手なれ
    ・職業の選択が、その嗜好性質に適したものでなければならぬことは明白である。(自分の資質に合う職業を選択すべし)

    ・発心はやすく、継続はかたし
    ・ひとつの具体的の仕事をする時、中途で必ず厭になる。最後まで厭気を起こさずに、やり遂げることは極めて少ない。
    ・西明寺(北条)時頼 「幾たびか思ひ定めて変わるらん、頼むまじきは我心なり」
    ・徳川家康 「人の一生は重荷を負ふて遠きに行くが如し」
    ・怠らず行かば千里(ちさと)の外(ほか)も見ん、牛の歩(あゆみ)のよし遅くとも
    ・発心継続の修養法 発心の継続には発心を記憶せよ
    ・「ここだな」という観念 いかに些細な事柄を行うにも、おおきな原則を応用するえば、いつしか原則の極意に達する
    ・小事も原則応用のつもりでやれば興味多し いかにつまらぬように見ゆることでも、継続心の修養という原則に従って行うことであれば、何となく奥行が深いように思われる 原則に従うて行うものは、つまらぬことでも興味ありそうに見える
    ・末遂に海となるべき山水も、しばし木の葉の下くぐるなり 誠意はいつかはわかってもらえる時がくる

    ・勇だけあっても成功はできない 「義を見てせざるは勇なき也」 真の勇は徳義を去って存在しない 「仁者は必ず勇あり、勇者かならずしも仁ならず」
    ・源致雄 命をば、かろきになして、もののふの、道より重き、道あらめやは 

    ・沈勇:たえる勇気 君がため、いとど命のをしきかな、かかる憂目を見せじと思へば
    ・勇気を修養するものは、進む方の勇ばかりでなく、退いて守る方の沈勇もまたこれを養うように心がけなければならない。両者がそろって、真の勇気がなる

    ・克己:己にかつ 一遍上人 心をば、心の仇(あだ)と心得て、心のなきを心とは知れ

    ・大事に処する道は、小事の修養にあり
    ・西郷南洲(隆盛) 事に臨んで動かず

    ・一般の人が心を動かすもの 色情、利益、権力、名誉、の4つである
    ・日本には忠孝よりももっとよい言葉でキリスト教の愛に匹敵するに足る言葉がある、それは、「誠」である。誠は日本古来の言葉である

    ・人に自分が知られていないことを嘆くより、自分が人のことを知らないことを患う 論語

    ・頂点に立つよりも、謙遜の念をもってにふもとに住む 水戸黄門 位山登るも苦し老いの身は、ふもとの里ぞ住みよかりける

    ・憎むとも憎み返すな憎まれて、憎み憎まれはてしなければ 古歌

    ・不足していると思っていれば足りて、足りていると思うと不足する 事足れば足るに任せて事足らず、足らで事足る身こそ安けれ

    ・だんだんと善を積むことは、腐るものでないから、いくらでも積める。しかし、またちょっとでも油断すると、とかく消えやすく後戻りしやすい

    ・咲ざれば桜を人の折らましや、さくらの仇(あだ)はさくらなりけり 世の人の注目を集めてもそれが原因で苦境におちってしまう
    ・見ればただ何の苦もなき水鳥の、足にひまなき我が思ひかな 人からは楽をしているように見えても本人は非常な努力をしている

    ・人は逆境に陥ると、とかく冷静に考えないで、前後を忘却し、ただ困る困るといってやけになる。
    ・逆境に陥った理由を己に求め、今日かく逆境に至ったのは、己にありと観念をきめたなら、人を恨まなくなる
    ・逆境に陥ったならば、逆境そのものを善用して我が精神の修養に供するがよい
    ・世人の心というものは、平生得意の場合に互いに飾ってあった心の汚れも、逆境にあうときは、見苦しいまでその本性を表すものである

    ・油断大敵:人が油断するのは、とかく順境にある時である
    ・順境の人の警戒すべき危険
     ①傲慢になりやすい
     ②仕事を怠りやすい、本も読まなくなる
     ③恩を忘れやすい
     ④不平家となりやすい
     ⑤調子にのりやすい

    ・人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくが如し。急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。心に望み起こらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基。いかりは敵と思え。勝つことばかり知って、負くることをしらざれば、害その身にいたる。おのれを責めて、人を責めるな。及ばざるは過ぎたるよりまされり。徳川家康

    ・人生禍福の境地は、すべて、おのが心からつくり成すものなる
    ・明治天皇御製 波風の静かなる日も船人(ふなびと)は、梶に心を許さざらなむ
    ・処世の根本原因 根本的動機を確定しなければ、目前の問題が起こるごとに常にぐらぐらと動揺してしまう
    ・弘法大師 あししとも、よしとも、いかに、いいはてん、をりをりかはる人の心を
    ・この道はこうだということを知っていれば、眼がみえなくても、入る道を間違えない
    ・道といふ、ことばに迷ふことなかれ、あさゆう、おのが、なすわざと知れ 至道無難禅師

    目次


    総説
    第1章 青年の特性
    第2章 青年の立志
    第3章 職業の選択
    第4章 決心の継続
    第5章 勇気の修養
    第6章 克己の工夫
    第7章 名誉に対する心がけ
    第8章 貯蓄
    第9章 余が実験せる読書法
    第10章 逆境にある時の心得
    第11章 順境にある時の心得
    第12章 世渡りの標準
    第13章 道
    第14章 黙思
    第15章 暑中の修養
    第16章 暑中休暇後の修養
    第17章 迎年の準備
    解説

