うちの父が運転をやめません (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041128206

作品紹介・あらすじ

「また高齢ドライバーの事故かよ」。猪狩雅志はテレビニュースに目を向けた。そして気づく。「78歳っていえば......」。雅志の父親も同じ歳になるのだ。「うちの親父に限って」とは思うものの、妻の歩美と話しているうちに不安になってきた。それもあって夏に息子の息吹と帰省したとき、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、あえなも不首尾に。通販の利用や都会暮らしのトライアル、様々な提案をするがいずれも失敗。そのうち、雅志自身も自分の将来が気になり出して......。果たして父は運転をやめるのか、雅志の出した答えとは? 心温まる家族小説!

感想・レビュー・書評

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  • 田舎の父親に自動車の運転をやめさせようと説得する話と思いきや、それだけでなく現代社会の問題である、高齢化社会の問題や、核家族化の問題から都会や田舎での生活問題まで幅広い視野で、問題を提起させる物語。

    脱サラして田舎に移住し移動スーパーに転職したり、都会の高校から田舎の農業高校へ転校したりと、思い切った設定ではあるが、とても共感できる部分が随所に散りばめられていた。

    私にはそんな思い切ったことはできないだろう…と感じてはいるが、背中を押してもらえた事は歪めない。『楽しんで仕事をする』こんな事を思い浮かべさせてくれた作品でした。

    ヒマワリ号の明日の助手席の予約は久子さんだ…
    最後を締め括る最高の文章にほっこりしました。

  • 面白かった。
    垣谷美雨さんにハズレなし。
    大好きです。

    星5かなと思ったけれど、男性が主人公より、女性が主人公の時の方が面白く感じるので星4で。
    でも共感できること、ハッとすること、読んで良かったなと思うことはタップリありました。

    いつもスラスラと読んでしまいます。
    そして、あー楽しかったと思う。

    重〜いミステリーを読んだ後に、垣谷さんを読むとホッとするし、絶対面白いという安心感があるので、大事に読んでます。
    ゆっくり読まないと、読むのが無くなったら困る!

  • 読みやすかった。
    どこの家庭にもある問題と、どこの地方も抱えてる問題をテーマにしていて、他人事とは思えずページが進んだ。
    政治家の体たらくを鑑みると国に抜本的な解決を期待することは出来ずこの本のような行動を取る人が必要になってくるのだろうか。

  • 今回も面白かった!&勉強にもなりました。

    高齢ドライバーの事故は危惧する点ではありますが、頭ごなしに、運転するな!ではダメですよね。
    高齢者の心理、田舎生活の実情が勉強になりました。

    私の住む所は都会では無いけれど、生活や金銭に余裕がないのは主人公と同じ。共感点がたくさん。

    全体的に人間の暖かさが読んでいて心地よくすいすい読めて、読了後も心地よい余韻にひたることができました。

  • リアルな悩みで一気読み。
    確かに田舎で買い物に行くにも必要な地域で車を取り上げることは酷なのもわかるし、でも危険だし、、

    若い世代の説得も「良かれと思って」が逆効果なパターンが多く、そこも見事に物語の中で表現されていた。

  • 猪狩雅志は高齢ドライバー事故のニュースに目を向けた。78歳といえば親父と同じ歳だ。妻の歩美と話しているうちに心配になってきた。夏に息子の息吹と帰省した際、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、あえなく不首尾に。通販の利用や都会暮らしのトライアル、様々な提案をするがいずれも失敗。そのうち、雅志自身も自分の将来が気になり出して…。父は運転をやめるのか。雅志の出した答えとは?心温まる家族小説!

  • 上手いなぁ。垣谷さんの作品は切り口が鋭くて考えさせられるうえに、フィクションとして面白い!!
    読み終えるといつも唸らされる。
    ラストの一行まで楽しませてくれて思わずニンマリ。

    高齢者ドライバーの痛ましい事故のニュースを見るたび、両親の運転は大丈夫かと心配で仕方がない雅志。
    過疎化の進む田舎での「免許返納問題」は本当に難しい。
    優先されるべきは“人命”だと思うけど、返納したら確実に“買い物難民”となる高齢者にとっては死活問題。
    免許証返納→買い物難民・外出が出来ない→家に籠りがちになる→無気力→認知症が進む。
    年金暮らしでタクシーなんて贅沢は非現実的だし、そもそも田舎ではそうそう見かけない。

