太平洋戦争 日本の敗因1 日米開戦 勝算なし (角川文庫 ん 3-12)

制作 : NHK取材班 
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041954126

作品紹介・あらすじ

軍事物資の大半を海外に頼る日本にとって、戦争遂行の生命線であったはずの「太平洋シーレーン」確保。根本から崩れ去っていった戦争計画と、「合理的全体計画」を持てない、日本の決定的弱点をさらす!

感想・レビュー・書評

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  • 負けるべくして負けたことがとても分かりやすく、日米双方の観点から書かれている。
    身の丈に合わない目的(戦略)と、それに陶酔し実行が伴わない机上の空論に終止する組織という構造は、今の企業においても非常に似通っている。

  • 主に戦略物資獲得・輸送の観点から、太平洋戦争敗戦の原因を探る。
    獲得しても日本までの輸送が滞った。
    島国日本が海上護衛を軽視した結末がよくわかる。

  • 借りた本

    日本の戦争失敗について、輸入経路を断つ戦法について、
    日本とアメリカの資料を比較しながら丁寧な取材から導いている。

    内向きな指導者による弊害はいつの世でも同じこと。
    どこかの会社の偉いさんに見せたいね。

    反省だけならサルでもできる。
    ここから何を学んでどう行動するかだ。

  • 1995年刊。1992年〜93年にかけてNHKで放映された「ドキュメント太平洋戦争」の書籍化。

     このドキュメントをTV鑑賞時(特に、本書と4巻相当分)、当時大学生であった私の当該戦争観を一変させたくらい、個人的な影響は大であった。
     より具体的に言えば、戦争を経るにつれ補給線が次第にやせ細っていく模様は哀れを通り越して、呆れ返ってしまったことを思い出す。
     しかも、猪瀬直樹「昭和16年夏の敗戦」の読後、当時の指導者・為政者の、「日本国民」に対する責任は、いかように弁解しても存在するのだとの意を強くした。まさに転機の書である。

  • 新書文庫

  • p.28 ひとつは、NHKの教育テレビ「雑談・昭和への道」で、
    作家の司馬遼太郎が話しておられた「自己リアリズムの喪失」
    という言葉である。
     つまり、明治維新の指導者たちは自分たちが一から作り上げ
    た国だけに「日本の実力の限界」を正確に認識していた。日露
    戦争の講和は、日本の国力の限界を見定めた適切な判断であっ
    た。
     しかし、昭和初期から太平洋戦争にいたる時代を事実上支
    配したエリート官僚・軍人たちは、その認識を欠いていた。そ
    んな官僚・軍人たちが愛国者ぶって、国という一番大事なもの
    を、まるで博打場のカケにするようなやり方で戦争に駆り立て
    たのが、昭和初期から太平洋戦争にかけての時代であったとい
    う。そして、このように「自己リアリズムを喪失」してしまっ
    た時期は日本史全体の中ではきわめて例外的で、織田信長も徳
    川家康も典型的なリアリズムの持ち主であったというのである。

     もうひとつは、偶然、数人の元参謀が同じ内容の話をしてい
    たので強い印象となって残っている。
     「今になって思うんだけれどね。古事記によると、日本列島
    は神様が泥を塗り固めてお作りになったというでしょう。その
    とき、神様は日本という国を一番外国と戦争しづらいような国
    土に作られたと思うんだ。だって周りは大きな海で囲まれた小
    さな島国でしょう。敵はどこからでも上陸できるわけで、こん
    なに守りにくい国はない。
     おまけに島には人間はたくさんいても、食糧も資源も足りな
    いときている。敵は上陸しなくても日本を包囲してモノがいか
    ないようにしていれば、そのうちに日本は干上がって降伏する
    しかない。日本という国は、戦争しちゃいけないように国土そ
    のものができているんですね。われわれは、当時そのことを見
    落としていたんです」

    「自己を客観的に把握すること」の必要性は何も太平洋戦争に
    限ったことではない。このことは国際政治・経済の中で、その
    果たすべき役割が当時よりも比較にならないくらいに大きくな
    った現在の日本と日本人にとっても、物ごとの判断の最低の指
    針である。それがなくては、いつの時代も状況に応じた正しい
    判断・行動はできない。
     そして指導者がこの認識を欠いた時、国家と国民がどんなに
    災厄に苦しむことになるのか? それが太平洋戦争で大きな犠
    牲を払った代償に、歴史がわれわれ日本人に教えてくれた教訓
    ではないか?


    p.36 開戦か否か、国家の最終的意思決定には、田辺さんたち
    陸海軍のエリート参謀の考えが事実上大きな影響力をもってい
    た。
     「あの当時の会議の空気はみんな強気でしたね。ここで弱音
    を吐いたら首になる。第一線に飛ばされてしまうという空気で
    した。『やっちゃえ、やっちゃえ』というような空気に満ち満
    ちているわけですから、弱音を吐くわけにはいかないんですよ。
    みんな無理だと内心では思いながらも、表面的には強気の姿
    勢を見せていましたね。私も同じですよ」

