この世の果ての家 (角川文庫 カ 11-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042923015

感想・レビュー・書評

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  • 昔、やっとで読み終えた分厚い文庫本。毎日のようにバッグに入れ『運ん読』ならぬ、実際に運んだ先々で読んでいた。カニンガムの作品と知って手にとった。文章が美しいのは言わずもがな、翻訳の問題だと思うが読みづらかったと記憶している。

    わかるようなわからないような、割と曖昧で掴みどころのない文章を追いかけ、一緒にアメリカ大陸を車で横断した時、何かに目が覚めたような気になった。タイヤの下の砂埃と一面ベージュ色の砂漠地帯を見ていた。(読書映像化タイプ)

    ジョンやボビーたちの喪失感や孤独をしっかり把握できてしまう立ち位置に生まれたら辛いだろう、そういう想像はつくが、何か見えない壁があって、ジョンにしてもカニンガム自身にしても、近寄れなくさせる阻む何かがある。

    決して「上から」ではないが、結局のところAIDSなんかに対しても「対岸の火事」目線なのかもしれない。正解を求めてはいけない問題もあるのではないか。この本で、人生とは諦めや妥協を重ねて、自分の中でなんとか折り合いをつけ消化していくものだという事を学んだ。

  • ゲイであるジョナサンが性的には愛せなかったクレアと半身ともいえるボビーの間にできたレベッカを愛し、やっと擬似家族としてひとつになれた。しかしクレアは子供を連れて家を出ていき、残されたのはエイズに侵されたエリックと、エイズに侵されているかもしれないジョナサンと、ジョナサンのもとを離れられないボビー。
    それを踏まえてA Home at the End of the world「この世の果ての家」という題名が胸に染みる。一方映画の邦題「イノセント・ラブ」のセンスのなさには呆れる。

    やや助長的な文章でしたが美しい小説でした。

  • 90年代の感性を併せ持って70~80年代の米国を描いた、マイケル・カニンガムの出世作。二人の少年が強い絆で結ばれ年を重ねながら、自分たちなりの家族の形や喪失感を抱えて生きる道を模索していく。全体に死の影が色濃く、文体は美しいが痛々しいまでに繊細。題名が示すとおり彼らの家は世界が終わるところ、死と生のあわいに見出される。天国的に美しく清らかな最終場面が、いつまでも瞼の裏に残る。

  • 『めぐり合う時間たち』のマイケル・カニンガムによる、ピューリッツァー賞受賞作品。絶版なのでマーケットプレイスで購入。
    兄を亡くしたジョナサン、不安定な父子関係のボビー、ジョナサンの母アリス、アリスと夫の夫婦関係、ジョナサンが出会ったクレアとボビーの三角関係。
    それぞれの登場人物からの視点による章からなり、家族という枠だけに留まらず、もっと親密な人間関係を描いた長編小説。
    出版された1990年の当時、HIVに怯えていたアメリカの雰囲気が色濃く漂う。

  • 文章がとてもきれいでしたが、それは1部だけ。本書は、本当は1部で終了する予定だったのが、その人気ぶりのあまり、筆者が続きを書いたというもの。そういう作品は、たいがい失敗に終わりますが、本書は成功していると思います。
    社会問題を取り上げている文学作品で、魅力的な主人公たちに惹かれることは間違いなし。

  • 今はまだ、上手くまとめることができない。

  • ジョナサン、ボビー、クレア、ジョナサンの母アリス。その4人のモノローグで語られるジョナサンとボビーの数十年間。
    華やかな80年代が過ぎ去り、世紀末を控え混沌とした90年代のアメリカ。誰もが不器用だけれども懸命に自分が生きるべき、帰るべき「家」を探している。血ではなく愛で結ばれた理想ともいうべき親密な「家族」の姿。結局、人生とは辛いことばかりなのかもしれない。しかし文中でも語られているように、思っていたより随分と味気ない形であろうとも、幸せは確実にそこにある。

  • 幼くして何かを失い、孤独を抱えて育ったボビーとジョナサン。二人は出会い、親友となる。結ばれた強い絆は、互いの家族を癒し、そして傷つけ、時と共にみな離れ離れになっていく。時を経て再会した二人は、年上の女性クレアを交えて共同生活を始める。新たに築かれた奇妙な絆―だが、幸福とはほど遠い。そんななか、三人に子供が生まれる。かけがえのない家族の日々が、ようやく、彼らに訪れようとしていた…。

  • ぐんぐん引き込まれる。登場人物、それぞれ魅力的。
    「イノセント・ラブ」という邦題で映画化されているけれど、断然原作!

  • とにかく長かった。半年くらいかけてゆっくり読んだ。原文(たぶん英語)でも読んでみたい。

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