    垣谷さんの作品展開はさすがですね。
    社会問題を絡めつつの円満な結末。人と繋がることの難しさや温もりも描かれていて安定の面白さでした。

  • 垣谷さんの本はリアルな生活者目線で書かれててジリジリした気持ちになる〜^^;
    でも、途中に救いようのない状況になるけど、最後は希望を見せてくれるのが好き笑

    いまの社会のあり方への疑問、問いかけを含むストーリーであることが多いから、大衆に人気なんだろうな〜

    この本でグッと来たところは

    50代の主人公が田舎に帰った時に
    自分が学生の時に使っててそのままの部屋を見て
    自由にのびのび暮らしていた当時の自分と大企業で色々なものに縛られて生きている今の自分の間に連続性を感じられない、っていうところと
    いつかこれをしたい、あれに挑戦したいのいつかは定年後なのかも、と気づくところ
    大人は人生の楽しみ方を教えてくれなかった、というところ

    どう生きるかどこで生きるか
    考えさせられるなあ

  • 書店でタイトルを見て、即買いしました。私の父も70代後半で、本人は自分はまだまだ若いと思っていて運転にも自信があり、当分やめそうになく、何か指摘するとキレるので。主人公は50代男性。都会で生活している、高学歴・高収入のサラリーマン。しかし勤め先はまだまだ古い体質の大企業。働き方改革なんてまだまだで、有給すら取りづらいような会社。とにかく「定年までの我慢だ」「定年したら好きなだけゆっくりしよう」と思いながら、長時間労働を続けてきた。離れて田舎で暮らす両親のために何かできるはずもない。東京では子供の学費も高く、共働きの妻も仕事優先で生きてきた。息子はちゃんと育っているが、気づけば会話は少なく、寂しい思いをさせてきた、と後悔が募る。
    前半は、そんな主人公の「こんな人生でいいのだろうか、でも仕方ないじゃないか、だって生活費が、学費が、子供のために…でもそれは何かおかしいのではないか…でも仕事を辞めるわけにもいかないし…」というグルグル思考がずっと続く。
    高齢ドライバーの事故のニュースを見聞きするたびに動揺し、父親とぶつかり、いろいろ提案してみるがうまくいかず…。
    私自身にもすごく当てはまっていちいち共感しながら読んだ。80歳になろうとするお父さんもなかなか頑固。
    さて、現実では解決策はなかなか見つからないが、そこは小説なので(笑)、田舎ぐらしが気に入ったらしい息子の変化、悩み続けた主人公の思い切った決断などが重なり、終盤は転機がおとずれる。
    主人公は会社を早期退職して、田舎で転職。買い物難民の多い過疎地に軽トラックで商品を運ぶ、移動販売の仕事だ。「一流大学を出たのにそんな仕事をするのか?」という小さな迷いに対して、「本当に必要とされる、やりがいのある仕事と、学歴に何の関係があるのか」という想いが勝る。
    これまで(といっても30年くらい前まで)定着した日本の価値観を、根底からゆるがし、これからの時代は過去の価値観を覆して、若者が切り拓いていくのだというメッセージが込められている。

    解説もすごく良かった。

  • 主人公の雅志は東京に妻と一人息子と暮らすサラリーマン。
    テレビで高齢ドライバーの事故のニュースを見て、田舎の父親のことが心配になり、運転しなくても生活できないかと模索するお話し。

    私も地方住みで、病院に勤務しているのでよくわかる。えっ、この人運転してきたの!!っていうような人が運転してくる。
    私は父は病気のため自ら運転を諦めてくれて、すでに亡くなったけど、もし生きていたら雅志と同じ心配をしていたのだろうなと思った。

    この雅志は一人息子なので、全て自分にかかっているのもあるけれど、高齢の両親のために本当によくやっていて立派だと感心した。

    また都会育ちの妻もよき理解者で協力的なのが救い。夫の実家とあまり関わりたくない人もいるなかよくできた妻だ。

    雅志と一緒に帰省するうちに田舎暮らしと農業の魅力に目覚めた雅志の一人息子の息吹くんの選ぶ進路に大変だろうが幸多かれ!と応援したくなる。

    雅志自身も同級生のおかげで、田舎で仕事まで見つかり早期退職するのに、妻は絶対反対すると思いきや、雅志の仕事も軌道に乗りそうで、ちょっと出来過ぎで、こんな上手くいくわけないよというようなストーリーではあるけど面白かったー。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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