瞳の中の大河 (角川文庫 さ 60-1)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.11
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本棚登録 : 294
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043944798

作品紹介・あらすじ

男は二度、女を撃った。女は一度、男の命を救い、一度、その命を奪おうとした。ふたりは同じ理想を追いながらも敵同士だったから…。悠久なる大河のほとり、野賊との内戦が続く国。理想に燃える若き軍人が伝説の野賊と出会った時、波乱に満ちた運命が幕を開ける。「平和をもたらす」。その正義を貫くためなら誓いを偽り、愛する人も傷つける男は、国を変えられるのか?日本が生んだ歴史大河ファンタジーの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。

    沢村さんの作品ではじめて読んだのが『黄金の王 白銀の王』。そちらがとても面白かったので、ずっと読みたいと思っていました。
    こちらの方が先の作品ということで、若干荒削りさを感じましたが、すごくエネルギーがあるというか、力強い作品でした。

    主人公のアマヨク・テミズは、一見すると国の平和を願い、そのために文字通り粉骨砕身、獅子奮迅、そして孤軍奮闘する、真の英雄という印象。しかし、作中最後に語られるように、実は一人の普通の人、普通の渇望と普通の狂気をもった人間であることをも感じさせる。
    たぶん、英雄や天才といったものは、常人離れしているようで、実は凡人とほとんど変わらず、ほんの少しだけ感情の成分配合が異なっているだけなのではないでしょうか。

    大人向けのファンタジー作品ですね。

  • はまったっす!
    かなり良くできている
    ある世界の中での内戦のなかで起きている
    貴族と一般庶民と
    男!?のお話。

    空想的、歴史風、軍記物。人間力、ミステリアスもの…とでも言うんでしょうか??

    けっこう先が気になって気になってで
    ワクワクした気持ちで読めました。
    読み応えの大きな良本でした

    最後の締めもまずまずgood!

    面白いですよ!
    気軽にイケてちょい骨太しのちょい堅ファンタジー

  • うおー、何この感動。心揺さぶられた。ラストもまた心地よい余韻のある書き方で締められた。
    人のドロドロしたところを描きつつも、それぞれ個人が信念持った生き様をしており、それを見事に見せつけられた。テミズ大佐の信念とカーミラの不屈の精神にはもう脱帽というかあり得ない。
    最初に涙したのは、手負いの部下を自ら手にかけるところ。野葡萄の森の村長に「そのからだに傷つけさせてほしい」なんて、後のコトをしっかり考えて。その発想すごいよね。後半にかけて、そこかしこで各人の思いの強さに涙ぐむ。
    「黄金の王白銀の王」は櫓と薫衣に焦点を絞って描かれていたけど、「瞳の中の大河」はテミズ大佐を中心に実に多くの様々な人が息づいてそれぞれの日常・ドラマが描かれていた。いやどちらの表現も素晴らしかった。こんな物語があるんだなあと、話の作り方に感動。沢村凛すごい。ほんとこの本を読めてありがとうと思えた。
    解説にもありましたけど、続編というか外伝も面白そうだなあ。二代目オーマのシュナンに、海まで辿りついたエリネの話なんてたまらなく面白そう。イシェルとテミズ父とか、オルタディシャルもすごいドラマ描けそうだもんなあ、櫓とキャラかぶっているところあるし。メイデン殿下もいい味出していたなあ、細くて長い丸太を渡る過程、渡った先はどうなっているのか。書いてほしいなあ。
    ファンタジーなんだけど、魔法もモンスターも出てこないから、大袈裟に言えば「ノンフィクションかも」と錯覚するくらいの歴史小説。大河ドラマとして映像化してもいいんじゃない?
    もうここまで来たら、複数巻での超巨編が読みたい。ま、1巻完結がわかっているから安心して読める、というところもありますよね。残りページ数気にしながら、どんな結末が?というワクワク感が堪らない。
    衝撃のラストは、テミズ父に続いて叫びそうになりましたよ、ほんと。ビックリと哀しみとで。電車の中だったから良かったものの。涙ぐんだのは言うまでもなく。
    にしても、カーミラ捕まりすぎ・・・ドジっ娘か、と (笑)

  • 46:先日文庫を購入した沢村さんのFT、というわけで借りました。めっちゃ面白かったです! 厳しい身分制度と複雑な社会情勢、大地は痩せているのに税の取り立ては厳しい、ままならぬ世界。お飾りの王の陰から国を動かす評議会の存在、そんな体制を覆そうと起った者は反逆者、野賊と呼ばれ、国軍が討伐にあたっていた。物語は主人公、アマヨク・テミズが軍の学校を卒業し、少尉として実戦に出るところから始まります。
    たくさんの登場人物、それぞれの思惑や立場や制約、人生があるわけです。それでも何の肯定も否定もせず、推奨も嘲笑もせず、淡々とアマヨク・テミズという男の一生を描く骨太の物語でした。「大河」とは歴史の比喩なのでしょうか、アマヨクから見た歴史、筆者から見た歴史、その揺るぎなさに鳥肌がたちました。
    「ふたりは海を見たことがなかった」とか、章タイトルが絶妙でね……!! 伏線というか、ほんの傍流が流れ流れて、歴史っていう大河に注ぎ込む瞬間がたまりません。