     国家の大事を決定するに当たって、冷静かつ合理的な判断よ
    りも虚勢が万事に優先していたのである。


    p.47 戦争に突入する直前、一方のアメリカは日本の国力をど
    う見ていたのだろうか。開戦前、アメリカ国務省の経済戦争指
    導室に勤務していたポール・H・ニッツェさんをたずねた。

     「今にして思えば、日本は太平洋戦争で、本当によく闘った
    と思います。真珠湾攻撃部隊はたいへん練度が高く攻撃は正確
    を極めていたし、アメリカが作れなかった巨大な戦艦も作った
    し、カミカゼ攻撃はアメリカ軍に大きな被害を与えたし、戦局
    が悪くなっても日本国民の戦意は衰えませんでした。日本人は
    いろいろな点で『強み』を発揮しました。

     しかし日本には『アキレス腱』ともいうべき致命的な弱点が
    あったのです。それは日本人が生きていくためには大量の物資
    を海上輸送することに頼らざるを得ず、そしてそのシーレーン
    はきわめて長く、もし途中で輸送船を攻撃された場合きわめて
    もろく、簡単に日本は孤立して干上がってしまうという点です。
    アメリカの戦略は、最初から日本が不可避的にもつこの弱点を
    突くことにあったのです」


    p.86 お粗末な日本の護衛体制
     第一海上護衛隊に護衛してもらった経験をもつ「長良丸」の
    二等機関士脇山艮二(ごんじ)さんの話

     「護衛船といってもぜんぜん頼りにならないんだな。第一船
    足が遅くて、航行しているとだんだん遅れるんですよ。ほうっ
    ておくと迷子になってしまう。仕方がないから船団全体のスピ
    ードを遅くするんだが、これではかえって潜水艦や航空機に襲
    われる危険が高くなってしまう。(略)

     私たち船員仲間では護衛とはいわずに『お付き添い』と呼ん
    でましたな。そんな頼りない護衛船がせいぜい一隻つくだけで
    すよ。いちばん戦いの激しい最前線に駆り出しておいて、まる
    で自分の命は自分で守れといわんばかり。日本海軍がわれわれ
    船員を消耗品とししか見ていなかったことの証明ですよ」


    ◆ 破綻した輸送船建造 p.124
     戦前戦中の日本の造船、とくに商船の建造について、ここで
    ふたつの面に注目してみたいと思う。

     ひとつには、日本は、東南アジアの資源を占領・確保してア
    メリカと長期持久体制に持ち込むという戦略を決定していた。
    しかし、長期戦の経済を支えるのに不可欠な資源を運ぶ船を建
    造するのを怠っていたという戦争計画上の根本的な欠陥をかか
    えていたこと。

     ふたつには、戦争がはじまって輸送船の喪失が深刻になって
    から、日本はあわてて商船の大量建造をはじめた。しかしこれ
    は、原料の鉄鋼不足から粗悪船を生むことになった。その結果、
    輸送力はさらに低下するという悪循環が起こり、やがて海上輸
    送の破壊につながっていったことである。
     (略)
     日中戦争がはじまって日本経済が戦争の重圧に苦しんでいる
    中でも、海軍は艦艇の建造・強化に奔走していた。しかし、こ
    の時代にも鋼材の供給は限界があったので、海軍艦艇の拡張は
    商船の建造を犠牲にして行われた。また鋼材のほかにも、艦艇
    建造が優先されると商船の建造を妨げる要因があった。それは
    造船所の数と能力の不足である。
     (略)
     こうした開戦直前の造船事情は、日本の指導者が、海軍のい
    う艦隊決戦に振り回され、戦争中の海上輸送にまったく不安を
    もっていいなかったことを示している。彼らは口では国の総力
    を挙げた長期戦を唱えながら、長期戦がどんな戦いなのかを理
    解できず、まったく準備不足のまま国民を大戦争に駆り立てた
    のである。


    ◆ アメリカ潜水艦「COD」p.177
     アメリカ潜水艦は魚の名前をつけているものが多い。「コッ
    ド」というのは鱈のことである。この潜水艦の取材で、私たち
    がいちばん驚いたのは、最新鋭の兵器よりも「コッド」の艦内
    にあったアイスクリームの製造機だ。
     (略)
     戦争末期、絶望的な戦いを強いられた日本の護衛艦や輸送船
    の劣悪な環境・装備とくらべて、あまりの格差に愕然とする思
    いであった。

  • 感想は最終巻に記載。

  • 日米開戦勝算なし

  • 大バカどもが巨大な組織を統べると、その末端にとんでもない厄災がもたらされる、そういった様がよく分かります。この本が批判するところの行動様式は、現代日本の大組織に、共通する部分が多く見られるのだと思います。倫理的な問題を別にしても、日本が決して戦争をしていけない国であることが、よく分かると思います。

  • 日本の敗因を分析した、NHKスペシャル「ドキュメント太平洋戦争」、6回シリーズの1回目の書籍。

    南方の資源を日本に持ってきて、国力を醸成しようと考えてるのに、どうして海上護衛に配慮しないのか、まったくもって不可解。

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