国家と人生 寛容と多元主義が世界を変える (角川文庫 さ 50-2)
- 角川グループパブリッシング (2008年11月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043911011
作品紹介・あらすじ
沖縄、ロシア、憲法、宗教、官僚、歴史……幅広いテーマで、「知の巨人」佐藤優と「メディア界の長老」竹村健一が語り合う。知的興奮に満ちた、第一級のインテリジェンス対談!!
感想・レビュー・書評
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佐藤優と竹村健一との対談です。竹村が佐藤の考えを巧みに引き出しています。
竹村については、昔テレビで活躍した保守派の論客という程度の知識しかなかったのですが、本書を読むかぎりでは、佐藤と同じく保守と革新の垣根にとらわれない自由な思考をおこなうことのできる評論家のように思えます。
竹村の本を検索しても、処世術めいたタイトルの本ばかりがあがってくるので正直いって敬遠していたのですが、本書を読んでやや認識を改めました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
佐藤優、竹村健一の両巨匠による対談を、2007年12月に発刊したものを文庫化したもの。両氏の生い立ちや考え方のよく分かる本。両氏とも基本的に保守的な自由主義者であって、天皇制を重んじる国際派であることがわかる。佐藤氏が、護憲論者であることには驚いた。
「収監された日のメニューは今でも覚えています。青椒牛肉絲、小エビがたくさん入った中華スープ、ザーサイで、外部から食事の差し入れも可能なのですが、「食事は思ったより美味しいのでとくに差し入れはいらない」と断ったほどです」p20
「国家というものがある限り、戦争は避けられない」p30
「問題点があるにしろ、国家がその方向に動いていくのであれば、それに対応する知恵を出さないと生きていけない」p53
「(英国)町なかのパブにのみに行くと、パブに扉が2つある。中産階級はサルーンという扉から入っていきますが、労働者階級はパブという扉から入る。なかは一緒です。それなのに入り口が異なる。「なぜこうなっているんだ?」と聞いたら「扉を開けるときに気分が違うんだ」といわれました」p114
「官僚の世界でも、みながやりたいことをやったら組織はバラバラになってしまうので、8割くらいの人はいわれたことだけやろうという姿勢でいいと思います。そのうえで、残り2割が乱暴なことをやっても、それを受け止めることができるのが強い組織です。ですから、それを見てくれる上司の存在が重要です」p129
「諜報員をひとり東京に送り込んだら、年間5000万円くらいはかかります。家賃が月額100万円以上、場合によっては200万円くらいの一等地のアパートが必要になる。時には自宅でパーティーを開かねばなりませんから。当然車もそれなりのものを用意します。それほどコストがかかるにもかかわらずたくさんの諜報員を送り込んでいるということは、東京がいかに重要な都市かがわかると思います」p134
「中国が超大国になるのは間違いない。それは日本にとって煩わしいが、発展を阻止することはできません」p194
「ペイさえ払えば、いまのロシア人はとてもよく働きます」p211
「欲望を抑えるのはイデオロギーにしかできません」p214
「人間の文化とは恐ろしいもので、たった20年か30年、徹底した教育をすれば、たちまち、そういう感覚になってしまうのです」p215
「共産主義とは危険な思想で、世界を制覇するという発想があります」p236
「日本はキャッチフレーズ先行の社会で、政治家の人気が高いというのはキャッチフレーズが上手いともいえる。そうした政治家のやり方に慣れると、政治の本質を見失う。つまり民主主義の精神が鈍化していく。すると、やがてその指導者が日本の国体を意のままに変更しても、誰もストップをかけることができなくなる」p289
「右翼・国家主義陣営に属する一部の人々は「法律で定められているから小中学校では国旗を掲揚し、国歌を斉唱することを、教師と生徒に義務付けるべきである」と言う。これもおかしな話だ。押し付けるから国家に対する忠誠心や同胞に対する共感は生まれない。そもそも国旗、国歌を法制化するという発想自体が間違っている。法律で規定したことは法律で変更することができる」p325
「日本のいま、特に若い世代に問題なのは、興味を持つ力が落ちていることではないでしょうか」p332 -
著者の外交官時代を描いた『国家の罠』がとても面白かったので期待して購入したが、これはイマイチ。。
筆者の論理展開に飛躍を感じてしまい、読む気を無くした。 -
090626
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なまじっかなビジネス書よりもよっぽど勉強になる。親子ほど年の離れた二人がお互いに敬意を抱きつつ対談する様子も伺えて読んでいて楽しかった。
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竹村健一氏が、佐藤優氏と三日間、寝食を共にして語り合った対談集。それぞれのエピソードは、非常に興味深いものがあった。
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天皇や憲法に対する考えは全く逆の二人だが、タイトルにあるように、寛容と多元主義こそがこれからの世界の平和に重要であるという点で一致している。
そのためにも欧米の一神教的思想では無く、神道の精神を世界に広めることがその具体的な方策になりえるとの見解には賛成。