    4/22、購入タグを追加

  •  著者お得意の大河物のファンタジー。
     1文字ずつ増えていく章タイトルから、登場人物の配置や描写まで、著者が「楽しんで書いているな」という雰囲気がするので読んでいて心地よい。
    (いや、話は一本筋で読みやすくも心地よい話でもないんだけどね)

     著者にとって、(悪い意味ではなく)登場人物は血肉のある素材なのだろうなぁ。好きなキャラクターだからと言ってひいきせず、きちんと考え決断させていそう。まさしく神のごとき無慈悲さでキャラクターを平等に……って某人だけは、神に愛されているかもしれない。

  • ストーリーは、骨太です。
    陰謀とか、秘められた部分はいろいろあるのですが、でも、読後感はストレートなお話を読んだなぁという感じがします。

    不思議のないファンタジーで、まぁ、空想歴史物語みたいな感じです。
    実はわたしは、北上 次郎とは違って、ファンタジーは不思議がある方が好きです。

    大佐って、でも、あんまり好きなタイプではないです。実は。まじめに見えてるけど、実は意地っ張りで、いやなやつだよねぇ(笑)
    でも、これは、これで一本通っている。
    わたしは、銀爺こと鈴木 銀一郎の小説の男主人公の生真面目さを思い出していました。

    終わったあとね、この世界でのいろんなキャラクターの話をもっと聞きたくなる。そんなお話。

    でも、続編が出ないのが、多分、潔いのかな。

  • 一気読み。異世界歴史小説。一人の少年が、やがて英雄になっていくまでの胸がかきむしられるような物語だった。

  • 「黄金の王 白銀の王」が面白かったので手に。
    沢村凛さん2作品目。
    こちらはファンタジーといってもさらに現実的。
    人の汚い部分がこれでもかってくらいぶつけられる。
    もうドロドロです。
    本来、こういう話は苦手。
    辛いばかりで救いがないと読むのが辛くなってしまうから。
    なので、失敗したかなー。最後まで読めるかなーと思いつつも読む手がとまらない。
    読んでる最中もなんでだろ?って思いながら読んでた。
    テンポがいいのかな。
    まぁ面白いからに違いないんだろうけども。
    素直に面白かったと言えばいいんだけど(笑)
    特に終わりかたは最高でした。
    読んで良かった。と思える本です。

  • 野賊との内戦が続き、腐敗気味の内政が横行する国で、理想を貫き続けた一人の軍人の物語。常に理想を体現する為に最適な手段を考え、様々な障害に屈すること無くそれを全うしようとする主人公アマヨク・テミズの姿が心を打ちます。(実際にこういう人が近くにいたら、融通が聞かない苦手なタイプに映るかもしれませんが…)

    中盤までは比較的順調に昇進して行きますが、策略によって貶められてしまう以降の展開は、どう収束させるのだろうかがとても気になりました。最終的には序盤からたまに話題に挙るある人物の力により大団円を迎えます。最初はちょっと都合が良いかなー、なんて思ってしまいましたが、アマヨクの常にブレなかった理想を追求する姿勢がその人物を行動させたのだと解釈しました。

    そうした「行動が周囲に良い影響を与えて行く」という、ある種のカリスマ性を持った主人公の姿は、「黄金の王 白銀の王」の穭と薫衣や「永遠の0」の宮部久蔵に通じるものがあり、それらの作品と同じような感動を得ることが出来たように思います。

  • またも異国の権力闘争的ファンタジー。そしてまたも主人公が頑な(笑)…と言いながらも一気読みしてしまう内容で、とても楽しめました。

    アマヨク、カーミラ、オルタディシャル、オーマ、アマヨク父。みんな頑な。それぞれの立場で語っているけれども、どうしてそんなにみんな頑ななのか。もうちょっとお互い譲れば…というのは、無理な話なんだろうな。

    最後まで気が抜けない展開でしたが、アマヨクの望んだ通りの方向へ、国が向いていくのを確信してのラストだと思う。そう信じたい。

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著者プロフィール

1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常のひだを的確に切り取るミステリーなど、様々な世界を展開している。その他の著作に『瞳の中の大河』『黄金の王 白銀の王』『あやまち』『タソガレ』『ディーセント・ワーク・ガーディアン』『猫が足りない』「ソナンと空人」シリーズなど多数。

「2023年 『旅する通り雨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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