    ISBN:9784044002237
    出版社:KADOKAWA
    判型:文庫
    ページ数:480ページ
    定価:1080円(本体)
    発売日:2017年06月25日初版発行

  • 東2法経図・6F開架:159A/N88s//K

  • これはいい!何度となく繰り返し読みたい本になった。明治44年、100年以上前に刊行されたもので、時代の違いを補ったり、当てはまらなかったりするものもあるが、多くは普遍的で大いに参考にしたいと思わせる内容だった。

    修養とは修身養心、身と心の健全なる発達を図るのがその目的だとある。ものの考え方、捉え方、心構え、その実践にあたっての心得も著されている。

    特に、「迎年の準備」は、毎年忘れずに実践したい。ふり返り、感謝、決心の改め、の大切さ。

  • 新渡戸稲造と言えば『武士道』はよく知られているが、『修養』の方はあまり知られていないように思う。(自分も最近まで知らなかった)

    かなりの名著だと思う。新渡戸稲造の人生観を知るには『武士道』より良いかもしれない。

    詳しくは読んで欲しいが、新渡戸稲造という人物の鋭い洞察力、教養の広さ深さをうかがい知ることができる。古いと感じるところがなく、間違いなく現代人にも通用する内容である。

  • 武士道を著したことで有名な新渡戸稲造。
    彼が書いた武士道が武士という支配階級を通じて日本人とは何かを海外向けに記述されたものとするれば、本書はその反対。
    日本に住む一般市民に対してこう生きるべきであるという指針を示すのが本書である。
    今から100年以上前に記載された本であるが、その中で考える心の修め方は現在でもそのまま言えるものが多いと思う。

    テーマは
    ・青年の特性・青年の立志・職業の選択・決心の持続・勇気の修養・克己の工夫・名誉に対する心がけ・貯蓄・読書法・逆境の心得・順境の心得・世渡りの標準・黙思など

    以下、心に残ったこと。
    ・修養ある人の言行は一見、平凡である、その実、どこかにおいても大きな違いがある。
    ・将来為すべき希望抱負に富み、かつこれを断行する志望と元気あるものがすなわち青年である。
    ・大人はその赤子の心を失わざるものなり(孟子)
    ・心はシンプルで虚飾なくあれ
    ・死力を尽くして守るべき領分を忘れてはならぬ。
    ・縁の下の力持ちができる覚悟のものでなければ、大事を成すことはできぬ。
    ・自分の性質がその職業を好むかどうか、適当するかどうかを見て、決定するのが最も大切である。
    ・親切に観察してくれる人に進路を相談すべし
    ・名を歴史より地理に刻め
    ・親の意思に反して出京したなら、親に背いただけの弁償を払う(成果を上げる)が至当。
    ・たいていの仕事はもう一息という大切な場合になって、嫌になりがちである。それを我慢すれば必ず目的を遂げる
    ・善事を行わんとするときは、ああ、平生期しているのは「ここだな」と力を入れて行う。
    ・継続心の修養という原則に従って行うと、つまらないことでも奥行きが深くなる。
    ・人に嘲笑されるのは何よりも継続を妨げるに有用。そんなやつは殴る。
    ・正義に基礎を置かない勇気は匹夫の勇である
    ・良好なことは自分にとってもったいない。いずれ悪いときがくる。その時にはどうするかを考えて早く決心する。
    ・悲惨な事情を想像し浸り、それに比べれば日常の苦痛など。。と考える。
    ・これは俺の出る場所でない。俺の現れる幕はこの次だと。考えるのも勇気
    ・克己は己の身を犠牲に供するというように、己を捨てる義にも解したい。
    ・怖気は第一の原因ではなく、ほかの原因から起こった結果である。
    ・犠牲は進歩の法則にして、利己は不生産的なり
    ・人の行為を促す強い動機に、色情、利益、権力、名誉がある
    ・自分の可と信ずるところ、義とするところを履み行い、その他は天の判断にゆだねる。
    ・毀誉、褒貶、愛憎は生命に付随する。
    ・一番大切なことは誰にでもできることである。(積徳)
    ・いかなる人でも必ずそれぞれ相当した逆境がある。外よりは得意らしく見えても、心の内には泣いていることが多い。
    ・逆境よりやけになるときは「はて、この先は・・」と考える。
    ・逆境にあるものは「もう少しだ。もう少しだ。」と思うて進むがよい。
    ・境遇そのものに順とか逆の性質が、絶対的に付随しているものではない。
    ・死は軽い。生は重い。
    ・人生の目的は、自分の精神がいかなる態度にあるかの点に、重きを置くべきである。
    ・その職業だけより他に考えがなければ、とてもその職業を全うすることはできない
    ・職業はどうであれ、一個人として、人間として世を渡るに、天を楽しみ地を楽しむというようになれば、実に愉快な人である。
    ・座禅とは事に及んで、一歩引いて見れるようになること
    ・人生に悲哀のあるのは、酸味の中に甘みがあるのと同じである。
    ・専門と全く関係ない研究をすることは必要。

  • 生きる心構え。
    順調なときの備えが新鮮。
    慢心や油断はいつの時代も順調なときこそ。

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著者プロフィール

1862年南部藩士の子として生まれる。札幌農学校(現在の北海道大学)に学び、その後、アメリカ、ドイツで農政学等を研究。1899年、アメリカで静養中に本書を執筆。帰国後、第一高等学校校長などを歴任。1920年から26年まで国際連盟事務局次長を務め、国際平和に尽力した。辞任後は貴族院議員などを務め、33年逝去。

「2017年 『1分間武士道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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